幕間 取り調べ②
此処は城内にある取調室、周りは石壁に囲まれて冷たい印象がある。
此処では現在、シンシアの取り調べが行われている。
シンシアは拘束されてからは元気が無くずっと下を俯いている。
「シンシアさん、貴女には勇者エリックと共謀して『放火』等の容疑がかけられています。」
「……私は勇者様に従っただけです。」
「それは、勇者エリックが有罪になった場合貴女も同じく有罪になる、と言う事になります。それでもよろしいんですか?」
シンシアは頷いた。
ライズはシンシアの様子にちょっとした違和感を感じていた。
魅了されているから、と言っても罪まで一緒にかぶらなくても良いのではないか?
彼女も大きく分けてみれば勇者の被害者である。
「一つ聞いても良いですか? ……もしかして、魅了が解けているのではありませんか?」
ライズがそう聞いた瞬間、シンシアはピクリと動いた。
「魅了がかかった人間の中にはたまにあるきっかけで自分で解く事があります。貴女は何かきっかけがあって自分で解けたのではありませんか?」
「……王都に連行される一週間前、急に私の中で『何か』が抜けていくのを感じたんです。その時に本能的に『聖女の力が無くなった』事がわかりました。それと同時に急にエドの事を思い出したんです。彼にかけてしまった酷い言葉や態度に対する罪悪感が急に襲ってきて……、でもそれをエリックにばれたらどうなるかわかりません。」
一週間前と言えば、教会に調査に入った日、聖典からシンシアの名前を消したと同時に彼女の勇者に受けた魅了が解けたのだろう。
だとしたら、魅了は個人にかかる物では無く『職業』にかかる物なのだろうか?
ライズはシンシアの話を聞いて少し考えていた。
「それでしたら、その事を裁判で証言すれば減罪できますよ。」
「でも、それは言い訳にしかなりません。やってしまった行為は行為ですから罪は背負います。どんな罰を受けても文句は言いません。……それだけの事を私はやってしまったんです。家族や村のみんなを裏切ってしまったんです。」
「わかりました。でも、主張すべき事は主張した方が良いと思います。それは貴女の為にでもなりますから。」




