第11話:夕日よりも赤く
こうして、透と真波は明日の早朝に北海道へ一泊二日で交渉しにいくことになった。
グンマー帝国はさいたまに攻めて、甲斐王国は八王子に攻めているという絶望的な状況にもかかわらず、北海道へ旅行…じゃなかった、交渉している暇なんてあるのかという疑問はあるが、東京共和国連邦は金銭的に危機的状況に陥っている。
だから国を代表して交渉しに行くという、重要な任務なのだ。
この国、新人の俺にこんな重要な任務を任せるなんて、人員足りてないのか?
先ほどの会議から五時間経ち、時計は午後八時を示していた。
透はこの間、北海道民国に交渉可否かの連絡を入れたり、お偉いさんたちのお茶を注いだりしていた。
そして真波と明日の打ち合わせをしているその時だった。
「グンマー帝国と甲斐王国の兵、前線は撤退したわ」
会議室に入ってきたのは、先ほどいなくなった恵だった。
「今回はどうやって片付けたの」
真波はそうこなくちゃと言わんばかりの声色だった。
「今回は数で勝利しただけよ。特にひねったことはしてないわ」
やはり、連邦国家になったおかげであろう。
広大な領土と多数の人口を手に入れた東京共和国連邦は、間違いなく日本列島において一番であろう。
「やっぱり唯一無二の存在だな、恵は。そういえば恵、明日北海道に行くんだけど、一緒にくる?」
俺も、恵がいてくれた方が助かる。真波と二人きりはちょっと、、心配である。
「いえ、今回はやめておくわ。まだグンマー帝国と甲斐王国が兵を送ってくるかもしれないから東京に残っておくの」
すると真波は何かを企むような目で恵を見て言った。
「そうなのねぇ、なんだ残念。透も一緒に行くんだけどなぁ」
「と、透君も!?」
恵はチラリと俺を見た。
「わ、私、明日北海道行くわ!」
え、ちょっと、恵さん?お国の防衛は大丈夫なのー?
ってかこの国、ガバガバすぎない?大丈夫ー??
「あらあら、どうして気が変わったのー?恵ちゃん」
「そ、そんなことどうだって良いじゃない!大丈夫、万が一の事態が起きても大丈夫なように、部下に指令の特訓をさせておいてあるわ」
さすがです朝霞司令官。
「わかったよ、じゃあ明日はこの3人で北海道に向かうわ。総理は明日、北海道で合流することになったわ」
やっと出てきましたうちの総理。今までなにしてたんですか。
そして翌日の朝。
恵の家の前にロールスロイスが止まっていた。
「あれで羽田まで行くわよ」
わぁ、これまたふかふかな座席なこと。
寝ちゃうわまじで。
透と恵は車に乗り込む。
そして一時間半かけて羽田に着く。
「軍専用の飛行機で行くわ。もうそろそろで搭乗するわよ」
「おはよー、恵ら早くない?私これでも10分前だよ?」
真波は少し早足でこちらに向かって歩いてくる。
「念には念をだわ。アクシデントが発生したから困るというのもあるかしらね」
「えぇ?透君と北海道に行けるのが嬉しいだけでは?」
すると恵は朱に染まる。
「う、うるさいわね!そんなわけないでしょ!それに、遊びに行くわけじゃないのよ!」
「もうー、恵ったら真面目なんだからぁ」
真波はにやける。
「恵さん、真波さん、そろそろ搭乗の時間ですよ」
透は恵と真波の手を引く。
二人は顔を赤くした。
夕日よりも、赤く。
俺たちは北海道に出発したのであった。