88話
がちゃっとドアを開け脱衣所に進入。
いつもなら陽菜の服やら下着やらをスーハースーハーして満足して帰るだろうが今回の俺は一味違う。
ふはははは!そんな布切れに用はないのだ!
「俺、参上!失礼する!」
そのまま脱衣所を素通りして風呂場へ。
闇の衝動の影響で震える手を暴れないよう押さえつけながらドアを開け進入を試みる。
このドアにロックがかかってないのか、そもそもロック自体が存在しないのかを確認する余裕なんてなかったが、すんなりとドアが開いた。
「待たせたな!」
「・・・待ってないわよ」
陽菜からの抵抗もなくそのまま俺は目標地点まで到達することができた。
あっさり到達できたのは良いが、こうも簡単に到達できると面白みが全然ないな・・・
まるでチートを使っていきなりレベル999で魔王を倒してあっさりゲームクリアしてしまった気分だ。
糞ゲーならさっさとクリアして次のゲームに移れば良いのだが、今やってる陽菜ちゃんクエストは神ゲーの中の神ゲー。
もっとじっくりと味わいたかったなぁ。
「で、なんで裸じゃないんだ?風呂に失礼だろ」
「風呂に失礼って何よ・・・。てか前は隠しなさいよ!」
「そうだな、俺だけ見せるのはフェアじゃないな」
てっきり陽菜が抵抗する事を諦めて裸姿を拝めると思ったが陽菜とスラを見るとスク水を着ていた。
しっかりとスク水は着ていたから恥ずかしい所は見えないのだが陽菜は手でおっぱいを隠して恥ずかしそうにしていた。
なぜだ・・・なぜなんだ!?普通ならスク水の陽菜を拝むことができれば狂喜乱舞するくらい嬉しいイベントのはずなのにこのがっかり感は何なんだ!?
まるで回らない寿司を奢ってやるよと言われてすごく楽しみにしてしたらスーパーの惣菜売り場に売ってるパック詰めの寿司を渡された気分だ。
いや、別にパック詰めの寿司でも俺にとってはなかなかランクの高いご馳走だぞ?
でも悲しいかな・・・童貞の俺にとっての価値観は裸>>>スク水になってしまうのだ。
裸を見れると楽しみにしていたらスク水だったと思うとどうしてもがっかりしてしまう。
とりあえずこのまま俺の裸だけ見せるのは俺だけ損しているので近くにあったスク水(女子用)をとって俺も着用する。
「これで男女平等だ」
「えっ・・・それ着るの」
おお、フィット感が他の物とは段違いだな。
タマタマ辺りがブリーフ以上にきゅっと引き締められるのは快感だ。
癖になりそうだぜ!
「すいません。努力しましたがこれ以上脱がす事ができませんでした。」
「・・・ほう」
スラの計画では裸にするつもりだったのだろうがスク水着用で妥協されたのだろう。
スラがちょっとしょんぼりとしながら俺に謝罪する。
だがその表情には目標の100%達成できなかったけど70%は達成したから褒めて欲しい、みたいな顔をしていた。
もしスラが赤の他人だったら十分褒めても良いがスラは俺のペットだ。俺のペットならばそんな甘えで満足してもらっては困る。
エロに関しては妥協の許さないペットに育って欲しいのだ。
「スラ・・・君には期待していたんだがな・・・私はがっかりだよ」
「で・・・でも、なお君はスク水が大好きだから――」
「確かにスク水は大好きだ。だが、時と場合を考えたまえ。女の子が風呂で入浴しているのは裸が当たり前なんだ。その当たり前の事を用意できなかった時点で君は何もしていないのと同義なんだよ」
「そんな・・・」
「むしろこうやってスク水でガードして待ち構えられているくらいだったら、初めから君の手なんか借りずに私一人でやった方がマシな結果が得られたかもしれない」
「・・・すいません」
「はぁ・・・この責任はちゃんと君にとってもらうよ。・・・これから君は夏野家、スラ小屋支店に出向してもらうつもりだ」
「う・・・うにゅ~・・・」
スラ小屋とは昔俺がスラの住む所を確保する為に作った自作の犬小屋だ。
スライムなんだから少しでも自然感ある庭で飼育してやった方が良いだろうと思って作ったのに、スラは庭に置いたスラ小屋に住もうとはせず結局そのまま放置されていた物だ。
「ちょ、ちょっとやり過ぎじゃない?ほら、スラも一応がんばって私を脱がそうとしたのよ?」
陽菜がスラのフォローに入る。
「陽菜も知っての通り、我が家には最近ミニスラも入ってきてメインペットの座を巡って熾烈な競争が発生した。だからスラだけを甘やかすわけにはいかないのだよ」
「メインペットって何よ」
「えっ?知らん」
だって前スラが言った言葉を適当に持ってきただけだし。
ペットにメインもサブもないと思うんだが・・・
「ごほん・・・もし出向になりたくなかったらもう方法は一つしかない・・・失敗を成功に変えるのだよ、ちらっ(陽菜の方を見る)」
さぁ、友の失敗を帳消しする為にそのスク水を脱ぐのだ陽菜!
同情誘って陽菜に脱いでもらう作戦の結果は果たして・・・!?
「ごめんねスラ。出向先のスラ小屋でもがんばってね!」
「即答ですか!?切捨て早くないですか!」
だよなー。こんな茶番くらいで脱ぐビッチじゃないよなー。
「・・・支店長!ボクにチャンスをください!必ず支店長の期待に添えて見せます!」
「支店長って誰やねん」
終わったと思っていた茶番が続行されていた。
「支店長がご満足するとっておきの物を脱衣所の棚にカゴの中に用意しております!どうか処分を決めるのはその後で!」
「ん・・・何だ?」
「このホテルの名物の最高級ローションです!」
「ほう・・・私を期待を裏切らないと約束できるのか?」
「できます!」
「ではとって来よう」
「ありがとうございます!」
スラはビジネスマンみたいなビシっとしたお辞儀をする。
普段の俺とやってる土下座やお辞儀の練習がここでもしっかりと生かされていた。
そして俺は最高級ローションを取ってくる為に脱衣所に戻る。
一体どんなローションなのだろうか。塗った相手を発情させるローションとかだったら最高なんだが。
「カゴ・・・あれか」
棚の上にある大きめのピンク色のカゴを床に下ろす。
そしてカゴの中身を確認する。
ぴょんぴょんぴょん!
「・・・よぉ」
カゴの中身は数匹のスライムだった。
ローションってスライムの事かよ!?




