村人だからって何も出来ないなんて思われたくない
僕の宣言に村人達はザワザワし始めた。
「おい、勇者を訴えるって出来るのか、そんな事?」
「出来るよ、ちゃんと法律でも認められているこの国に住んでいる住人の権利なんだ。勿論、手順が必要なんだけど。」
法律の本によると、訴えを起こすには村長→領主→国王の許可が必要となる。
「しかし、そんな話聞いた事無いぞ。」
「そりゃそうだよ。大体どこかで握りつぶされる可能性があるからね。」
そう、例え訴えを出したとしても何処かで握りつぶされる可能性もある。
それでも、僕がこう宣言したのは村長がいるからだ。
間違いなく村長は訴えを通してくれるだろう、と思ったのだ。
村長の方を見るとニヤリと笑っていた。
「俺はエド坊の決断に賛成だ。手を出してきたのは向こうだ。向こうは俺達が何もできないと、高を括っているに違いない。そういう奴らを『ぎゃふん』と言わせてみないか?」
「そうだな、このまま勇者達の思い通りにさせてたまるかよ。」
「あぁ、ハーレムなんて絶対させてさせてやるもんか!!」
私怨が入っているよね、みんな。
「そう言う事になったが、ミサ、あんたは勇者パーティーの一員だろ?」
「この村にいる時点で私がどっちの味方かはわかるでしょ? それにもう脱退届を出してきたわ。あいつらの恋愛ごっこに付き合ってられないわ。」
「よし、方針は決まった! 被害を纏めて領主に俺が報告する。これは国を動かすかもしれない大事になるかもしれない。覚悟はしておけ!!」
『おぉーーーーっ!!!』
こうして勇者達を『ぎゃふん』と言わせるための僕達の戦いが始まった。
この日の夜は、僕は村長の好意に甘えて集会場で泊まらせてもらう事になった。
……何故かミサさんも一緒だ。
この広い空間に二人だけ、というのが何とも緊張感がある。
それにミサさんは美人でスタイルが良い。
シンシアとはまた違う感じの美人だ。
「えーと、すいません。巻き込んでしまって。」
「構わないわ、それに貴方にはちょっと興味があったのよ。」
「僕に、ですか?」
「えぇ、シンシアは貴方からの手紙を私達にも見せていたの。最後の方には見ずに捨ててしまっていたけど。」
その情報はちょっと傷つくな。
「だから、その……悪いとは思っていたけどその手紙を拾って読んでいたの。」
うわ、人に読まれるなんて恥ずかしい。
「手紙から貴方の誠実さがうかがえたわ。正直、勇者パーティーとして旅をしていて人の嫌な部分も見て来たわ……。」
そう言って何処か遠い目をするミサさん。
いろんなものを見てきたんだろうなぁ、と思う。
「だから、貴方の手紙が癒しになったのよ。」
そう言ってニコッと笑ったミサさん。
その顔にドキッとなったのは胸の中に治めておこう。
流石にまだ彼女を作る気持ちではないし……。




