表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/184

6話 散歩反省会!

 「母さん、今日は俺が晩御飯作ったんだよ。にぱっー」

 

 飛びっきりのスマイルで母さんを今まで呼ぶ。ふっ……罪な息子だ。この笑顔は母親ですら女にさせてしまうほどの犯罪的な笑顔だ。

 そんな息子が丹精込めた作った雑草スープ、召し上がれ☆ 


 「なお君が晩御飯作るのって珍しいね~何かな、何かな~?ほほう、これはこれは」


 「"いただきます!><"」

 

 ずるずるー


 ……嫌がらせのつもりで用意したものにも関わらず、1人と1匹は嬉しそうに食べていた。

 そりゃ食える程度には調理したけどさぁ……もっと俺の意図を汲んでくれよ意図を。

 

 「"おいしい!こきょうのあじ!"」


 「うんうん、この丁寧な下ごし処理!お母さんにに対する愛を感じるね~!」

 

 「……ねぇよ」

 

 そして雑草スープは美味しそう食べてそのまま完食される。

 

 「"おかわり!"」


 さらさらさら


 おかわりを要求してきたスラの食器に無言でドッグフードを入れる。

 

 そしてスラはしょんぼりとした後ポリポリと食べ始めた。スラは俺が何をしても大抵喜ぶのだが、ドックフードや昆虫ゼリーなどのペット専用の食べ物はお気に召さないらしい。

 こういったエサを与えると落ち込んだ様子で完食した後、とぼとぼと俺のベット潜り込んで不貞寝する。


 だが、俺の3年間の(全く無駄だった)苦労を思えば……これくらいしたって罰は当たらない!


 「さて本題に入ろう。母さん、スラのことなんだけど」


 「ん?なぁに?」


 「スラは……スライムなんて動物は本来、存在する生き物じゃないよな?」


 「うん、架空の生き物だよね」


 「そんな生き物が世間に知られたら大騒ぎするよな?しかも人間の言葉を理解して行動するんだぜ?」


 「うん?」


 「"スラちゃんイジメよくない!"」


 どうやらドッグフードに対する抗議をしているようだった。

 無視。


 「だから俺はこの3年間細心の注意を払ってスラがバレないようにしてきた……」


 「……」


 母さんが苦笑いし目をそむけて無言になり、やっと俺が何を言いたいのか察したようだ。


 「散歩1回するのだってルートを考えて人と極力会わないようにして周囲にも常に気を配らせながら散歩していたんだ。そう、俺はスラの散歩を常に気を張りながらさせていたのに……今日偶然会った鈴木おばちゃんに聞いてしまったんだ。」


 「……」

 

 「スラは母さんと一緒に歩いて(跳ねて)散歩することや、公園でスラが正体を隠そうともせずに普通に子供と遊んでいることを。そして、スラの正体をご近所さんのおばちゃん連中のほとんどが知っていることもだ」


 「……ごめんなさ――」


 「いいや、俺はそこについては全く怒ってないんだ。むしろ母さんの人徳に尊敬だってしている。普通ここまで正体がバレたらあっという間に広まってテレビ局やら研究員やらがやってきてパニックになるのは目に見えている。この事なかれ主義の俺ですら1度はスラをテレビ局に持っていって金儲けしようと企んだくらいだ。だがこの3年間、そういったパニックにもならず平穏に暮らすごとができている。これは母さんの立ち回りが良かったのだろう」


 「いやぁー……はは。なお君に褒められると照れるなぁ~……」


 「な・ん・で、スラの正体がバレていることを俺に言わなかった?」


 「お母さまイジメよくない!」


 スラが何か主張しているようだった。

 無視。



 「しかも、それを俺に悟られないようにするためにご近所さんと口裏を合わせていたとか?」


 「えっとね、初めはがんばってスラちゃんがバレないように散歩とかしてたんだけど……。ほら、スラちゃんって元気でよく飛び跳ねるからすぐバレちゃって。それをなお君に知られたらなお君がスラちゃんを家に置いておくリスクを考えてスラちゃんを捨てちゃうんじゃないかと思って黙っていました」

 

 「なるほど。俺だって親父が知らない女と浮気して今頃ホテルでニャンニャンしていることを知っているとしても母さんに伝えるか迷うな。親父が捨てられる可能性がある」


 「例えが良くないよ!良くないよ!お父さんはそんなことしないよ!?」


 「ふぅーん……それで3年間言えずに黙ってたってことか?」


 「そのー実は……。しばらく経った後、なお君に言おうかな~って思ってたけどスラちゃんに止められて」


 「はぁ?」


 ぴょん!ぴょん!ぴょ――がしっ!!

 

 全力で逃げようとするスラを鷲掴みにした。スラが全力で逃げたら捕まえられないし捕まえたとしてもすぐ逃げられることは知っている。

 だから逃げれないようドスの効いた声でおまじないをスラにかける。


 「スラ……今逃げたらこれから1週間お前の飯はペット用の冷凍ネズミな」


 ぷるぷるぷるぷる!!


 スラがかつてないほどぷるぷる震えてビビっている。

 

 「お母さまへるぷ!!」


 スラが助けを呼んでいるようだった。

 無視。


 「……母さん、話を続けて」


 「その……あまりスラちゃんを怒らないであげてね?そもそも悪いのお母さんなんだから」


 「前向きに検討すると約束しよう」


 どうせ黙ってる方が面白いからとか言われたんだろ?

 

 「スラちゃんがね、なお君に黙ってる方がおもしろい……って」


 「そうか」


 ……ふぅー。

 明日ペットショップに行かないとな……冷凍ねずみ。


 「ねっ、なお君!」


 「何だ?」


 「さっきの話だけど、お父さんは本当に浮気なんかしてないよね?ねっ!?」


 「もし浮気していたらどうする?」


 「明日……お父さんの分の冷凍ねずみもよろしくね……へへっ」


 「怖っ!?目のハイライトが消えてるよっ!?浮気は冗談だから!!」


 浮気ネタはこれからは控えよう。そうしよう。

 

 そのあと1週間、冷凍ねずみは流石に可哀想と言うことでスラのご飯は通販で買ってきた食用カエルになり、俺がから揚げやどんぶりなどなど工夫を凝らして調理した。

 しかし、反省の意味を込めての食用カエルだったのにスラにすごく美味しそうに食べられてしまったせいで全然罰にならなかった。

 試しに俺も食ってみたら……美味しかった。

 

 優しい世界。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ