55話
「俺たちは3組だ。なぁ、お前らはどうやって5組は高得点をとったんだ?教えてくれよ」
俺は3組と名乗る連中に取り囲まれていた。
5組だけ以上に良い点を取れてしまった場合、他のクラスからアドバイスを求めてやってくるとは思っていたが予想以上に苛立っている様子だった。
これは下手な答え方をすると大きなトラブルになってしまう可能性もあるな。
「・・・先生達のいない場所に変えよう」
「ああん!?ここでいいだろ!?」
「ここは先生全員集まっている。先生がいないところの方がいいんじゃないのか?」
「僕もいくよ」
「いや・・・山坂はいい。あまり大人数で行ったら先生もついてきてしまうからいいよ」
「でも・・・!」
「大丈夫さ、別に喧嘩するわけじゃない」
俺は席を立ち3組の数人と共に食堂を出る。
先生達がつけて来てる気配はなかったので一安心する。
この3組の連中は入学して数日で何か暴力問題を起こして噂になった奴らだ。
どうやら親がなかなかの金持ちで余裕で退学になる事件だったが金を使ってもみ消したとかなんとか。
そう考えると最悪のケースになっても身の潔白が証明できるようホテルスタッフと防犯カメラが設置されているホテルのロビーで話し合いをしたい。
最悪のケース・・・暴力が起きたら人目の多く先生がいる食堂の方がはるかに安全だが、そんなトラブルになったら後味が悪くなるもんな。
「ここら辺でいいだろう」
ここは、恐らく一通りも少ない場所であり脅迫するなら絶好の場所だろう。
「すまない・・・今日はかなり運動して疲れているんだ。イスがある場所で話し合おう」
ロビーについたらプールでやったゲームのことは喋らないようにして3組が残り2時間ちょっとでプラス点になる方法を話し合って納得してもらうようにしよう。
大丈夫だ、鈴木高校の学生はみんな良い奴なんだ!きっと話し合いでー・・・
ゴンッ!
俺は突然目の前が真っ白になり直後、後頭部から凄まじい鈍痛がした。
何があった・・・いや、何をされた・・・?
俺はすぐに振り向くと目の前には勢いつけられた拳があった。
ドンッ!
俺は更に顔面を殴られ後ろの壁まで後退する。
まさか、話し合いをする前からこうされるとは思わなかった。
これは失敗したな・・・どうやら俺はゆとり脳だったようだ。
「痛いか?ガリ勉野郎」
「3組を助けるために随分捨て身な事するじゃねぇーか。優しい奴だなオイ」
ドンッ!
「かはっ・・・!」
腹に手加減なしのパンチをもらう。
ああ・・・赤神先生の体罰は相手を思いやる優しい体罰だったんだな。
人生でここまで殴られた事は・・・2度目だな。
「さっさと教えろガリ勉野郎。先公でも脅したか?だったらその弱みを俺に教えろ」
「知らねぇよ。先公脅すとか昭和のヤンキーかよ」
ドンッ!
更に腹パンされる。
「おいおい・・・俺は除夜の鐘じゃねーぞ」
「ははは!ガリ勉野郎のくせに強がるじゃん?」
ドンッ!
普通こうやって暴力を振るう場合は、証拠が残らないように傷やアザは残さないって漫画で言ってたぞ。
だが、こいつらはそんな事は全くせず手加減なしで殴る。
半殺しがバレても後でパパがなんとかしてくれるってか?
だが、俺もこのピンチを抜け出すためになんとかしないとな。
相手は男3人、女2人。
子供の時は逃げ足を生かして逃げる!っとか言ってたっけ?
だが・・・今の俺はそんな弱っちくないぞ?
目の前の男1人を不意打ちすれば実質相手は2人だから十分なんとかなる。
やってしまったら後はすごくめんどくさいことになるが・・・殴られ続けるよりはマシか。
「そろそろ喋る気になったかぁ?それとも・・・本当に痛い目に合わないと分からないか?」
目の前の男がポケットから取り出したのはナイフだった。
そこまで刃渡りが長いものではないが刺さる場所が悪ければ十分人を殺せるレベルだ。
こいつが持ってるってことは、後ろの二人も持ってる可能性が高い・・・が、このままだと本当に俺の生命に関わるのでもう他に手がない。
殺される前にころ
「夏野!」
「おいおい、大丈夫か!」
俺が反撃をするその瞬間、目の前に現れたのは山坂と遠藤だった。