第21話:21世紀のノルマンディー上陸作戦
「ほう千代田、賢い司令官を捕まえたものだな」
大阪國大統領、富田林は官邸のバルコニーに出てタバコを咥える。
「赤壁の戦いを東京湾で再現するとは、大したものだ」
天に広がる青い空を眺めながら微笑を浮かべた。
「大統領、淡路島が落ちました」
軍幹部はバルコニーのドアを開いて富田林に伝えた。
「よくやった、一度帰国させろ、休息が必要であろう」
「了解」
富田林は大きな野望を持っていた。
「1944年、ノルマンディー上陸作戦を含めたパリ開放までの作戦を『オーヴァーロード作戦』として計画を進めた。ナチス優勢の風向きを変えたのはこのノルマンディー上陸作戦。そして今、我々は横浜港上陸作戦を実行し、東京を占領する。これが『第二次オーヴァーロード作戦』だ」
吸い殻を灰皿に落とす。
「東京を潰す。そして我々が世界史を造るのだ」
◼︎
残り一隻となった帝国軍は窮地に立っていた。
『帝国軍残り一隻、残り一隻』
仙台東京大使館にいる朝霞恵最高司令官に連絡が入る。
「空軍の状況は?」
『現在横須賀市街上空を飛行中、すぐに戦闘体制に入れます』
「では、攻撃開始を命令する」
『了解』
俺たちの前にあるモニターにはヘリ部隊からの映像が映し出されている。
横須賀市街を越えると、小さく船が見えてきた。
「あそこが現場ね」
部屋には緊張が走る。
そして恵は明言した。
「攻撃を開始してちょうだい!」
帝国空軍第28師団、別名「茅潜」を先頭に細長い二等辺三角形を作って大阪艦隊に近づく。
戦闘機を世界でも稀な小さな陣形で攻撃し、小さいということや、飛んでいる形が茅潜のように見えることからこの名が付けられた。
「fire(撃て)!」
命中するが、すぐに反撃される。
しかしその反撃を華麗に避けてもう一度攻撃をする。
「その調子よ!」
恵は声を掛けた。
少しこちらの方が優勢だろうか、と思った束の間、大阪空軍20機が鸊鷉に攻撃を仕掛けてきた。
「来たわね日本内最強の空軍、大阪空軍。通称『ソルシエール』!!」
恵は少し強張っている様子だった。