第6話:これ、まじでどういう状況?
「なにかこの世界について質問したいことはあるかしら?」
「少し待ってくださいね」
俺は質問する内容をスマホのメモにまとめる。
「まず、俺の世界では日本列島は一国に統一されていました。それがこの世界と違うところです」
「ええ。それは承知済みよ」
「日本列島の地図を見せてもらえませんか?」
「わかったわ」
恵はスマホを取り出し、マップのアプリを開く。
「これよ」
「この国は同盟国などいないんですか?」
「相模国、千葉共和国とさいたま民国だわ」
神奈川、千葉、埼玉が同盟国ということか。
「そのほかは敵国ですか?」
「ええ、そうよ。特に今注意しなければならない国は甲斐王国だわ。甲斐の王は指揮が上手いの。この前甲斐より軍事力が上の隣国、信州連邦国と戦っていたのだけれど、山をうまく利用して軽井沢を占領したわ。首都の長野都市区が落ちるのも時間の問題ね」
山梨の王は頭が優れているということか。
「わかった。だんだんこの世界がわかってきました」
「他に質問はあるかしら?」
「東京の軍事力を知りたいです」
そう、東京の強さがわからないとどのような戦略で周りの国を治めるか、というのがわからないのである。
「東京帝国軍は日本列島で一番強いわ。ひいきとかそういうのではないわよ。アメリカのメディアがランキングを作っているのだけれど、ダントツで東京が強いわ」
東京が一番強い、そして同盟国が神奈川、埼玉、千葉。隣国の山梨は敵国。
「ありがとうございます。今はこれくらいで大丈夫です!」
「あ、あと」
恵は思い出したように棚からスマホを取り出した。
「これ、あなたにあげるわ。透君、携帯持っていないでしょう。私のサブ携帯なのだけれど、あまり使わないから、わからないことがあったら、私に聞いてもいいけど、これで調べられるわ」
「ありがとうございます!」
俺は恵からスマホを受け取る。
「じゃあ、パーティーおしまい!」
「あのー、恵さん」
「何かしら?」
キョトンとして、いかにも「はにゃ?」みたいな顔をしていた。
「パーティーの概念って、知ってますか?」
「パ、パーティーの概念??」
この人、パーティーしたことないのか?
「パーティーって、真面目なことするものだと思ってます?」
「え、パーティーに呼ばれたことがないからわからないわ…」
あぁ、可哀想なタイプの人か…
「まあいいです。この後はどうします?」
「えーっと、私は食器洗うから先にシャワー入ってきていいわよ」
「あ、あのぉ」
俺は気付いてしまう。
「俺、着替えないんですけど」
夏なので、服は洗いたいところだ。
「あーさっきユニクロで買っておけば…」
恵は顔が赤くなってくる。
「じゃ、じゃあ、私の服、、着る?」
「え」
えぇぇぇぇぇぇぇ。
恵の身長は165。
俺は170なので、まあ着れないわけではない。
「だ、大丈夫よ!大きめのサイズがあるの!」
でも、本当の問題はそっちではない。
恵の服を着る!?
さっき出会ったばかりの美女の服を着るなんて…
この世界最高かよ。
「じゃあ、着てもいいですか?」
これ軽く犯罪じゃないの?後から訴えられない?大丈夫??
「い、いいわよ!じゃあさっさとシャワー浴びてきなさい!早く服脱ぎなさい!!」
「こ、ここでですか!?」
恵の顔は林檎のように赤くなる。
「んな、、ば、ばか!!!そんなわけないでしょ!!早く洗面台に行きなさい!!」
俺は背中をぼんと押される。
「パンツはどうするんですか、、?」
「パ、パンツ!?もう!ちょっとそこのコンビニに売ってるから先は入っておいて!!」
透はシャワーを浴びて、浴槽を出るとパンツと服が準備されていた。
それを着て、なんだか恥ずかしくなりながら部屋に戻る。
「今出ました!パンツ、ありがとうございます」
「どういたしまして。まったく、、世話が焼けるわね」
「ごめんなさいね、、」
なんだか申し訳なくなる。
「まあ、しょうがないわよ。じゃあ、私もシャワー入ってくるわね」
恵は浴室に向かう。
やがてシャワーの音が鳴り始める。
「い、今浴びてるんだ…」
生々しい…
気恥ずかしい。
20分後に恵は部屋に戻ってきた。
髪の毛は綺麗にとかされていて、シャンプーの香りが甘く匂う。
カジュアルな半袖半ズボンのパジャマ。
めっちゃ似合ってて可愛い。
「どうやって寝ましょうか、、」
そう、どこで寝るか問題も残っていたのである。
「どうしましょうね、、俺はなんでも大丈夫ですけど、」
恵はまた赤くなってくる。
「布団ひとつしかないし、私の隣で寝る??」
恵は恥ずかしがりながら、しかしいじるように俺の顔を覗き込んでくる。
「俺はなんでも大丈夫なので!じゃあ寝ます!」
「じゃあ、こ、ここに、おいで?」
お姉さんぶるのに慣れていないような感じで言う。
恵はベットに寝転がり、隣をとんとんと叩く。
透ははずかしくなって、顔を熱くするがポーカーフェイスを保って、ベットを横になる。
ち、近い…
恵の肩にあたると、恵は変な声をだす。
「はぅっ」
「ちょ、ちょい!変な声出すのやめてください!」
「えへ、声出ちゃったわ」
この人お酒飲んだ?ちょっとキャラ崩壊してない?
「あしたから帝国軍として働いてもらうから、もう寝たほうがいいわ。おやすみ、透君」
「おやすみなさい、恵さん」
二人で一枚のタオルをかぶって、体が少しくっついた状態で眠る。
これ、まじでどういう状況?