第9話:出陣
四国同盟が締結されたという報告がグンマー帝国にいったのは、締結されてから一時間後だった。
「東京共和国連邦?また変なものを作ったね、それ提案したの誰」
グンマー帝国の最高司令官、中之条柚木は前橋の庁舎の一室で声を荒くする。
「旧大東京帝国の朝霞恵司令官だと思われます」
少佐は中之条柚木の迫力に怯みながら答える。
「あいつかよ。っちぇ、やってくれるじゃねぇか」
中之条は険しい表情で頬杖をつく。
「まあいい。了解した。さいたまとの国境、利根川に戦車を配備しろ。あと高崎飛行場から戦闘機を10機だ」
さいたまの防衛は比較的弱い。
東京帝国軍が最初にすることは、さいたまとグンマー帝国の国境の防衛力をあげるために、東京帝国軍を配備するだろう。
だから、その前にさいたまを攻撃するという考えなのである。
ちなみに、高崎飛行場はこの世界線にしか存在しない飛行場である。
「了解いたしました」
少佐は中之条司令官に背を向け、部屋を出ていく。
「とうとうはじまったか」
中之条は伊勢崎に向かう準備をはじめた。
その頃、甲斐王国も動きをみせていた。
「ほう、東京共和国連邦か」
甲斐王国の王、夜叉神レナ(やしゃじんれな)は緑茶をすする。
「失礼します。同盟国、グンマー帝国がさいたまとの国境に軍を配備。深谷を攻めるようです」
大佐が夜叉神がいる部屋のドアを開ける。
「そうか、じゃあ私たちも動こうかの。んじゃ、道志から八王子に攻めるのじゃ。あそこは防衛が手薄」
「はは、了解いたしました」
大佐は音を立てずに部屋を出ていく。
「東京が落ちるのも、時間の問題だな」
夜叉神は広角を上げた。