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58話


 「そうですか・・・いよいよなお君の誤解を解かなければいけない時がきましたか!」


 亀甲縛りから開放されたスラはラーメン店掲げられた店長の写真のようなポーズをとる。

 つまり腕を組んでドヤ顔。


 「えらく自信満々じゃないか」

 「ふふ~ん」


 およそ5年前、弱っていた謎の生き物を献身的な看病で助け(公園の水道水に浸して塩を振っただけだが)勝手に家にころがりこんで居候し始めた奴(別にスラの生活費は俺が出している訳じゃないが)が俺のご主人様だと?


 「聞かせてもらおう、スラの主張を!」

 「では・・・こほん。日本では年齢で上下関係が決まる文化があります!」


 あっ・・・(察し)

 こいつに筋が通った主張を持っていないことが早速分かってしまった・・・


 「ボクは何千年も生きているいるのです!それに比べなお君はたった十数年ぽっちしか生きてない。どちらが主なのかはこれ以上言わなくても明白・・・!」

 「ほほ~う。じゃあスラは今まで俺に主らしい何かをしてくれたのか?」

 「・・・え~っと・・・そう!なお君のご飯はボクがよく作ってます!」

 「元々スラが料理を始めたのは俺が与えていたドックフードが嫌だったからだろう?つまり料理とはスラ自身の自衛手段でしかない」

 「・・・初めはそうかもしれませんが・・・今はみんなの為に作ってます!それに料理以外の家事もやってます!」

 「それは昔、スラを捨てたかった俺に対しての自衛手段として母さんの家事を手伝うことで母さんを味方につけておくといった打算的な行動にすぎない。つまり、スラの行動は俺をペットとして世話をする行動ではなくただ、自分が家を追い出されないようにやった行動でしかないのだ!」

 

 ふふっ・・・スラよ、屁理屈で俺に勝てると思うなよ?

 このまま俺のペースで言い包めてやる。


 「でも、まだボクにはすっごい言い分があります!」

 「ほぅ・・・」


 どうやら本命はこっちのようだ。


 「なお君とボクが一緒に出かけるときよくお母様が言っています。"スラちゃん、なお君のことをよろしくね~"これはつまり、ボクが飼い主としてなお君の面倒をしっかり見て欲しいっという意味なんです!」

 「なっ・・・なんだってー!!」


 確かに母さんはよくそんなことを言っているいたけどもまさかそんな意味があったとは・・・

 ・・・そんな訳ねーじゃん。


 「母さんが自分の息子を得たいの知れないスライムのペットにするかよ」

 「得たいの知れないスライムではありません!スラちゃんです!」


 スラはドヤ顔であざといポーズをとったが、少し焦りの表情が見えた。

 

 「で・・・結局なんで俺をペットとして扱いたいんだ?」

 「それは~・・・ボクはずっと機械女神の中で一番子供だから・・・面倒を見るような立場になりたいのです」

 「・・・」


 1ヶ月前、スラが美少女化した時、俺に対してえらくお姉さんぶったような接し方をしていたような気がする。

 ペットというより弟みたいなもんが欲しかったのか・・・

 まぁ・・・俺がスラのペットだと認めた所で多分これからの生活に変化がある訳ではないだろう。

 だったら変なプライドは捨て・・・る訳ねぇじゃん!

 

 何で俺が愛玩動物の愛玩動物にならなきゃいけねーんだよ。


 「拒否、絶対拒否」

 「何でですか!」

 「プライドを捨てることができなかった」 

 「む~・・・」


 さて、どうやって俺が飼い主だと分からせてやろうか。

 とりあえず、また亀甲縛りで吊るして蝋燭の蝋でもたらしてみるか。

 俺が解いた縄を持ち再びスラを縛ろうとした時、スラは何か意を決したような顔をした。


 「分かりました!ならボクがペットでいいです!」

 「ほう・・・随分と諦めが早いな・・・何の魂胆だ?」

 「その代わり正式に機械女神に伝わる方法で主従契約をしてもらいます!」 


 女神と契約って奴か・・・まぁ、今までの経験からするとまたくだらない事だろう。


 「契約の際、騙して俺をペット扱いにするっとかないよな?」

 「それをすると経験上、ボクの餌がしばらく冷凍ねずみになってしまうからやりません!」


 よく分かってるじゃん。


 「で、契約って何するんだ?キスでもすればいいのか?」

 「おや、知っているのですか!」


 ・・・え


 「何そのエロゲーみたいな契約」  

 「本当にエロゲーみたいな契約の仕方もできますよ!脱ぎますか!」

 

 ま・・・まじすか。


 「ボク・・・当然ですが今まで契約したことはないので・・・新品です」

 

 俺、ペットで初めてを済ませてしまっていいのか?

 それはいくらなんでも恥ずかしくないか。

 

 ・・・


 ここで、漫画やアニメの主人公ならばしばらく葛藤したのち理性が働いてやめてしまうだろう。

 だが、俺が違う・・・くれるものなら何でも受け取るぜ!!

 

 「いやっほーう!!」

 「おい、ナオ・・・私ずっといるんだけど?」


 俺はズボンを脱いでパンツに手をかけようとした所で謎の声が近くからした。

 

 「・・・陽菜さん、いつからいたのです?」

 「ふつ~に、ずっといたんだけど?」

 

 部屋を見渡すと陽菜以外にも山坂や遠藤も佇んでいた。

 

 「いつ部屋に入ってきたんだよ、いつから見てたんだよ」

 「最初からいたでしょうが!」


 おかしいおかしい・・・俺とスラしか喋ってねぇじゃん。

 何かを察してか山坂と遠藤は部屋を出ようとした。


 「じゃあ僕達は部屋から出るよ・・・消灯時間頃に返ってくるからそれまではご自由に」

 「待て待て待て!私だけじゃナオとスラの暴走を止められないって!」

 

 陽菜は山坂と遠藤の腕を掴み退出を阻止した。

 

 「スラぁ~・・・!?」


 陽菜はピキピキとさせながらスラを見た。


 「うにゅ~・・・じゃあ今回はこれでいいです」

 

 チュッ


 おれはほっぺに柔らかい感触を感じた。

 

 「ふふ~ん・・・初めてだったけどほっぺにチューも恥ずかしいもんですね!」


 ・・・  


 そうか、スラにとっては初めてなのか。

 朝、目覚めるといつもスラに舐められたりほっぺにチューされていんだが・・・あれ、わざとやってるんじゃなくて寝相が悪いだけか・・・


 「あっー!!スラ!!」

 

 陽菜はスラを羽交い絞めにしてお仕置きを開始する。

 そんな姿を俺と山坂と山坂は笑いながら見る。


 「みんなも晩御飯まだ食べてないだろう?何か食べに行こうか」

 

 遠藤は皆に夕食を食べに行かないと誘う。


 「・・・僕も行っていいか?」

 

 山坂は遠藤に対して返事をする。


 「もちろんさ。夏野も行くだろ?」


 ・・・


 「ああ!」

 

 やっぱなんていうか・・・友達っていいものだな・・・



これにて第1章スラちゃん編終わりです!


今までありがとうございました!

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