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第21話 魔王のお仕事

 ()()()()()()()()()()()

 ていうか、全然そんな気はなかったんだけど、ゼブルさんに強引に手を引っ張られて


「さあて、いよいよ魔王としてのお勉強、お仕事でございます」


 とかで、執務室の椅子に座らされて、いろんな書類を前になかば強制授業、なかば質問責めになってしまったのだ。

 今回はガイアさんも同席だ。新旧の魔王の意見のすり合わせ、業務の引継ぎ(!)だとか何とからしい。

 で、ガイアさんの顔のいきなり「ぶすーっ」と面白くなさそうな、不機嫌そうなこと。

 あはは! やっぱりこの人もデスクワークは嫌いなんだね。

 張り切って熱弁を振るうのはゼブルさんだけ。


 いろんな話が出たけど、思い切って端折はしょってしまおう。

 だって、つまらないから。

(おい!)



 早い話が ———



 まず対外政策に関してだが


 ヒト族の教会は取り敢えず…… ()()()()()()

 何だかいろいろとチョッカイを出してきてるけど、今のところは好きにさせて専守防衛で様子を見よう。

 こちらも軍備を充分に整えて、もしもあちらが大攻勢に出てきたらその時こそ……


 亜人との関係は順調だ。

 一番の反対派だった獣王は倒されて、獣人領は魔王直轄領になり、魔族を敵視する過激派は一掃された。バベル君が獣王代理として穏健な統治を進めるだろう。

 ただし、バベル君に代わる従魔筆頭の人選を急ぐ必要がある。現在はゼブルさんが従魔全体に直接に指令を出しているが、この状態をいつまでも続ける訳にはいかない。さて、新たな責任者を誰にするか……

 エルフの国(妖精国)ドワーフの国(侏儒国) は今回の件で新たな魔王(私!)の就任を認めたので、これで完全に過半数以上の王の賛意を確保した。

 残るは巨人国だが、これについては新魔王就任の祝賀会、そして以降の動静によって対応するしかあるまい。



 次に魔族領の内政についてだが


 農産物の増産はほぼ予定通りに進んでいる。

 獣王軍の襲来、飛蝗の害によって若干の打撃を受けたが、魔王城に貯蔵してある食料の供出、および賠償として獣人国から提供される食料によって、十分に必要量を確保できる見通しだ。


 工業の振興も加速している。

 旧文明の遺跡から得られた情報によって再現、あるいは新たに生み出された技術が徐々に実用化の段階に至り、生産性も向上しつつある。

 今後、国民の生活は更に便利になるであろうし、魔王軍の軍備も充実が期待できる。

 現在、各種大規模工場は国営によって稼働している状態だが、いずれ折を見て民間に払い下げるつもりである。また、一定の安全基準を満たせば、民間にある工房を拡大して工場とすることも認可して良いだろう。

 そうすれば市場の競争原理が働き、顧客獲得のために更に技術が進歩し、製品の質も上がるだろう。


 経済の活性化のためにどうしても必要なのは銀行だ。

 これは以前からの懸案事項でもあるし、この際、新魔王誕生を機に国立銀行を立ち上げてはどうか。そうすれば、有志が新規事業を始めるにあたって資金援助を受けることも容易になるであろう ———



「現在の状況としては、おおむねこんなところでしょうか」


 と、ゼブルさんは話を締めくくった

 あ、私、つまんない話だからって、別に寝てませんよ。

 ちゃんと聞いてましたって!

(まあな。お前にしては上出来だ)

 あら珍しい。褒められちゃいました。


「まあこれは、ガイア様には常々ご報告申し上げているところですが、どうですかアスラ様。何か質問やご意見などお有りになれば」


 うーん、外政はそれでいいとして、経済とか産業振興とか良くわかんないんだよね。だって、私、まだまだ子供ですから。

(全く、自分の都合のいい時だけ子供ぶりおって)

 はいはい、そういうツッコミは後にして。

 今は大事で複雑な話の最中だから…… そうだ!


「銀行っていえば、魔族の国の通貨はどうなってるんですか? まさか物々交換とかじゃ」

「いやいや、それは大昔の話で、ガイア様の政権が安定してからは、ちゃんと貨幣を発行しておりますぞ。大・中・小の金貨・銀貨・銅貨があり、それぞれの交換比率も決まっております。まあ、その辺はヒト族と同様のやり方ですな」

「でも、それじゃあ帳簿をつけたり収支決算を出すときに面倒でしょう。いちいち今期の収益は大金貨何十枚に中銀貨や小銅貨が何枚分とか。それとも、()()()()が決まってるんですか?」

「通貨単位といえば、古代にあったダラーとかポンド、円といったものですな。いや、そのような単位は別に決まっておりませんが」

「だったら、この際だから決めてしまいましょう。そっちの方が絶対に便利だから。そうだなあ、やっぱりここは『()()()』がいいかなあ」

「な…… 何じゃと!」(ここでやっと、半分眠っていたガイア嬢登場)

「だって、ガイアさんの作った国だから。100ガイアとか1000ガイアなんていいと思うなあ。将来的には紙幣なんかも発行して、ガイアさんの肖像を印刷して」

「だ、駄目じゃ! 絶対に反対する。ならばいっそ『()()()』にすれば良いではないか。今はアスラが魔王なのじゃから、そうするのが当然であろう。1000アスラとか10000アスラとか」

「いやいや、やっぱりガイアさんでしょう。何てったって美人だから、肖像になっても映えると思うなあ」

「そ、そうか。美人…… い、いや、そんなおだてには乗らぬぞ。肖像もやはりアスラじゃ!」

「まあまあ、お二人とも、そう先走らずに、少し落ち着かれて……」


 ということで、ゼブルさんの仲裁が入って、残念ながら通貨単位の件は持ち越しになってしまった。

 ただ、単位があった方が計算に便利なのは間違いないので、ゼブルさんが名称を検討してみるそうだ。


 そして話は更に具体的な政策の方へと ———


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