裁判前日
あっという間に一か月が経過した。
勇者達は大人しく取り調べを受けているらしい。
「いよいよ明日から裁判が始まります。」
今日、僕はお城にて裁判の打ち合わせをしていた。
「まず女神様を召喚する儀式を行い原文の読み上げ、原告・被告への質問、証拠の提出等あり、最終的に女神様が審判を下します。」
女神が判決を下す、それが一番の問題点である。
「女神様は公平にしてくれるでしょうか……?」
「それは正直わかりません。何せ勇者を選んだのは女神ですからね……、今回が初めてですから。ただ、女神の判決が納得できない場合は『控訴』する権利もあります。その場合は裁判官が判決を下します。」
「それもそれで不安だなぁ……、圧力とか色々黒い交渉とかあるかもしれないから。」
「エド君、どうしてそんな風に思うの?」
「本に書いてあったから。」
どっかの国の元幹部が書いた王族の暴露本に書いてあったよ。
色々とヤバい話が載っていて読みごたえがあったよ。
「そういう事が起きた為の女神裁判ですから。」
そう言って説明をしてくれた検事さんはちょっと笑ってくれた。
この人、女性なんだけど今回が初めて一人で受け持つらしい。
なんでも、他の検事の人はやりたがらなかったらしい。
そりゃそうだ、平民が勇者を訴えるなんて前代未聞の事だからね。
「相手側も優秀な弁護士を付けているみたいですが……、こちら側が有利だと思って頂いて結構です。」
検事さんはハッキリと言ってくれた。
検事さんとの話し合いを終えて僕達は街へと出てきた。
「街の話題は今回の裁判で持ちきりみたいね。」
新聞とか見ると裁判の事が載っている。
「ただ、勇者が何をして訴えられる事になったか、は書いてないんだよね。」
「今の所、世論は勇者寄りみたいね。まぁ、明日になったらガラッと変わるかもしれないけど。」
「当事者になってみないとわかりませんよね……。」
明日の裁判が何事も無く無事に終わればいいよな、て思う。




