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彼女が聖女になりました

 それは突然の事だった。


 いつもの様に畑を耕していると村には似合わない豪華な馬車がやって来た。


 その馬車にはこの国の王家の紋章が飾られていて王族関係者が乗っているのだろう、とは思った。


 多分、村の視察に来たのだろう、と思ったけどシンシアの家の前で馬車が止まった。


 それを見た瞬間、何だか凄く嫌な予感がした。


 僕は慌ててシンシアの家に向かった。


 僕の目に飛び込んできたのはお城の遣いらしき人がシンシアを連れて行こうとしていた。


「お、おじさんっ!? 何があったんですかっ!?」


「エド・・・・・・、神託でシンシアが『聖女』に選ばれたらしいんだ。」


「えぇっ!? シンシアがっ!?」


 僕は驚きの声をあげた。


「エドっ! 助けてっ!!」


 何だかよくわからないけどシンシアは嫌がっている。


「申し訳ないが神託は絶対なのだ。これから城に行き教会の洗礼を受けてもらい勇者様の仲間として旅立ってもらう。」


「そんなの嫌です! 私は聖女なんてなりたくないし勇者様の一員になんてなりたくないっ!!」


シンシアの抵抗はむなしく馬車に乗せられてしまった。


「ご両親、シンシア様の身元は国が保証します。国からは援助金が出ますので。」


「金なんて要らないっ! 娘を無事に返してくれっ!」


「あ、あのっ・・・・・・!」


「君は?」


「僕は・・・・・・、シンシアの恋人です! 彼女と話させてください!」


「・・・・・・良いだろう。」


 馬車の窓ガラスが開けられた。


「エドっ! 私、聖女になんてなりたくないよぅ・・・・・・。」


「シンシア・・・・・・。」


 正直、今のシンシアにどういう言葉をかけて良いかわからない。


 なんとかシンシアの不安な気持ちを払拭させないといけない。


「シンシア・・・・・・、僕はこの村で待ってるから、シンシアが聖女の役目を終えたら・・・・・・結婚しよう。」


「・・・・・・本当?」


「うん、本当だよ。だから、これから毎日手紙を書くよ。」


「・・・・・・私も手紙書くから。必ず帰って来て結婚するから。」


 シンシアはこうして村から旅立っていた。  

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