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勇者の保護者は魔王様  作者: 鮪愛好家
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プロローグ

初投稿になります。

よろしくお願いいたします。

◇アーリア王国王都


この日、王都は10数年振りに、大きな賑わいを見せていた。



年嵩の男性達は、今迄の自分達の苦難の日々から、今日この日が転換期となると信じ、隣で酒を酌み交わす友人達と、未来の希望を語る。

子供達は、新たな英雄の誕生に歓声を上げ、喜びを全身で表現しながら、街中をはしゃぎまわる。

家の庭先でお茶会をする女性達は、新たな勇者の姿を想像し、期待に胸を膨らませて語り合う。

祭りの日の如く立ち並ぶ露天商が、さまざまな商品を広げて街往く人々を呼び込み、街を賑わす。

通りの重なる主要な広場では、吟遊詩人が過去の勇者の英雄譚を謡う。

大道芸人達が練達した技を披露し、街往く人々に見せて楽しませる。

酒場や食堂は人で溢れ、宿は満席状態で泊まる場所が無い。


何処も彼処も人で賑わって、王都内はお祭りとなっていた。


今回、国からお披露目される勇者を一目見ようと、近隣各国からアーリア王国王都へと人が集まり、ここ数日で王都からは人が溢れそうになっていた。


この王都が、これ程の賑わいを見せたのは、かれこれ10年以上は前となる。

以前にこの国で行われた、先代勇者の出征式典以来だ。


そんな街が、祭りの如く賑わう中、静寂と緊張感に包まれた場所があった。





◇アーリア王国王都 太陽神殿


神殿中央に位置する、本殿内祭壇の前で、勇者を祝福する為の儀式が行われていた。


祭壇のすぐ横には、恰幅の良い、白を基調とした豪奢な神官服に身を包んだ老神官が、祭壇に向けて祈りの言葉を唱えていた。

その老神官のすぐ横には、二人の若い女性神官が膝を付き、両手を重ねて祈るように目を閉じて、老神官の祈りの言葉を聞いていた。

本殿内の壁際には豪奢な衣装で身を包んだ貴人達が、神殿には不釣り合いな豪華な椅子に腰掛けて、祭壇で行われる儀式の様子をじっと見詰めていた。


そんな儀式の行われる本殿の中心部、石造りの祭壇の前に、なぜか子供が1人居た。


名をフレアという。


本人の背丈に不釣り合いな大きさの、黄金の鞘に入った剣を大事そうに抱えて膝を付いている子供が、緊張した面持ちで老神官の言葉を、じっと聞いていた。


歳は10を過ぎた位だろうか?

髪は茶色で首よりも短い長さだ。少しくせが有るのか外に撥ねている。

大事そうに抱えた剣が大きい為か、細身な体躯が余計に目立つ。

着ている太陽を模った紋様の刺繍が入った、赤い色合いの衣装は、本人が着慣れていないのが感じられて違和感が大きい。

何も知らない人が見たら、なぜここに居るのか首を傾げるであろう、場違いな印象を受ける。


そんな子供が1人、祭壇の前に居た。


老神官が祈りの言葉を終えて、祭壇の正面に立つ。

体の向きを変え、剣を抱えたフレアを見据えると、ゆっくりと言葉を投げかけた。


「勇者祝福の試練を受ける者よ、祭壇の前へ」


「はい」


老神官の言葉を受けてフレアは、剣を抱えたまま立ち上がり、ゆっくりと祭壇の前まで歩き、立ち止まる。この日に向けて、何度も練習したが、本番は緊張するのか、少し震えている。

フレアが老神官の前で立ち止まるのを確認すると、老神官は祭壇横の女性神官に目配せをする。


「試練の証を祭壇へ」


そう老神官が言葉を発すると、フレアは抱えていた剣を隣まで来た女性神官へ渡す。

女性神官は受け取った剣をフレアから大事そうに受け取ると、ゆっくりと祭壇左側へ向かう。

祭壇左側へ女性神官が辿り付くと、剣が横になるよう持ったまま、両手の剣を空に掲げ、ゆっくり両腕を下に下ろし、祭壇へ剣を置いた。


祭壇の右側で待機していた女性神官は、剣を受け取った女性神官が祭壇の上に剣を置くのを確認すると、祭壇右端に置いて有った、黄金の杯を両手に持ち、老神官の元へと向かう。

老神官の元へたどり着いた女性神官は、杯を老神官へと渡す。

老神官は杯を受け取ると、杯をフレアの前に差し出す。


「その身に勇者の資格が有れば、試練の杯の中身、その全てを飲み干す事が出来るであろう。」


フレアは黄金の盃を老神官から受け取ると、杯を空に掲げ、練習した言葉を間違えないよう、発する。


「この身、この魂を太陽神に捧げ、試練へ臨む」


ホムラは周りへ聞こえる様、大きな声で告げると、杯に口付け、透明の液体を飲み始める。

神殿内に居た者の視線は全て、フレアに注がれた。

杯を傾け、喉を動かしていたフレアの動きが止まる。

固唾を飲んで見守る周囲の人間。

口から杯を離すと、フレアの体が薄く発光した。


その様子を見届けると老神官は両手をフレアに向けて差し出す。


「試練の杯を」


フレアは杯を老神官へと預ける。

老神官は杯の中身が空になっている事を確認すると、横に居た女性神官に杯を渡す。

女性神官は受けとった杯を持って祭壇まで向かい、祭壇右端へ杯を置く。


老神官はその様子を確認すると、フレアに向かって微笑み、こう告げた。


「よくぞ試練を乗り越えた、勇者・・フレアよ」


老神官は周囲を見渡すと、大きな声で


「今、この時より、フレアは勇者となった。その身、その魂、太陽神より与えられた深き愛と共に!我らからも祝福を‼」


「「祝福を‼」」


その場に居た神官が『祝福』の祈りをフレアに与えると、全身の発光がより強い光となった。


それに合わせて大きな歓声が壁際の貴人達から上がる。


この日、アーリア王国で新たな勇者が誕生した。

暫くは毎日投稿出来るといいな。

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