本の精霊の証言
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「……えっとご主人様て僕の事?」
「勿論です♪」
いきなりのご主人様発言に場の空気は凄い微妙になっている。
司書の人達からは「精霊なんて初めて見たぞ……。」、「マジでいたのか……。」、「可愛い……。」なんていう声が聞こえる。
「何で僕がご主人様なの?」
「今までの中で私を一番大事にしてくれていたからです。他の人間達は私を一回読んだだけで相手にしてくれなかったり、汚れても拭いてくれないし全然大切に扱ってくれませんでした。おまけに私の大切な友達を勝手に何処かに連れて行っちゃうしっ!!」
そう言って司書達の方を睨むシエル。
「友達、ていうのは原本の事?」
「勿論です。他の皆も怒ってますよ。人間の都合に振り回さないでほしいです!!」
その言葉にピクッとしたのがミーナさんだ。
「人間の都合って具体的にどういう事かしら?」
「人間の事はよく知りませんけど、偉い貴族様? えっと宰相って言ってたかな? その人にお金を渡す為に部下の人に命令して私を含めた本達をこの図書館から持っていっちゃったんです。」
「つまり指示をした人がいる訳ね? 顔はわかる?」
「はい、そこの司書長とかいう人とこの図書館の一番偉い人です。」
「司書長?」
「いや、あの、それは……。」
「貴方は此処に納められている本がどれだけ大切な物かちゃんとわかっているんですか?」
ミーナさんの背後にどす黒い物が出てきている……。
「そ、それは勿論!!」
「だったらなんでこんな体たらくな事が起こっているんです? しかも、宰相に渡すお金と言ったら賄賂ですよね? ご自身の懐から出せば良いじゃないですか? どうして貴重な本を売らなければならないんですか?」
「そ、それは……、そ、そう! この図書館を護る為だっ! もっと規模を広くする為に館長と相談して宰相様にお願いをしていたのだっ!」
いやいや、だからと言って本を売りに出す理由にはならないでしょうし、それって自ら宰相に賄賂を渡してました、て自白してるようなもんだよね。
司書の皆さんの司書長を見る視線が冷たい。
それに頼むなら国王様に頼めばいいでしょう。
「そうですか、それでしたら館長や宰相にも話を聞かないといけませんねぇ?」
「えっ!? いや、それは困るっ!!」
「だって、宰相に賄賂を渡したのでしょう? でしたら、この件には宰相も関与していると言う事になります。」
「いやいやっ!? それはその……。」
次の瞬間である、ミーナさんが司書長の胸ぐらを掴んだ。
その顔は正に鬼の形相だった。
「いい加減にしろっ!! 貴様にはプライドが無いのかっ!!」
「ひぃっ!?」
「本の事を真面目に考えずに何が司書長だっ!! 自分の役割をその足りない脳みそで考えてみろっ!!」
なるほど、あれがミーナさんの軍人としての真の姿か……。
「これより改めて司書一人一人に尋問を行う! 嘘偽りがあった場合はその時点で司書の任を解くっ!!」
この後、ミーナさんの厳しい取り調べが行われて本を持ち出したのは司書長、そして館長の指示である、と言う事が明らかになった。




