64話
「俺、子供の裸に興味ねぇえんだけど作戦!これからミニスラちゃんには脱衣所のドアの下の隙間から入り込み内側の鍵を開けてもらう!」
ぴょんぴょんぴょん!
「そして、俺がスラの着替えを持っていって偶然を装い、風呂から上がった裸の陽菜とばったり会ってしまうが、「俺は陽菜の裸見てもムラムラなんてしねーし」と涼しい顔をして退出するシンプルな作戦だ」
ぴょんぴょんぴょん!
「報酬としてこれをやろう!では成功を祈る!」
引き出しからスラが好きなチョコレートをミニスラちゃんに与えると勢い良く飛び出した。
ふっふっふっ・・・漫画では奇跡のようなラッキースケベが頻発するが俺はその奇跡を自らの手で掴んでやる。
今までの経験上、風呂から上がるのは30分後くらいだと予想し俺は精神統一を行う為に正座をし瞑想に入る。
そう、この作戦を成功させる為には陽菜の裸を見た時に動揺しないことにある。
我の内にある全ての煩悩を封印するべし。
「我は賢者なり我は賢者なり我は賢者なり」
一人でブツブツ言ってる間に30分が経過したため、作戦実行に移る。
スラの着替えを持って脱衣所に向かう。
恐らく今までの俺なら脱衣所に向かう間にスラの着替え顔をうずめスーハースーハーしてしまうだろうが今の俺にはただの布切れにしか思えない。
脱衣所の前に到着した俺はドアに耳を当てて様子を探る。
「ねぇ、本当にナオを連れて行くの?」
「連れて行きます!」
グットタイミング!
脱衣所には丁度スラと陽菜がいた。
「危険な事にはならないと思うけどさ、あんまりナオに深入りさせるのは良くないんじゃない?」
「なお君はもう、ボクを使役するご主人様なのです!むしろ色々知ってもらって正しく運用してもらう方が賢明です!」
「運用って・・・まぁスラがいいんだったらいいけどさ」
ん、どうやらスラと陽菜は俺を褒め称えているようだ。
そうだ、もっと俺を褒めたまえ。
「じ~」
「・・・」
振り向くと母さんがいた。
何これすっげぇ気まずいんだけど。
まるで男の一人の営みが親バレしてしまったような気分だ。
「何してるの~?」
「・・・スパイごっこだよ」
「へ~まぁ、ほどほどにね~」
ニヤニヤしながら母さんは居間に戻っていった。
危なかった・・・精神統一をしてなかったら心が折れていたな。
だが、今の俺には作戦を中止するなんて選択肢はない。
母さんが過ぎ去った所で作戦に決行する。
「スラ~、着替え持ってきたぞ~開けるぞ~」
ガチャッ・・・ガチャッ
ドアを開けようとすると・・・鍵がかかっていた。
おかしい、そんな馬鹿な!
何故、鍵がかかっているのだ!
ミニスラちゃんと契約した場合、失敗はするが裏切ることはない。
だが、鍵を開けるくらい失敗も糞もないだろう。
ってことはもしや・・・!
「ナオ~何してるのかな~?」
顔が見えないが明らかに勝ち誇ったような陽菜の顔が目の前に映し出される。
「ナオの考えてることくらい簡単に見破れるってーの」
「・・・」
マジかよ・・・これが見破られるのかよ・・・
「・・・俺が使わしたミニスラちゃんはどうした?」
「あの子なら・・・風呂に沈めたわ」
なんかすっごいエロい意味に聞こえるが、恐らく物理的に風呂(お湯の中)に沈められているのだろう。
機械女神は水中だろうがマグマの中だろうが宇宙空間だろうが問題はないと聞いているからミニスラちゃんも大した問題ではないだろう。
「で~ナオさんナオさん。セクハラをしたらそれに対するどんな罰も受け入れる主義だって言ってるナオにはどんな罰がいいかな~?」
「それはセクハラが成功した場合であって、失敗した場合は罰を受け入れん!」
「ダ~メ。未遂でも罪は罪よ。さぁ、何をしてもらおうかな~」
・・・ほう、いいだろう。
はははは!諦めようと思っていたが、どっちのしろ罰を受け入れなければならないのなら作戦は続行だ。
この脱衣所のドアの鍵は少し特殊なんだ・・・
俺と親父はこういった場合に備えて、この脱衣所のドアを室外用のドアの鍵に変更している。
もちろんその鍵があればあっという間に開けることはできるのだが、相手の警戒心をなくすためにこのドアの鍵は存在しないしスラもそれは知っている。
だから内側から鍵をかけたら通常の方法で鍵を開ける手段はないのだが・・・
「よろしい、ならばセクハラだ!」
俺はポケットからピッキングツールを取り出し素早く解錠作業に移る。
これは夜な夜な俺と親父が日々の鍛錬を積みかせねたスキルだ!
カチッ
解錠作業から5秒・・・ピッキングは成功。
ふぅ、エロに目覚めし俺ならば3秒で開けられるが今回は賢者モードのせいで時間がかかってしまった。
では、楽園を見学しようではないか。
ガチャ・・・
「えっ!?・・・えええええ!?」
ドアを開けるとバスタオルで隠そうとする陽菜の姿が見えた。
スラは既にバスタオルを巻いて隠している。
ほうほう、顔だけではなく体も中々・・・イカンイカン。
今日の目的はそれじゃないだろう俺!
「スラ~着替え置いておくぞ」
「うにゅ」
俺は堂々と脱衣所を歩き着替えを置き、そのまま脱衣所を出る。
「あっ・・・その・・・」
陽菜は顔を真っ赤にしながらプルプルと震え言葉にならない言葉を発していた。
ふふっ・・・ミニスラちゃんは油断させるための囮だったんだよ。
そして俺は脱衣所のドアを閉める直前にクールな顔で陽菜に言う。
「まだまだお子様だな、陽菜ちゃん」