61話
「それでは早速故郷にメールを送ってみましょう!」
「ちょい待ち」
「うにゅ?」
「確か機械女神が地球人と干渉してはいけないと言うルールだったのに、スラはこっそり故郷から脱走して地球に着たと聞いたんだが。スラさん、その設定忘れてる?忘れてる?」
一体何のためにメールを送るのかは知らないが、逃亡生活してる身分のくせに相手に居場所を知らせる手がかりを与えたら駄目だろう。
「忘れてません!後設定でもありません!」
「じゃあメールなんて送っても大丈夫なんか?」
「それに関してですが、よくよく考えたら本気で捕まえる気があったら装備差であっという間に補足されて捕獲されてしまいます。ですが、ボクが地球に着て5年間全くその気配がありません。つまり許されたのです!」
相変わらず機械女神の社会はいい加減だなぁ。
確か万が一捕まっても、花に水やり当番が増える罰則くらいで済むとスラから聞いた気がする。
スラはカタカタとタイピングを始める。
「え~っと、スラちゃんです!元気にしてますか!ボクはとっても元気です!」
小学生並の感想みたいなメールを打つ。
ここで疑問に思うことがあった。
「スラの名前は俺が名付けたんだからスラじゃ通じないんじゃないのか。てか元は何て名前なんだ?」
そういえば聞いてなかったな。
スラ自身、スラと言う名前が気に入っていないというわけではなさそうだが、もし本名の方で呼んで欲しいのならこれからはそっちで呼んでやろう。
元々スラと言う名前もとりあえず見た目がスライムだったから適当につけた名前だしな。
「スラちゃんはスラちゃんです!」
どうやら答える気はないようだった。
まぁ、本人がそれでいいんだったらいいけどさ。
「添付ファイルに氏名変更届を添付してあるので大丈夫でしょう!」
スラは本文の続きを書く。
「地球の生活はとっても楽しいです!そして、ボクはなお君と契約してペットになりました!返信待ってます! えいっ!」
送信ボタンを押してメールが送信する。
一体どんな返信が来るのだろうか・・・この様子だと、お便りありがとう!私達も元気です!みたいな返事が返ってきそうだな。
「じゃあさ、返信くるまで人生ゲームしようよ!人生ゲーム!」
陽菜は俺の収納スペースから勝手にがさごそと人生ゲームを引っ張り出してきた。
最近の陽菜のお気に入りの人生ゲーム。
家に来るたびに誘ってくるのだが俺的には人生ゲームよりツイスターゲームやりたいんだよなぁ・・・セクハラ的に考えて。
「たまにはツイスターゲームしねぇ?」
「じー」
ジト目で見てきた陽菜はどうやらツイスターゲームをするとセクハラされると分かっている様子だった。
長い付き合いの分、よく策を練らないと簡単に見破られてしまう。
「ええやん、ツイスターゲームは男の夢なんや」
「じー」
「へいへい、人生ゲームやりますよ人生ゲーム」
「やった!」
陽菜はリアル人生ゲーム勝ち組なんだからゲームなんて必要ないだろう。
人生ゲームは負け組みの俺みたいな奴が現実逃避のために一人で遊ぶゲームなんだよ。
まぁ、一人で遊ぼうとするとスラもやりたそうにするからいつも1人と1匹でやってるが。
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
ミニスラちゃんが目の前で力強く跳ねてアピールしている。
「なんだ、ミニスラちゃん達もやりたいのか?」
「" (゜∀゜) "」
ミニスラちゃん5体を1プレイヤーとして参加させゲームを始める準備ができる。
「じゃあ、ルーレット回すわよ!」
「次はボクです!」
スラと陽菜は人生ゲームをする時はいつもとてもテンションが高くなる。
一体なぜなんだろうか。
ギョエー!!
陽菜がルーレットを回そうとした瞬間に部屋の隅に置いてあったガラクタから例の悲鳴が聞こえる。
「あ、返信来ました」
「・・・あの、これからはマナーモードにしといてくれます?あれ聞くと凄く不安になるので」
「うにゅ~」
スラはカタカタとパソコンを操作してメールを確認する。
「何て書いてたんだ?」
「読みます・・・スラへ。元気そうでなによりです。ところで、先日スラが地球で戦闘モードになるのを観測しました。何考えてるのですか?馬鹿なのですか?馬鹿な子でしたよね!この事に関してこっちで裁判をすることになりましたので至急戻ってきてください」
「・・・」
スラは読み終えると呆然と画面を見続けてぶつぶつと読み直した。




