村長に相談しました
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翌日、僕とおじさん達は村長の家に出向いた。
「おぉ、どうした? シンシアの事で相談か?」
村長は50代前半、多分昔は冒険者をやっていたのだろうか体格がいい。
「村長、そうなんです。実は娘の事で相談がありまして……。」
そういっておじさんが話し始めた。
シンシアの様子がおかしい事、ひょっとしたら勇者に魅了されてるのではないか、と言う事……。
村長は真剣なまなざしで僕たちの話を聞いてくれた。
「なるほどなぁ、そりゃあ確かに心配な話だ。」
「ただの考えすぎでしょうか……。」
「いや、心配に越したことは無い。それに、手紙の様子だと確かに魅了魔法にかかっている可能性は高い。問題は勇者が魅了を意識してやっているかどうか、だ。」
「意識して?」
「あぁ、中には無意識的に魅了している奴もいる。基本的に魅了とか相手をコントロールする魔法は『禁止魔法』とされている。昔、それで好き勝手やって国を崩壊させた輩がいるからな。この手紙だと勇者は意識してやってる可能性が高いな。徐々にシンシアを自分の言うとおりにさせている、追い込んでいるように読み取れる。多分、抵抗する力を削ぎ取っているんだろうな……。」
「そんな……っ!」
「あくまで魅了されている、と言う前提の話だ。ひょっとしたら違うかもしれない。ただな、エド坊。」
「はい?」
「お前はもしシンシアが一方的にお前の事を嫌ってもそれを受け止める覚悟はあるか?」
「覚悟、ですか?」
「そうだ、お前とシンシアが恋人関係だというのはこの村の住人の周知の事実だ。もし、振られたとしたら同情はされるだろうが、立ち直れるかはお前次第だ。小説だったらお前に特殊な力が眠っていてそれを使ってシンシアを奪い返す事が出来る。でも、これは現実だ。立ち直れるかはお前次第だ。」
「……それはわかりません。シンシアが変わってなければ僕は多分未練を残してしまう、と思いますし、もし変わっていたら……、やっぱりわかりません。」
「そうだなぁ、確かにその通りだ。いや、酷な質問をして悪かったな。」
そう言って村長は笑ってくれたが、これは『覚悟をしておけ』と言う事だろう。
もし、僕が魅了の事を知らなくて一方的にシンシアに振られていたら、多分本当に立ち直れなくなるだろう。
備えあれば憂いなし、とはよく言うけど事前に知っておけばこちらだって防御策はあるはずだ。
とりあえず村長に相談しておいて良かった、と思う。




