表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

第1話:『異世界転生屋』

俺は、昔から異世界転生に憧れていた。


異世界転生のライトノベルが流行っている今、俺はどうやって転生できるかなどを考えていた。


「やっぱ自殺すればいいのかなぁ」


しかし、転生できるかもわからない現実世界で自殺はばかばかしい。


俺は、別に病んでいるわけではない、別に死にたいわけではないのだ。


そんなある日の夕方のことだった。


東京、新宿西口の歩道橋の下を歩いていると、


「占い」と書かれたダンボールの看板を持って座っているおじさんや、ホームレスが眠っている人がいる中で、一人、


「異世界転生屋」というダンボールの看板を持った長い白髪で長い髭の生えた、おじいさんが座り込んでいた。


俺は、胡散臭いと思いながら通り過ぎていく。


しかし、やっぱり気になる。


俺は、京王線の改札口まで行っていたが、また「異世界転生屋」のところまで戻っていく。


どうしよう、話しかけてみようかな。


そう思った時には、もう異世界転生屋のおじいさんに話しかけていた。


「すみません、異世界転生屋ってなんですか?」


おじいさんはお客さんが来なさすぎて珍しかったのか、目を丸くしていた。


わらべよ、そなたは珍しい人間じゃ。わしに話しかけてくる人は滅多にいない」


まあそんな見た目だもんな、とツッコミそうである。


というか、よくこんな人に話しかけたものだと自分でも感心していた。


「そうなんですか」


「童は今、異世界転生屋とは何か、と申したな?」


おじいさんは興奮気味に話す。


まるで酒で酔っ払っているような具合だ。


「はい」


「異世界転生屋は、希望者の異世界転生を支援するのじゃ。童はわしに話しかけたと言うことは、もしや、異世界転生を希望する、ということかの?」


「異世界転生できるんですか!?」


俺は夢を見ている感覚だった。


現実でこんなことがあり得るのだろうか。


いや、ありえないだろう。


こんなのは嘘に決まっている。


「そうじゃ、しかも今なら無料で転生できるのじゃ。そのかわり、転生場所を選択することは、不可能じゃ。どの異世界になるかわからないから、心の準備が整っておらんと苦労するぞ。実際、変な世界に飛ばされて自殺したやつだっておる。慎重に決めるが良い」


俺は、この話が信用できなかった。


どうせ嘘だろ、こんなの。


まあ、無料なんだ。


この話、乗った!


「俺は、心の準備ができています」


おじいさんは再び目を丸くする。


「わしの人生で出会った中で、お主が一番輝いておる。安心したまえ、こっちの世界では、お主は存在しなかったことになる」


存在しなかったことにか。


少し悲しい気もする。


しかし、この世界には悔いはない。


「準備はよろしいか、童」


「はい」


「じゃあ、こっちに来るが良い」


俺はおじいさんについていく。


JR新宿駅の改札に入り、JR総武線のホームに上がる。


するとおじいさんは杖をもって、なにやら呪文をぼそぼそと唱え始めた。


やがて、紫色の不思議な光を放つ。


その光がどんどんと眩しくなって、なにもみえなくなる。


そして、光が消えると、新宿の街が暗闇に包まれていた。


「ここは裏の世界じゃ」


「裏の世界?」


ホームには7と4分の3番線と書いてある。


ん?ハリ○タ??


「そうじゃ。あと1分後に童を異世界に連れていってくれる電車が来る」


ポッポーと汽車の警笛が聞こえてきた。


そして、その汽車はプシューと音を立てて、止まった。


「さあ、童よ、いくのじゃ」


「ありがとうございます」


俺は胸を踊らせながら汽車に乗った。


俺以外誰も乗っていない。


ポッポーと大きな警笛を鳴らし、裏新宿駅を出発した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ