立ち入り調査が始まりました。
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翌日、王宮図書館の立ち入り調査が始まった。
3階にある研究エリアに調査官達が入り調査命令書を読み上げた。
「王命によりこれより調査を始めます。これがその命令書です。」
「な、なんの捜査だっ!?」
「持ち出し禁止の本が外部に持ち出され売られている、と言う疑惑です。これは勅命ですので隠そうとしたら容赦なく取りしまらせて頂きますので、それでは調査を開始します。」
ミーナさんが昨日会った時とは違い凛々しく感じる。
「司書の方々は本棚から離れて壁側に立ってください。一歩も動かない様に。」
そう言って調査官の皆さんが本棚へと行き調査を開始した。
僕はミーナさんの側で調査の模様を見届けていた。
司書の皆さんは不安そうな顔をしている。
何人か視線が泳いでいる様な人を見つけたけど、持ち出した犯人ではなかろうか。
「室長! 複製本ですっ!」
「こちらにも複製本がありましたっ!!」
ミーナさんの冷たい視線が司書達に降りかかる。
「これは何の騒ぎだっ!!」
後ろから怒鳴り声が聞こえた。
体格のいい男性が入って来た。
「これは司書長、ただいま国王様の勅命によりこの王宮図書館で不正の動きの調査をしております。これがその命令書です。」
「ふ、不正だとっ!?」
「えぇ、持ち出し禁止の本が勝手に館外に持ち出され売られていた、という報告がありまして。」
「し、証拠でもあるのかっ!?」
「えぇ、あります。此処にいる少年がその一部を持っていたんですが、それが火事が原因で一冊ダメになってしまいました。」
そう言ってミーナさんは僕が持っていた本を司書長に見せた。
司書長は目を何度も瞬きして汗がドッと出ていた。
「こ、これは複製本だろ、原本に被害が無ければ問題は無いだろ……。」
「その原本も持ち出されてるんですよ? これは司書長である貴方の管理不行き届きになりますよ?」
ジワリジワリとミーナさんは司書長を追い込んでいくように見える。
その眼は獲物に狙いを定めているように見えた。
「室長! こちらの本棚のうち8割が複製本ですっ!」
「こちらも7割が複製本です!!」
どんどん挙げられていく報告に司書長は顔が青ざめていく。
ミーナさんは無表情で司書長を見ている。
「だ、誰が持ち出しなんてしたんだっ!? は、早く名乗り出ろっ!!」
司書長が怒鳴ると司書の何人かが前に出てきた。
「も、申し訳ございません!! お金欲しさで持ち出してしまいました!」
「私は研究の為に自宅に持ち出してしまい……、自宅にちゃんとありますので。」
司書達の自白に司書長はミーナさんに頭を下げた。
「申し訳ないっ!! 私の不行き届きでありこの者達には処分を行う!! 勿論弁償もするし、すぐに原本を探し出すよう指示するっ!」
「その探し出すのは私達の仕事なんですがね?」
「いや、それはあの……。」
「それに私はこの件には裏がある、と思っています。これは直接被害を受けた『本』に聞いてみる事にしましょう。」
本に聞く?
「エド君、原本である古代の魔導書持ってきているわよね?」
「は、はい勿論。」
僕はミーナさんに原本の本を渡した。
「長く保存されていると本にも意志が宿り、具現化すると言われています……。」
そう言うとミーナさんは原本に手を翳し詠唱をし始めた。
「『この本に宿りし命よ、今ここにその姿を現したまえ。』」
本から眩い光が出て辺りが一瞬見えなくなる。
光が段々と収まってきて見えたのは本の上に小さな女の子が浮かんでいた。
「魔導書『シエル・ゲンガ』、呼び出しにより参上いたしました!」
そう言うとその女の子は僕に抱き着いてきた。
「ようやく会えました! ご主人様♪」
「……はい?」
何故かご主人様認定されました。
うん、なんで?




