緊急集会、そして決断
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消火活動終了後、僕を含めた村人達は集会場に集められていた。
「早めに気づいたおかげで全焼する家は無かった。けが人もいなかったし被害も最小限に食い止められた。まぁ、実質的な被害状況は夜が明けてからでないとわからないけどな。」
村長の言葉に村人達は安堵する。
「一番被害があったのはエド坊とシンシアの実家か……。放火犯達は確実に二つの家を狙ってきてたな。」
僕の家は裏の倉庫が焼かれて農作業具や本の一部が焼かれてしまった。
おじさん達の家も倉庫、家の一部が真っ黒に焦げてしまった。
多分、おじさん達の家が一番最初に火をつけられたんだと思う。
「それで……、ミサ、て言ったな。勇者エリックが黒幕、て言うのは本当なのか?」
後ろの方にいたミサさんに村長が聞いた。
「えぇ、本当よ。エド君の態度が気に喰わなかったみたいだし、それにシンシアの意志も入ってるわ。シンシアにとってこの村は邪魔みたいよ。」
「マジかよ……。」
「俺達の女神が……。」
男性陣は嘆きとショックが隠せなかった。
て言うか、そういう風に見てたんだね君たちは。
ここで僕はミサさんに聞いてみる事にした。
「ミサさん、勇者は魅了の力を持っていますよね? シンシアも魅了されて変わってしまったんですよね?」
ミサさんは少し驚いたよな顔をした。
「へぇ、魅了の事を知っているなんて貴方頭がいいのね。シンシアが貴方の事を気にしていた理由が少しわかったわ。その通りよ、勇者エリックは魅了持ちで行く先々でその町の女性に手を出しているわ。」
「なんだってっ!?」
「何と羨ましい……、いやけしからん!!」
「男の敵だっ!!」
男性陣からは嫉妬の声が聞こえだした。
うん、段々と女性陣の目が冷たくなっていくから黙った方が良いよ。
「魅了の力はタブー視されてる、と聞きました。それはどうしてなんですか?」
「魅了は人を壊す力を持っているの。強制的に好きにさせる、言う通りにさせる、最初の内は抵抗できるけどだんだんと心が壊れていって、最終的には相手の言いなりになってしまうのよ。」
それはシンシアの手紙からもわかる。
だから、アドバイスもしたはずなんだけど勝てなかった、と言う事か……。
「それに、魅了にかかりやすい人のタイプとして『欲』を持ってる人がかかりやすいわ。シンシアは正にそのタイプね。」
「え? シンシアは何か欲を持っていたんですか?」
「あの子は『お姫様になりたい』ていう願望が強かったのよ。いずれは街に出て豪華な生活をしてみたい、と思っていたみたい。私にもそう言ってたわ。」
確かにシンシアは恋愛小説が好きで良く読んでいたもんなぁ。
夢物語だと思ったけど聖女に選ばれた事でそのチャンスだと思ったのかもしれない。
そこをつけこまれて欲望が曲がった方向に行ってしまったかもしれない。
「さて、エド坊お前はどうしたい?」
当然村長に言われてちょっと考えた。
「正直、シンシアの事はもう諦めがつきました。向こうが手を出してこなかったら僕は何もする気もありませんでしたが、こうして村にも被害が出てしまった以上はこのまま泣き寝入りするつもりはありません。」
そして、僕は宣言した。
「勇者エリックを国に訴えます。」




