魔王討伐、その陰で泣く者もいる事は知っているだろうか?
評価100ポイント超えました! ありがとうございます。
村長に相談してから更に月日が経過してあっという間に一年が経過した。
シンシアからの手紙は全く来なくなり、おじさん達の所にも手紙は来なくなった。
おじさん達は心配しているが、一応勇者パーティーの活躍は届いている。
僕の生活も何も変わらないまま、農作物を売って本を買って読み耽る毎日を送っている。
ただ、本の内容が若干変わった。
『来る日』の為に防御策を取る為にこの国の歴史とか法律とかの本を読むようになった。
勿論、何にも学の無い僕には最初は難しくてわからなかったけど何度も読むにつれて内容が少しずつ理解できるようになった。
そんなある日、王都から使いの馬車がシンシアの家にやって来た。
今回は僕も呼び出された。
使いの人は前回と同じ人だった。
「まず、近日中に公にされますが魔王が討伐されました。」
「ほ、本当ですかっ!? む、娘は無事なんですかっ!?」
「えぇ、シンシア様は聖女としての役割を全うしてくださいました。そして、これからの事なんですが……。」
「あの、シンシアは我が家に戻ってくるのでしょうか? その、勇者様と仲が良いというのを耳にしたんですが……。」
「……真に言いにくい事なんですが、特にエド殿、覚悟して聞いていただきたい。」
その言葉で僕は察した。
「……シンシアは勇者と結婚する、と言う事ですか?」
「……その通りです。これはお二人の意志なんです。」
覚悟はしていた。
覚悟はしていたけど言われた瞬間、頭が真っ白になった。
描いていた未来は無残にも砕け散ったのだ。
「それと、シンシア様は公爵家へ養女として引き取られる事が決定しました。」
「よ、養女っ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!! シンシアは家を捨てると言う事ですかっ!?」
「それは娘の意志ですなんですかっ!?」
「……はい、『貴族である勇者様と結婚するのに村人では恥ずかしい。それなりの地位が欲しい』と。」
「あぁ……。」
「おい、しっかりしろっ!!」
「おばさん、しっかりしてっ!!」
おばさんが倒れそうになり僕とおじさんは慌てて体を支えた。
「お気持ちは非常にわかります。私も実の娘に否定されたらどんなに苦しいか……。」
使いの男性は本当に心苦しそうだった。
「あの、シンシアはこの村に戻ってくる事はあるんでしょうか?」
「えぇ、魔王討伐の凱旋の為に各町や村に寄って行く予定です。」
「……わかりました。」
そう言って僕は自分の家に戻った。
正直、まだ気持ちが整理つかない。
どこかにまだ希望を持っている自分がいる。
ただ、シンシアに対する恋心は0に近い。
もしかしたらシンシアを名乗る別人じゃないか、と思う自分がいる。
僕が知っているシンシアはおじさん達を大事にする優しい子だった。
そんな彼女がおじさん達を棄てるなんて考えられなかった。
魅了と言うのはそれほど恐ろしい力なのか。
何とも複雑な気持ちで僕はその日は眠りについた。
それから数日後、魔王討伐の知らせが全世界に響き渡った。




