勇者捕縛
エリック達に強制送還命令が出て一週間後、僕の元にエリック達の身柄が移送された、と言う報告が来た。
「エリック達は宰相の別宅に居たわ。強制送還命令の紙はクシャクシャに丸めていたからその場で強制的に拘束した。」
僕達はライズさんの報告を聞いていた。
「エリックのやりそうな事だわ、多分、勇者だから捕まらないだろう、てタカを括っていたんじゃないかしら?」
ミサさんが呆れながら言った。
「でも、相手は仮にも勇者でしょ? 向こうは抵抗してきたんじゃないんですか?」
「確かに抵抗してきたけど……、投げ飛ばしたら気絶した。」
「え? ライズさんが投げ飛ばしたの?」
ライズさんは頷いた。
「……勇者てこの世界で一番強いはずじゃなかったんですか?」
「私もそう思っていた。だけど、そんな事無かった。」
「それって、もしかして勇者としての『能力』が何らかの理由で封じられたか、もしくは消え去ったかもしれない。」
「そんな事ってあるんですか?」
「勇者は女神によって選出されて必要な能力を与えられるんだけど、その力を奪う事も女神は出来るのよ。多分、エリックの愚かな行為に女神も呆れて能力を奪ったかもしれない。それと同時に聖女の能力も消えた可能性もあるわね……。」
「そういえばシンシアの様子は?」
「呆然としていた。魂が抜けたような感じ。抵抗しなかったのは聖女だけ。勇者と宰相は暴れていたから手刀で黙らせた。」
……ライズさんって意外と武闘派なんだね。
「で、これからどうなるんですか?」
「取り調べをして一か月後に裁判が行われる事になる。」
「そんなにかかりますか……。」
「今回は図書館、教会も関わっているから徹底的に調査を行う。」
ライズさんは淡々と言っているけどその眼には炎が宿っていた。




