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第15話 解決、そして後始末

 あらためて見るに、デカい!

 ちょっとした山が、空中に浮かんでるような異様な光景だ。

 こんな巨大な建造物を、いろんな武器とかヤバい大量殺戮兵器とか、そんなものを作るためだけに地下深くに築くなんて、資源と技術の全くの無駄遣い。

 古代文明って、いったい何を考えてたんだろう。

 一方で皆を楽しませる文化を発展させたのに、その裏でこんな無意味な施設を膨大な労力を費やして建設するなんて。


 背後からチャウチャウ氏の声。


「なんと! これ程の重量の物体を持ち上げる念動力とは……」


 ふふふ、驚いたかね。

 でも、念動力じゃなくて重力制御の魔法だからね。重量は関係ないんだよ。

 やっぱりドワーフって魔法にうといなあ。


 と、ここで、それまで静まりかえっていた3軍から、期せずして歓声と拍手が起こった。

 巨大遺跡が少しずつ浮上、そして速度を増して垂直に上昇するにつれ、歓声はいよいよ熱狂的になる。皆が天を見上げ、多くは拳を振り上げ口々に何か絶叫している。おそらく「行け!」とか「飛べ!」とか叫んでいるのだろう。


 その間にも遺跡は上空へ上空へと加速し、つい今しがたまで視界のほとんどを占めていたその姿が少しずつ小さくなり、青空を背景にした黒い点のように、そしてついには肉眼では見えなくなった。

 上昇を始めてから、ここまでおよそ3分。よし、これで大方はだいじょうぶ。

 私が地面に降り立つと、またひとしきり歓声が上がった。

 ガイアさんが聞いてくる。


「終わったのか?」

「はい。重要なところは」

「と言うと?」

「今は成層圏のずっと外側、地上から数百マイルの所を飛んでいます。このまま太陽の方向へ地球の重力圏から離脱させますが、今の高速を更に加速させて秒速10マイル超までもっていくとして、離脱まではざっと4時間半ですね」

「何と、そんなに長くかかるのか!」

「はい。なにしろ半径およそ16万マイルですから。でも、もう危険な範囲は脱したし、正確な場所は常に把握できるので、斥力をかけ続けるだけの、片手間で出来る簡単な仕事ですよ」

「その後はどうするのじゃ?」

「地球の重力圏を脱したら制御を解除。後は慣性の力と太陽の引力にまかせて、太陽に突っ込ませます」

「太陽に! そんな事をして大丈夫なのか?」

「太陽自体が巨大な核反応炉みたいなものですから、あの程度の核兵器が爆発しても、何の影響も無いんじゃないですか? それに、太陽の高熱で細菌も死滅するだろうし」

「うーむ!」


 と唸ったガイアさんが最後に感嘆と疑問の一言


「そういう事には本当に詳しいのう。それでなぜ人の名前は覚えられないのじゃ? それに、ちょっと難しい言葉になると知らぬし」


 う、それはそれ、これはこれ。

 人間には得意不得意というものが……


「それで、なぜ正確な場所がわかるのじゃ?」

「軌道は掴めてますし、以前に来た時に遺跡の最深部にマーキング済みですから」

「それじゃ! 忘れるところであったわ。その『以前に来た』件じゃが……」


 あれ、私、もしかしてマズイ事、言っちゃった?

 これは、話の蒸し返し?

 と、ここで


「ガイア様」


 それまでずっと黙っていたチワワ嬢が話に入ってきた。

 うう、嫌ーな流れ。


「さすがは貴方様が御選びになった新たな魔王。桁外れの魔力に加え、緻密な計画と実行力。感服致しました! これは新魔王として認めない訳には参りませんな」


 お、「緻密」とか! 生まれて初めて言われたかも。

 ふふふ、もっと褒めていいんだよ。えへん。


「あらためて自己紹介させて頂きたい。私はエルフ族の女王、名をエルダと申します。アスラ様でしたな。今後とも何卒、宜しく御願いしたい。ついては、3ヶ月前の件は水に流しましょう。ドワーフ王もそれで良いな!」

「勿論だ! 危うく紛争になるところを救って頂いて、しかも常々問題の種となり正直もて余していた遺跡まで安全に処分して頂いて…… 今更あの様な子細な事件は、きれいさっぱり忘れようぞ」


 おお、意外な嬉しい展開!

 でも、この人たち、エルフとドワーフ族の王様だったんだねえ。

 チワワとかチャウチャウとか、ちょっと悪かったかな。

(お前の内心の毒舌は、いつもの事ではないか)

 まあね、心の声さんの教育のおかげだね。ありがとうございます。


「ワシは現在のドワーフ王。名をアルベリヒと申す。以後お見知り置きを」


 とか言って、2人揃って深々と頭を下げてくる。

 待てよ。考えてみるとこれは喜んでいいのか悲しむべきか。もしかして、ますます魔王を辞めづらくなったってことでは……


「ふむ、では万事解決か。それでは」


 と、ガイアさんが笑顔で話をまとめて帰ろうとしたら


「お待ちください。これだけの御世話になりながら、事態が収拾したからといってすぐさま御帰しする訳にはいきません。是非ともエルフ族をあげて歓待させて頂きます」

「いやいや、それはドワーフも同様ですぞ。歓待の役目は是非ともワシらドワーフに任せて貰おう」

「何だと! 言い出したのは我等エルフが先だぞ!」

「順番など関係ない。感謝の気持ちはドワーフの方が上だ!」


 あーあ、またかよ。

 本当に仲が悪いなあ。

 そうだ! いいことを思いついたぞ。


「ガイアさん」

「ん、何じゃ?」

「この大穴、遺跡の跡地についてなんですが」

「おお、言われてみればそうじゃな。どうしたものか……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


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