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三日に一度くらいのペースで更新しようと思ってます。
拙い作品ですがどうぞ
「なあ、瑞樹。お前さ、星秋の生徒会長見たことあるか?」
午前授業で昼には下校というのに俺、佐久間瑞樹は小学生からの友人である荻野秀輝に駅前のファミレスに連れ込まれていた。
「男か女かすら知らないな。」
まあどうせ女の話だろう。そうでもなければこいつがこんなに生き生きしてるはずがない。
「女だよ!俺が話を持ちかけた時点で察しろよ。」
秀輝はこんな恥ずかしい台詞を平然と公衆の面前で叫ぶ奴なわけだが横にいる俺はそこまで強靭なメンタルを持ち合わせてないので声を小さくしてほしい。
荻野秀輝、今年で17歳。クラスの中心的存在。ルックスは上位に入るが笑えるほど運動ができない。まあそう都合よく完璧な人間がクラスに一人いるわけではないということを見事に証明してる。
本当は全く興味がないが一応聞いておいてやろう。
「新しい彼女の自慢か、どうもありがとうな。」
「何言ってんだ、俺ごときが彼氏とか烏滸がましすぎるわ。」
英輝はそう言い顔を少し赤らめる。
「そんなに綺麗なのか?」
秀樹基準の綺麗ははっきり言って辛口過ぎる。過去こいつが認めた美人は俺の知る限り三人。しかもそのうち一人は町中ですれ違っただけだ。
「あぁ、絶世の美女だよ。とても同じ人間とは思えない。」
「そのレベルになるとかえって声をかける男も少ないから成功率高いらしいぞ。」
よく言われる話だが秀輝はお気に召さなかったらしく顔をしかめる。
「お前まだそんな夢見勝ちなこと信じてるのかよ。美人を鼻にかけるタイプを除いたら残りの性格いいやつなんて焼け野原だよ。ほら、5組の冬島希美さんとか見てみろよ。あの絶望的な性格。」
過去に何かあったのかは知らないが秀樹はやたらとこの人に突っかかる。
「そんなに性格悪そうには見えないけどな……。」
「お前耳腐ってんじゃないか?あのご令嬢の喋ってるところ見たことあるだろ。」
入学式で完璧な新入生総代をやり遂げ一見すると完全無欠に見えた彼女にも欠点があった。こういう表現で彼女を定義することはあまりしたくないがいわゆる毒舌というやつだ。
「まあ気持ちはわかるぜ。容姿はあのレベルだからパッと見性格良さそうに見えるしな。」
「そっちはもういい。要するに星秋学園の生徒会長様とお近づきになりたいわけか?」
対立する感情を交えた意見を推す両者がお互いの意見を変えさせようとすることは不毛だ。感情の混じる意見は意識であって意思は主観だからな。
「まあそう思うのは山々だけど今まではチャンスが無かったんだよなぁ。」
「今までは?」
何か伝でも見つけたのだろうか。きっかけがなければ動けないと言うのもらしくない話だが。
「ああ、今はある。いや、今しか無い!」
焦らすな、すぐ言え。瑞樹はそんな言葉をグッと飲み込む。
「悪いが言っている意味かさっぱりわからん。」
「市内の代表生徒交流会が我が鈴蘭高校で今日開催されるんだ。」
誰が出席するかなんてよく調べられたな。ストーカーかよ。
「でも普通うちの高校からはうちの生徒会長が出るんじゃないか?」
「開催校のうちは希望者三人が参加を許されている。」
そもそも生徒間の交流会と言っても生徒会活動の情報共有の場だったはずだ。一般生徒が参加しても話についていけなくなるだけだろう。
「なるほど、てかそれ誰もやりたがらないだろ。」
「だからあっさり選ばれた。」
「まあそんな馬鹿馬鹿しい理由で参加したがる生徒はお前くらいしかいないだろ。」
秀輝もそこは自覚しているようで軽く肩をすくめる。しかしすぐいたずらっぽい笑みを浮かべ瑞樹を見る。
「何いってるんだ、親友?お前も参加者に入ってるじゃないか。」
さあ、そろそろ家に帰らないと。楽しみにしていたドラマがあった気がするしな。
「ちょっと待て!帰ろうとするんじゃない!!」
「何勝手に俺を巻き込んでるんだよ!しかも当日に報告とか頭悪すぎだろ!!」
「前々から言って参加取り消しされたらたまらないからな。」
「ってそこドヤるところか!?」
全く、自噴勝手なやつだ。俺が何か予定が入っていたらどうしたつもりだ。
「まあ二万分の一の神秘を見るチャンスなんだ。絶対に後悔はさせないからさ。」
「二万分の一?」
秀輝はさんざんもったいつけた挙げ句ようやくその言葉を発した。
「星秋の生徒会長は先天性白皮症、アルビノなんだよ。」