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第5話:夜のパーティー

「今お茶入れるから待っててね。透君、お腹すいた?」


恵は冷蔵庫の中のお茶を取りに行きながら話す。


「お腹すきました!」


そう、透は元いた世界からここにくるまで大体一日もかかっていたのである。


最後に食べたのは32時間前の昼食だ。


高校生の透は腹が減っていて当然である。


「じゃあお米少し多めに炊くわね、疲れたでしょ、ソファーで横になってて。はいこれ、麦茶ね」


ガラスのコップに入った冷たい麦茶を手渡しで受け取る。


そして、恵はソファーの後ろにあるキッチンで夕食の支度を始めた。


手慣れた手つきでハンバーグをこねる。


そしてフライパンで焼き始め、やがて食欲をそそるいい香りがソファーまで匂ってくる。


同時並行でキャベツを素早く切る音が聞こえてきて、炊飯器が鳴り響く。


恵は食器をキッチンの上の棚から二人分とり、ご飯、味噌汁、ハンバーグ、キャベツをとりわけ、ソファーの前にある机に並べた。


「はい、完成〜。じゃあ、食べましょう」


ちょうどいい焼き加減のハンバーグ、細かく千切りされたキャベツ。


この人、料理めっちゃできるやん。


「美味しそうです!」


「あら、そう?よかった。じゃあ、改めまして。いらっしゃい、透君」


恵は美しく、可愛い顔をニコニコさせた。


可愛い…


「これからよろしくお願いします恵さん」


「こちらこそよろしくね、透君」


「「いただきまーす」」


俺たちはお箸を持って食し始めた。


「うっま!?」


噛めば噛むほど出てくるあつあつの肉汁…


この人、天才か。


「よろこんでもらえて嬉しいわ」


俺は家族と食卓を囲んで食べるというのが高校生になってからなかったので、なんだかこうやって誰かと食べるのは、新鮮な感じだった。


「食べる勢い、いいわね。さすが男の子って感じだわ」


恵は俺が食べているのをじーっと見つめていた。


そんなに可愛い眼差しで見られると恥ずかしくて食べにくいのですが。


人生の中でもトップクラスにおいしかった食事は、15分ほどで終了した。


「ごちそうさまでした!今まで食べたハンバーグの中で一番おいしかったです!」


恵は顔を赤くし、合わせていた目をそらした。


「ま、またまたぁ。お世辞がうまいのね」


「お世辞じゃないですよ!」


「本当に?」


「はい!明日も楽しみにしています!」


「そんなに期待されると困るわ…」


恵はどんどん赤くなっていく。


「透君」


「はい、なんですか?」


「パーティー、するわよ」


なんだかとてもかしこまっている。緊張しているのだろうか。


「おぉ!ありがとうございます!」


「じゃあ、食器洗ってくるから、また待っておいて」


「キッチンまで食器運ぶの手伝いますよ」


俺は恵が食器を持つ前に先に食器を持ち、キッチンまで運ぶ。


恵はぽかんとした顔をした。


『かっこいい顔に、性格もよくて、気が利いた男…やる、じゃない…』


恵はどんどん透に惹かれていく。


『だめだめ、私ったら。ちょろい女って思われちゃうわ!』


スッと立ち上がり透の後を追うようにキッチンに向かう。


数分後、食器を棚に戻し、先ほど買ってきた炭酸飲料とポテトチップスを机に置く。


「じゃあ、改めまして。これからよろしくね」


「はい!どうぞよろしくお願いします!」


「「かんぱーい!!」」


コップに注いだ炭酸飲料で乾杯をした。


「では、少し真面目な話になるのだけれど、いいかしら」


恵は炭酸飲料を一口ぐぴっと飲み、コップを置く。


「いいですよ、どうしたんですか」


恵は真剣な顔になる。


「あなたって、どこから記憶がないの?」


「聞いて驚かないでください。今から本当の話をします」


透も真剣な顔になる。


「本当の、話?」


「はい。俺、実は記憶喪失とかそういうのじゃないんです」


「え、ではどういうことなの?」


恵の頭の上にはクエスチョンマークが浮かぶ。


「異世界から、転生してきたんです」


恵は表情が固まる。


「異世界、、から、、転生??」


「はい。多分これからの話をすると信じてくれると思います」


「わかったわ」


信じてもらえるかはわからないが、一か八か。


新宿駅の『異世界転生屋』の話、前にいた世界は日本列島は一国に統一されていたこと、どうやってこの世界に来たのかなど、事細かく説明する。


「作り話にしては、相当作り込まれているわね、、本当の話、なのかしら?」


「はい。なので今この世界では何が起きているのか、俺には何もわからないんです」


恵はしっかり信じてくれたのか、何かに確信した表情をした。


「わかったわ、信じるわね。じゃあこっちの世界のことも一から説明するわね」


俺は信じてくれた安心で、安堵のため息をついた。

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