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日常の天才  作者: 九条歩
1/5

一人目

ある日目覚めるとそこには只の日常が広がっていた。時計は丁度8時半をまわったところだった。


「やっべ、寝坊だ遅刻する!」


 そう叫びバス停から学校まで猛ダッシュ中である男、すなはち俺、井野剣志はいつも通り、盛大に遅刻していた。本当ならここで、走ってきた転校生美少女とぶつかってフラグが立つのだろうが、あいにく男子校であるので万に一つもそんなことは起こらない。これがいつもの日常、何も起こらない日常の始まりである。

 このあたりで自己紹介をしておこう。俺は井野剣志、高校二年生だ。通っているのは国内屈指の名門校棚田学園だ。棚田学園は日本一の大学東経大学、通称東大に毎年大量に合格者を排出している。もちろんそこに集まる生徒のレベルは計り知れない。そんな中に俺がいるわけだが、そもそも俺は天才じゃない。運がよく偶然入学できた人種である。そんな俺だが一つだけ才能がある。それは誰とでも友達になれることだ。特別な才能でも無いと思うが、個性あふれた棚田学園ではそれさえも才能なのである。

 そんな棚田学園の秀才、天才を横から見た話ができたらと思う。

 そんなこんなしているうちに教室までたどり着いた。特に遅刻を咎められることもなく席に着いた。1限目終了したあと、うざいやつが近づいてきた。彼は自己主張が強い努力家だ。とりあえずことある事に褒めてもらいに来る変人だ。そうだな今日は彼、石山慎太郎について語るとしよう。彼と最初に会ったのは入学式当日であった。そう考えるとあいつとはもう二年の付き合いになったのかと、しみじみと思う。話を元に戻そう。最初に会ったときのストレートな感想は、「変人のサナトリウムと名高い棚田高校にこんな普通のヤツが来てるのか!何とかやっていけそうだ!」と、思ったものだ。その時に少しでもこんな普通なやつが来るはずもないと考えなかったことが今でも恨めしい。そして、そんな奴と友達になってしまったことも最悪の選択だった。悪いやつではないんだ。だが、いい所を打ち消してしまうぐらい自己主張が強い。彼は学校に来ると同時に参考書を開き、勉強を始める。登校時間が短くて済むようにわざわざ学校のほぼ隣まで引っ越してきたのだからその勉強への執念は認めざるを得ない。そして休憩時間は構ってもらいに俺のところへ来る。俺は顔が広いから俺のところへ来ておけば話し相手に困ることは無い。そうして放課後にまた勉強をして帰っていくそれが彼の日常だ。

エジソンの有名な名言にこんなものがある。


「天才とは99%の努力と1%の閃きである」と。


努力することしか頭にない彼はある種の天才なのだろう。凡人としては尊敬するばかりだ。大物になる前にパイプを作っておこうと思う。


ここでやっと一時間目が始まった。俺がこんなことを考えていたとも知らずに石山は席に戻って参考書を開いている。次は誰について語ろうか…。



~続く~

これからも順次更新していきます。よろしくお願いします。

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