幕間 天界にて
「なんでっ!? どうしてこうなったのよっ!?」
ここは天界、世界を管理している宮殿みたいな建物の一室で女神『エダ』は叫んでいた。
「このままだと勇者を選んだ私にも責任が及ぶ事になるわ……、そうなったら私の地位が失墜する……。」
エダは長い髪をかきむしり焦っていた。
何故、エダがここまで焦っているのか、それは天界のシステムにある。
天界は各世界に女神を派遣し世界の管理を任している。
そして、その中から優秀な女神は出世していく。
女神にもランクがあり現在エダは『中級女神』であり、今回の魔王討伐が上手くいけば『上級女神』になる事が出来る。
「そもそも魔王があんな死に方するのがおかしいのよっ! しかも勇者があんな酷い性格だったなんて……、見た目で選ぶんじゃなかった……。」
頭を抱えるエダ、しかし後悔しても既に遅かった。
「勇者が裁かれるなんて前代未聞よ……、私の責任問題にもなるわ。でも、判決を出すのは私だから……、無罪にはならないとしても注意ぐらいで済ませる事は出来るわね……。」
この世界の裁判のやり方は女神に決定権がある、要は例え罪があったとしても女神が無罪を言えば無罪になる。
ただ、過去にある世界で勇者が魔王を倒した後、王になったが好き勝手にやった結果クーデターを起こされ裁判沙汰になったが女神は無罪を言い渡した。勿論、国民は納得いかず女神に対する信仰心は無くなり、重く見た天界上層部はその女神を天界から追放した。
そう言うケースがあるのでそう簡単に勇者を無罪にする事は出来ない。
「まぁ、相手は一般人だし? 文句は言われないわよねぇ」
「それはどうかしら?」
突然声がしてエダは振り向いた。
「『レイラ』様……、どうして此処に?」
エダの前に現れたのは上級女神のレイラだった。
「今回の件、大神様は重く見てるわ。」
「も、もう耳に入ってるんですかっ!?」
エダの顔から冷や汗が出てくる。
「貴女の人を見極める力に疑問を持っているわ。このまま貴女にこの世界を管理させるのは危険と判断して、たった今貴女を更迭します。」
「こ、更迭っ!?」
「貴女は甘やかしたのよ、この世界の貴族達を。その結果、己の欲のままに行動する者が増えた。全ては貴女のミスよ。連れて行きなさい。」
レイラの指示で後ろから武器を持った天使達がエダを抑えつける。
「ま、待ってっ!? ちゃ、ちゃんと公平に判断しますからぁっ!?」
「……私達はミスが出来ないのよ。」
エダの絶叫にレイラは冷たい言葉を投げかけた。
レイラはエダがいた椅子に座り電話を取った。
「こちらレイラです。エダを更迭、これより私が代理として世界のリカバリーを始めます……。」
レイラはそう連絡をして電話を切った。
レイラの目にはエドの姿が写っている。
「……まさか、こういう形で関わる事になるなんてね。」
エドを見るレイラの目は子供を見守る様な母親の目になっていた。




