62話
「・・・」
いつも怖い時やピンチの時はプルプルと震えるスラだが、何もせず呆然とするのはとても珍しい。
てか、スラのことは普通にスラがいた故郷の機械女神に捕捉されてたし。
「裁判・・・」
スラはぼそっとつぶやく。
横で陽菜とミニスラちゃんは人生ゲームを再開していた。
おいおい、ミニスラちゃんは楽しそうに人生ゲームをやってるがいいのか!?
お前達の本体のスラが大ピンチっぽいぞ!?
「な・・・なお君!ボクの証人アンド弁護士になってください!」
「あん?証人はともかく弁護士なんてできないぞ」
「大丈夫です!ボクの故郷では弁護士免許は必要ありません!」
こえ~よ、そっちの社会システム。
しかも、俺はそっちの法律とか何も知らないんだが。
「一体・・・そっちの裁判はどんなシステムなんだ」
「大体日本と同じです!弁護士や裁判官などはその都度やりたい人がやってます!弁護士は人気ジョブなので取り合いになりますが、被告が指名もできるので大丈夫です!」
小学校で掃除をする時に、ちりとりの取り合いになるみたいに言われても・・・
てか、日本はその都度やりたい人がやってるわけじゃないからな!?
仕事だから!
「ボクを助けると思ってどうか!・・・もし、有罪になったら」
「有罪になったら・・・?」
いい加減な所でも裁判は裁判だ。
スラやメールの感じだと戦闘モードを使うのは結構重い罪なのだろう。
元々、アレを招いたのは俺が原因みたいなもんだからな・・・めんどくさがって協力しなかったら取り返すのつかないことになってしまいそうだ。
「もし有罪になったらスラちゃん怒られちゃいます!」
「・・・は?」
「しかも重罪です!1時間くらい怒られた後、反省文も書かないといけないかもしれません!」
一気に協力する気がなくなってしまった。
1時間くらい怒られる重罪って何だよ!
しかも重罪で反省文って・・・そこは無罪だろうが書かせとけよ反省文。
・・・待てよ。
俺に気を使ってそう言ってるだけの可能性がある。
そこは確かめておくか。
「こっちと同じような感じで裁判するんだろ?だったら懲役とか・・・死刑とかもあるのか?」
「懲役はありますよ~花に水遣り当番1週間とか。死刑は聞いたことないです!」
「・・・じゃあ、ぱっと故郷に帰ってちゃっちゃと罪償ってこいよ」
心配して損した。
そうだよな、もし本当にやばかったら向こうからスラを逮捕でも捕獲でもして拘束するもんだろう。
さて、俺は人生ゲームやってる陽菜とミニスラちゃんの観察でもするかぁ。
「なお君!助けてください!また前科がついちゃいます!」
「また・・・?」
「今で確か2999回!後1回やってしまうと記念すべき3000回になってしまいます!」
「3000回になったらどうなるんだ?」
「うにゅ?特に何もないよ。もしかしたらお祝いされるかもしれません」
うんうん、スラは何千年も生きてるんだから前科の1回や2回あるかもしれないね~
何だよ、2999回って!数年に一回有罪判決もらうスラってどんな大罪人だよ!?
「依頼料です、どうかこれで・・・」
俺のゴールデンウィークをこんなくだらないことで消費させるのはナンセンスだ。
「俺は賄賂や買収には屈しない男なんだ。悪いが今回は諦めて一人で行ってくれ」
そう言うと同時にスラはこそっと何かを俺の手に握らせた。。
白と緑のストライブが入っている布のような物・・・これは!
「誰の物だ?」
「ふふ~ん、超非常時の為にとっておいたものです。Sレア級、陽菜ちゃんです」
「そうか・・・だが、悪いがこれを受け取ったら陽菜が悲しむから受け取れない・・・スーハースーハー!!」
おお~たまらん!たまらんの~!!
俺は今幸せを感じている!
「ナオ、何してるの?」
「花粉症だ、鼻をかんでる」
これはとんでもない国宝を受け取ってしまった。
これの為にだったら命すら惜しくはない。
「ゴールデンウィークの終わるまでには片付くことはできるんだろうな?」
「なお君が協力してくれたら!」
「いいだろう、スラの為に協力してやろう」




