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機械女神スラちゃんの飼育日記  作者: エエナ・セヤロカ・ナンデヤ
第二章:スラちゃん故郷出頭編
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91話

 「ありえない、陽菜が負ける要素なんてなかったはずだ」


 「……ふふ~ん……もぐもぐ。だから言ったじゃないですか……もぐもぐ。ここにいるのは皆の思いを背負った精鋭スライム……もぐもぐ……キャンディくらいではもはや止められないのです!ボクたちの勝利です!」  

 

 「スラ……」


 スラは落ちていたキャンディを頬張りながらドヤ顔で説明する。つまりキャンディに釣られたのはスラ1匹だけだったと言う事か。

 ……もしかしてスラって機械女神の中でもかなりのおばか……いやいや、これ以上考えるのはやめよう。ペットは少し馬鹿な方が可愛いくて良いって何度も自分に言い聞かせているだろう!

 

 「もぐもぐ……ふふ~ん!」


 すごく勝ち誇った顔をしているスラになんて声を掛ければ良いのか分からない。見てはなかったが、スラが陽菜を捕獲するのに何か役に立ったとは思えない。

 ボクたちの勝利っとか言ってたけど絶対スラ何もしてねぇぞ。 


 「ナ……ナオ、へ、へるぷ~!」


 俺に助けを求めた陽菜はまだがんばってスライムを引き剥がそうと抵抗していた。

 全力でもがいていたがスライムたちの連携力によって上手く陽菜の力が出せないようべったりと貼りついていた。まぁそもそもの話をしてしまうと複数の機械女神に相手に力ではまず勝てない。

 ウチのスラですらトラックに轢かれそうになった子供を助ける為にサイコキネシスを使ってトラックを浮かせるくらいできるのだから。ついでに轢かれそうになった子供とは俺のことです、はい。


 「ここまでがっちり拘束されたらもう駄目だろ。諦めろ」


 「諦めてたまるかっ~!力尽き果てるその瞬間まで抵抗し続けてやるっ~!」


 「Oh! This is BUSHIDO! がんば!」


 だが、表向きはスラの友達と言う理由だけで故郷に来る為の車を作る作業を一晩中手伝わさた挙句、健気にも異世界まで付いて来たと思ったらいきなり風呂に沈められる陽菜。

 そう思うと何だか陽菜の事がとても可哀想に思えてきた。


 「あ~……今日はこの辺で許してやっても良いんじゃね?ほら、車で仮眠してるとは言え疲れはまだ残ってるだろう?」


 「うにゅ~。やっぱり計算通りヘタレてしまいましたか」


 「べっ別に!?ヘ、ヘタレてなんかないし!?機械女神の力に頼らなくても俺は俺の力で陽菜にセクハラできるって言いたいだけだし!?てか、そもそもなんでスライムたちがそこまでして陽菜をアヘらせたいんだよ?」


 そうだ。アヘらせたいのは俺であってこいつらじゃないはずなんだ。

 なのになんで命がけの選抜大会までしてるんだ?  


 「それは残念ながらなお君には言えません!……そのー詳しい説明はできないなのですが、陽菜ちゃんが賢すぎたのが原因です!だからアヘらせないといけないのです!」


 「こらぁー!なんで私のせいになってるのよー!いや、私も悪かったけど、あんなに簡単に騙される機械女神にも問題あるでしょーが!私は問題提起をしただけよ!」


 一体陽菜はどんな事をしたのだろうか?アヘらされるくらいだ、相当な重罪なんだろう。


 「黒様、機械女神のトップとして最終決定の判断をお願いいたします!」


 「"…………ねばーふぉーげっと、どんぐり"」


 「ええっ!?何っ!?まさかどんぐりくらいで喧嘩してるとかじゃないよな!?」


 「食べ物の恨みは恐ろしいと言う事です……残念ですがこればっかりは親友のボクでも庇い切れません!」


 「……陽菜、もし本当にそんなしょうもなさそうな理由だったら俺は全力で助けるぞ?」


 「ナオ……」


 陽菜は涙目になりながらもすごく嬉しそうな顔をしていた。

 ええい、セクハラは中止だ!中止!そんな顔されたら楽しいセクハラも楽しめねぇよ!

 俺は急いで風呂から出て陽菜を助けようとする。

 さっき俺にやらかしてくれたトイレダンジョンの件を持ち出したら上手く相殺できるだろう。


 「……ありがとう。でも、ナオっていつもセクハラしたら罰を必ず受けるでしょ?」


 「えっ?あ、ああ。ポリシーだからな」

 

 「……よくよく考えたら私も悪いことをしたんだから何かしら形で罰を受けないといけないんじゃないかと思ってたの。だから今回はね、ナオを見習ってこのまま罰を受けようと思う」


 「……陽菜」

 

 「でも……できればその……お願いがあるの」


 「なんだ?」


 「……ナオには恥ずかしい姿見られなくない」


 陽菜は顔を真っ赤にして目を合わせないように背ける。

  

 「そりゃそうだ。全てのプライドを捨てて生きている俺ですら同級生、しかも異性に「おほっーーー!!ぎもぢぃのおおおおぉ!!」って言いながらアヘ顔ダブルピースしている姿なんて見せたくはない」


 「いや……流石にそこまではされないと思うけど」


 「分かった。今回は陽菜の気持ちを汲んでそこの脱衣所で聞き耳を立ててボイスだけを楽しもうと思う」


 「えっ?えっ?それ意味なくない!?意味なくない!?」


 「なぁに、安心しろよ。恥ずかしい"姿は"俺には見られないから。じゃあスラ、実況よろしく」


 「うにゅ~。できれば参加して欲しかったですが仕方ないですねー。いてらー」


 俺は脱衣所に出てドアを閉め、全神経を風呂場に向ける為に胡坐を組んで精神統一の準備を始める。

 いいか、今から俺はボイスレコーダーだ。その全てを録音して魂に刻み込め。

 そして今から起こった事ありのままの出来事をを自分の子供へ、自分の孫へ、自分の子孫へと語り継ぐのだ。

 そしてそれこそが俺が子孫へ残すことができる夏野家の家宝だ。


 「すぅーはぁー……」


 我はボイスレコーダーなり


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