領主の娘が来ました
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ラジエーヌと僕、シンシアは同い年という事もあり小さい頃はよく一緒に遊んでいた。
成長してからは身分の差もあり距離を取らざるをえなかったけど、それでも手紙を出したりとかやり取りをしている。
最近は領主補佐として村に巡回に来る事もあり顔を遭わす機会が多くなった。
「昨日の夜に村から火の手が上がった、という報告が付近の町からあった! 一体何があったんだっ!?」
「それに関しては今朝報告しに行こうと思っていました。実は・・・・・・。」
村長はラジエーヌに事の詳細を話した。
放火の事、その放火に勇者パーティーが絡んでいる事、被害の事・・・・・・。
その話を聞いていたラジエーヌは驚愕の表情を見せていた。
そりゃあ普通に信じられないだろう。
一緒に遊んでいたシンシアが村を焼こう、としていたんだから。
「・・・・・・以上が現在の被害状況です。我々は勇者パーティーを訴えるつもりです。」
「そうですか・・・・・・。あのシンシアが・・・・・・。」
「あのラジエーヌ様、一つ聞いて良いですか?」
「なに? エド君?」
「ラジエーヌ様は勇者に会いましたか?」
「えぇ、勿論会ったわ。」
「その時に・・・・・・、勇者に変な事されませんでしたか?」
「口説かれたけど、別に何にも無かったわ。」
という事は魅了されてない、という事?
もしかしてかかりにくい人とかかりやすい人がいる、という事?
「多分、『耐性』があるんじゃないかしら? もしくは勇者の好みじゃなくて、魅了を使わなかったかもしれない。」
ミサさんの話にラジエーヌの顔がひきつった。
「それは私が女として認識されてない、という事ですか・・・・・・?」
「多分そうなるかもしれない。エリックは胸の大きい子が好きだから。」
ピシィッと空気が凍りついた。
「ミサさん、それラジエーヌが一番気にしている事なんです・・・・・・。」
ラジエーヌは男勝りの性格なのだが、それが体格に出てしまっていて、つまりは胸が小さい。
本人はそれを気にしていて、色々努力をしているけど効果は無し。
いつからか、悪ふざけでその事をからかうともれなく半殺しの目に会う、それは身分とか関係なく。
あくまで噂だけど、昔この国の王子の婚約者を決める為に貴族令嬢が集められたんだけど、その王子、ラジエーヌを見て鼻で笑ったらしい。
その瞬間、ラジエーヌの鉄拳が王子の顔面に的中した。
普通は王族に暴力を振るうなんてご法度なんだけど、ラジエーヌは許された。
王妃様が『うちの息子が悪いから。』と許してくれたそうで、それ以来、王族とは良い関係になっているらしい。
まぁ、そういう武勇伝を持っているので僕達領民はラジエーヌの体型はタブーとしている。
勇者はどうやらそこを踏んでしまったみたいで・・・・・・。
その事をミサさんに小声で伝えると、しまった!みたいな顔をした。
ラジエーヌの方を見るとどす黒い物が背後から湧き出ている。
「・・・・・・貴方達の決意はわかりました。お父様にも伝えておきましょう。私も全面的に協力します。人を見た目でしか判断できないクズ勇者達に目にものを言わせてやりましょう! そして、私は勇者をぶん殴る! 出来ればコロス!!」
黒い笑みを浮かべて物騒な言葉も出ているけど、とりあえず領主様は僕達の味方になる事は間違いない。
キレたラジエーヌは領主様でも止める事は出来ないから。




