80話
「ここか・・・」
といれダンジョン攻略後、少し休憩したかった俺は、スラにオススメされた所に向かった。
スラは何やら現場監督の仕事があるらしく、陽菜は行方不明だったので俺は寂しくボッチだった。
俺が向かっている先は、車の中でスラが言っていた自慢の水が飲める故郷最強の観光スポットらしい。
そのご自慢の観光スポットに着くまでにご丁寧に多数の看板が設置されていて(3メートル間隔で1看板設置)道に迷うことはなかった。
だが、看板の中には「危険が危ない!」など少し間違った日本語の使い方が書かれている看板も多かった。
どうやら地球に脱走したスライム達が故郷にいるスライムに日本語に関してのデータを送っているので故郷にいるスライムも問題なく日本語を読み書きできるのだが、練習不足の為若干怪しい箇所もあるらしい。
後で指摘しといてやろう。
たどり着いた先の目の前に広がっている景色はとても綺麗で大きな湖だった。
近くで湖の水を見てもとても綺麗で透き通っている。
どうやらこの湖の水は人間の俺がごくごく飲んでも大丈夫らしい。
「おや・・・?」
湖のすぐ傍にサッカーボールくらいの大きさの黒い物体があった。
すたすた
気になって歩いて近づいて見てみると、それは真っ黒な色をしたスライムだった。
色々な種類の色のスライムを見たり斬ったりしたが黒色をしたスライムを見るのは初めてだった。
レアなスライムなのだろうか・・・試しに声をかけてみようと思ったがどう接すれば良いのか分からない。
流れでスラ同様、他のスライムに対しても遠慮なくペットみたいな扱いをしてしまっていたが、よくよく考えたらこんなスライムでも正体は人間の寿命を遥かに超えて生きている機械女神。
人間より偉いかどうかは別として、初対面なんだから敬語くらい使っておいた方が良いのだろうか・・・
「こんにちは、隣に座ってもいいですか?」
いつもの爽やか笑顔で好青年イケメンを演じる。
この顔を見た奴は何故かドン引きする確率が高いのだがきっと俺の美貌に嫉妬しているのだろう、そうに違いない。
・・・
おや、返事がないぞ?
特に動きもないし寝てるのだろうか。
そうだったら無理に起こす必要もないだろう。
起きた時にびっくりされないよう、黒スライムから少し距離を取って俺は腰を下ろして休憩する。
「ふぅ・・・」
人間が飲んでも大丈夫な湖の水ってことらしいが現代っ子としては加熱殺菌くらいしときたいなー念のため。
もぞもぞ
ん?
もぞもぞもぞ
何やら音がしたのでそっちの方を見ると黒スライムがとてもゆっくりしたペースで地面を這いながらもぞもぞと俺の所に近づいてきた。
スライムらしい地面を這いながらの移動はスラがよっぽどしょんぼりした時くらいしか見たことないので珍しい光景だった。
何だろう、しょんぼりしてるのだろうか?
もぞもぞ近づいてきた黒スライムは俺の座っている横までやって来てその場に止まった。
・・・
その後、しばらく黒スライムを観察していたが動きらしい動きがなかった。
俺との接し方が分からず迷っているならばあたふたとした動きをするし、緊張してるならぷるぷる震えたりするのだろうが黒スライムにそのような動きはない。
うーん・・・ここまで何考えてるのか分からないスライムは初めてだった。
そこで、この状況を打開すべく俺は自分が食べるためにリュックから持ってきたせんべいを取り出す。
「地球の食べ物です。食べてみますか?」
袋から取出しせんべいを黒スライムの前まで持っていく。
俺にとったら目や鼻や口がついていないスライムはどこが前で後ろなのか分からなかったがスラ曰く、「常に視野は360度とれていますのでどこでも前で後ろなのです!前後なのです!」と答えが返って来た。
よって、適当にそれっぽい所にせんべいを持っていった。
「・・・」
そろーり
黒スライムはとてもゆっくりとした動きでせんべいを受け取りそのまませんべいをくわえた。




