54話
午後7時30分、夕食の為に食堂に行くと既に俺達5組以外が集まっていた。
今回の夕食は大きなテーブルに5人が座り食事を取る形式だったのだが俺以外の残り4人はどうしたものか。
理想は俺、スラ、陽菜。山坂、斉藤の5人だが、スラは行方不明、陽菜と斉藤は既に女子会が形成されてしまっていたので俺と山坂しかメンバーが決まっていない。
そこで仕方なく山坂にとある提案をしてみる。
「折角の機会だ。テーブルなんて原始的な物を使わず、最高級ホテルのトイレで食う高尚な便所飯を体験しに行こうではないか?」
「ああ・・・分かった」
いいの!?本当にいいの!?俺は嫌だよ!!
「冗談だよ、あそこに2人分空いてるテーブルに座ろう・・・な?」
「別に僕は夏野と食べるならどこだって構わない」
いやぁ~、友達ってこんなに強い絆で結ばれているものだったんだな。
知らなかったぜ。
空いているテーブルに座ると遠藤とその友達2人が既に座っていた。
「すいません・・・席間違えました」
「席はどこに座ってもいいのだが、夏野と山坂はどこか行く当てがあるのか?」
「ないです・・・お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「ああ」
立ち去ろうと移動した所、遠藤に声を掛けられそのまま流れで座ってしまう。
「・・・」
「・・・」
何この気まずい雰囲気。
5組の1位はほぼ確実、つまり残りの合宿は賞金もらえて遊び放題できるのだからもっとウェーイ!ってな感じで盛り上がろうよ!
ああ・・・他のテーブル席はさぞかし盛り上がってるんだろうなと周りを見渡すと俺達のテーブル以外の5組も同じような雰囲気だった。
「なんでこんなお通夜なの?5組がやったゲームの責任とって一瀬先生クビになったの?」
「一瀬先生は知らんが・・・これじゃあ楽しく騒ぐ訳にはいかんだろ。5組以外のテーブルも見てみろ」
遠藤にそう言われ他のクラスの様子を見てみると・・・絶望した様子だった。
今5組以外はマイナス点のためこのまま行くとゴールデンウィークまで続く地獄の講習会になってしまう。
なのでお通夜と言うよりも、オンラインゲームでPTプレイをしてたけどクエスト失敗して超ギスギスになってしまった後みたいな感じだった。
確かに、5組だけウェーイ!とやってしまったら恨みが全部こっちに飛んできそうな為、5組も騒ぐに騒げない状況だ。
「やっぱ俺、便所で飯食ってくるは」
「ダメに決まってんだろ」
遠藤に引きとめられてしまった。
もぐもぐもぐ
飯は上手い。
だが、気まずい。
全体の空気が暗いのも原因だが、少なくとも数時間前まで俺を嫌っていた人物と同じ席で飯を食うと言うのは本当に気まずい。
果たして、あのゲームで遠藤たちは俺に対する印象が変化してくれたのだろうか?
もう、俺は遠藤たちを仲間だと思っていいんだよな?スラに接するようないつものノリで遠藤たちに接触していいんだよな?
「あの・・・さ」
「何だ?」
「俺はこのゲームが始まるまではスク水は絶対に破かない脱がさない派だったんだ。だが、女の子のスク水が水鉄砲によりじわりじわり破けてゆく姿を見て、スク水を破くのもアリだなっと思ったんだ。つまり、このゲームが成功して本当に良かったと思っている」
「それは違います!なお君は女の子の肌が見えることに喜びを感じていただけであってスク水が破ける所シチュエーションが良かったと思ってはいません。なのでなお君は未だに破かない脱がさない派なのだ!」
スラが釣れてしまった。
「へへ、悪いなスラ!ここ5人テーブル用なんだよ!」
「・・・しゅん」
リリース。
俺はもう女子の敵になってしまったのだ。
そんな俺にスラが接触しすぎるとスラまで敵として認識されかねない。
しかも今回のゲームはスラだけ唯一無傷な為、スラは男子達を手引きしたスパイだと思ってる女子もいるかもしれない。
そのため、スラは俺のいる所よりも陽菜の庇護下にあるテーブル席に移動して欲しい。
「陽菜ちゃんの所に行きます・・・」
しょんぼりしたスラをそのまま見送る。
しかし、こうやって落ち着いて考えてみるとスラのスク水は中々良かったなぁ・・・。
家に帰ったらスク水着せて撮影会でもしようか。
「なぁ、お前が夏野だろ?」
「ん?」
スラを変態の目で見送っていると、見た目からして明らかに気の強そうな知らない男子や女子数人が俺の所に集まっていた。




