幕間 取り調べ
「なんでこうなったんだ……、俺は勇者なんだぞ……。」
城の地下にある牢屋の隅で一人ブツブツと呟いているのは勇者エリック。
彼は宰相の息子として生まれ言ってみれば貴族として王道の人生を歩いてきた。
これまで挫折などしてこなかったエリック、これからも挫折なんてしない、と思っていた。
しかし、この現状である。
「エリック・ルーラン、これから取り調べを行います。」
無表情でライズが告げた。
「おいっ! 俺が何をした、と言うんだっ! 俺は魔王を倒して世界を平和にした英雄だぞっ!? その俺がどうしてこんな目に合わなきゃいけないんだっ!?」
「言いましたよね? 貴方には『放火』、『器物損害』、『殺人未遂』等で訴えられているんですよ。あ、後『詐称』もありましたね。」
「俺が何の嘘をついた、ていうんだっ!?」
「……貴方は世界に対してとんでもない嘘をついているんですよ。『魔王を倒した』と言う嘘を。」
「嘘だとっ!? 確かに俺はこの手で魔王を倒したっ!!」
「えぇ、『とどめを刺した』だけですよね? ですが、とどめを刺すまでに何人の兵士が犠牲になっているんですかね?」
「はぁっ!?」
「……今、聖剣や鎧の解析を行っています。あの鎧には『記録』する魔法がかかっているので魔王城で、いや旅路で何があったかをちゃんと記録しているんですよ。」
「なぁっ!?」
「貴方は勘違いしていますが、貴方は我が国に雇われたんです。いってみれば国の代表、その貴方がよその国で迷惑行動を起こせば我が国に対するダメージになります。監視をつけるのは当たり前でしょ? 国に損害を与えたら罰を与えるのも当たり前だと思いますよ。そうしないと他国にケジメがつけませんから。」
淡々と言うライズの言葉にエリックはガタガタと震えだした。
勇者は神に選ばれし存在である、と思っていた。
しかし、彼女はそれを否定した。
「さぁ、時間はたっぷりありますから一から十までしっかりと聞かせてもらいますよ。」
ライズの目は獲物を狩るハンターの目をしていた。




