53話
「お前ら、祝賀ムードの最中で悪いが少しいいか?」
胴上げを終わると赤神先生が皆に喋りかけた。
「そうか、赤神ちゃんも胴上げされたかったんだろ?ほれ、たかーい!たかーい!」
俺は赤神先生を持ち上げて、たかいたかいをすると・・・いつものジト目で無言の圧力がかかったのでそのまま下ろす。
下ろした赤神先生は何事もなかったように話を続ける。
「そのな、今回の採点においてお前達が具体的にプールで何したのかは・・・学年主任に言ってないんだ。てか、言えるはずない」
「・・・ですよねー」
男女に分かれて脱衣ゲームしてました!なんて報告したら赤神先生の首飛んじゃうじゃないんだろうか。
「まぁ、他の先生達には一瀬と協力して何とかしておく。だ、か、ら・・・絶対にこの事を他言するなよ?プールで楽しく遊んでいたとだけ言っておけ」
「うん・・・こんなこと広まったら私達もやばいよね?」
「ああ・・・停学どころか、下手したら退学。私も依願退職だな」
俺は赤神先生の注意勧告を聞きがっくりとうな垂れてしまう。
「そんな・・・嘘だろ・・・俺は・・・」
俺の行動がここまで大変なことになってしまうとは・・・
「まぁ・・・夏野。確かにお前のやった事は問題の方が多いが合宿のテーマには沿っていた。だから高得点にしてやったんだ・・・あまり自分を責めるな」
「そんな・・・赤神先生!他のクラスにこの事を言えなかったら全クラスで脱衣ゲームできないじゃないですか!」
「・・・は?」
赤神先生含めクラス一同が何こいつ急に訳の分からないこと言ってるんだ、みたいな顔をしている。
「アナウンスを途中聞いてなかったのですが他クラスは結果はどうなのですか!」
「まぁ・・・差はあるとは言え、5組以外はマイナス点だな」
「マイナス点の時点で順位関係なく5位と同じ扱いになってしまう!だったら・・・だったら・・・全クラスで同じゲームをもう一度やれば全クラスをプラス点に引っ張ることができる!上手く計画通りになれば楽園を2度築ける予定だったのに!うぅ・・・!」
「夏野はアホだな」
珍しくにっこりした笑顔を見せる赤神先生。
「全クラスでやったら他の先生も採点するだろーが。てめぇ、今自分の立場分かってるのか?ああーん!?」
「でも!でも!既に全員分のおもちゃの水鉄砲は用意してます!な・・・なぁ、男子達よ!楽園をもう一度見たいよな!?」
「おおおおおおおおお見たいぜええええええええ!!!!」
山坂が勢い良く雄たけびを上げる。
数時間前のクールな山坂はどこにいったんだよ・・・本当に。
「お前らが見たかろうが退学になりたくなかったらこれ以上変な気起こすなよ・・・。水鉄砲作ったのは"どっち"だ?」
「ボクです・・・」
「夏野が変なことをする前に完全に破棄しとけよ・・・それとも、退学になって故郷に帰るか?」
「ナオ君・・・」
「スラ・・・俺の願いを・・・希望を・・・途絶えさせないでくれ・・・!」
スラはしばらくプルプルと震えながら決心した様子で涙目ながらに答えた。
「ボクは・・・。ボクは、"ナオ君の主"です!ペットを悲しませるような事はしません!!」
「・・・ほう」
「・・・スラちゃんいじめ・・・よくない」
「いじめじゃない、教育だ」
赤神先生はずるずるとスラを引っ張ってどこかに連れて行った。
・・・
えっ?・・・ナオ君の主・・・?