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4話 スラを飼い始めて3年も経ちやがった!

 3年後――


 そのうち勝手に出ていくだろうと思っていたスラは夏野家に居候を続けて3年が経った。

 もしかしてこのまま寿命が尽き果てるまでいるつもりなんだろうか?

 スラが後何年くらい生きるのかも分からないが。


 そんなことを考えながらテーブルの上に用意されている"スラが作った朝食を食べる"

 メニューはご飯、味噌汁、焼き魚、漬物とシンプルなものでちゃんと俺も食えるものだ。

 そして目の前ではスラが俺と同じメニューををもぐもぐと食べている。


 スラを飼い始めて数日経ったある日。

 スラは超能力、所謂サイコキネシスみたいな感じで物を動かしたり浮かしたりすることをやってのけた。

 

 その不思議な力をどんどん応用していき、今では箸を浮かして焼き魚の切り身をつまみ、自分の口(体内)にひょいと慣れた手つきで入れている。

 手がないのに慣れた手つきというのもおかしな話だが……。

 てか物を浮かせれるんだったら箸使う必要ないじゃん。そのまま食べ物を浮かして食えば良いじゃん。二度手間じゃねーか。


 飼い始めた時は犬畜生程度の知能だと思っていたのだが、どうやら予想を遥かに超えた生き物だった。

 スラはこの3年間で料理だけではなく洗濯や掃除など一通りの家事をできるようになって成長していた。

 しかも中々手際が良く、今では家事の半分以上をこなし母さんが親父の仕事の手伝いでいない時もこうやって俺の分の朝食を用意してくれる。


 飼いたくない生き物を何故3年間飼うことになってしまったのか?

 それは、スラが夏野家にとって役に立っている存在になってしまったせいで下手に追い出すこともできなくなったのだ。

 しかもこいつ、それを理解してるっぽいからたちが悪い。

 今では家族の一員のように住み着いてやがる。


 それだけではない。

更にスラは喋ることはできないが人の言葉を学習してちゃんと理解しているようだ。

 スラに質問したり聞いたりすると基本はぴょんぴょんと跳ねてまるでFPSプレイヤーのような返事を返してくる。

 しかも跳ねたりボディーランゲージでは足りない時は鉛筆を浮かして文字を書いて簡単な筆談までこなすことができるようになっていた。


 「"きょうのみそしる(≧∀≦)"」

 

 「ん?味噌汁がどうした?」

 

 「"ダシがスラちゃん!"」


 ……なんてもの飲ますんだこの無脊椎動物が!

 スラからこんなかつおだしがとれる美味しい味噌汁が作れるんだったらなら定食屋にダシとして売っぱらうぞオラァ!

 

 無脊椎動物を無言で睨む。返答次第では出荷だ。


 そんな俺をスラは察したのか、ぷるぷると震えだしながら素早く紙に文字を書いた。


 「"とっとりせいこ! (llllll゜Д゜)"」


 動揺しながら急いで書いたせいでまともな日本語になってないが「ドッキリ成功!」と書きたかったんだろう。お前の方がドッキリしてるじゃねーか。


 こんな感じで筆談を使ってコミュニケーションはとることはできるんだが、スラ自身ことに関してはロクな返事が返ってこない。

 一体どこから来たのか、何者なのか、何が目的なんだ等の質問はこれまでに何度もしているが答える気はないらしい。


 その度に保健所に持って行くぞと脅してみるも、ぷるぷる震えながら、はぐらかされた答えが少し返ってくるくらいだった。

 これまで返事をまとめると、『遠い所から来た。悪いスライムじゃないよ?』

くらいだ。

 まるでこいつの正体が分からない。


 「"なおくん、がっこうたのしい?(゜∀゜)"」


 「まぁまぁだな」


 「"こまったことがあったらスラちゃんにそうだん!( ̄ー ̄)"」


 スラは体を少し膨らませてアピールする。自信満々のようだ。


 「おいおい、ペットに助けてもらわないといけないほど俺は落ちぶれてないぞ?じゃあ、学校行ってくる」


 朝食を食べ終えた俺は玄関へ向かう。


 ぴょーん!ぴょーん!


 そしてスラもいつものようにわざわざ玄関まで付いてきて俺を見送る。

付いてこなくても良いって言ってるのに付いてくるんだよなぁ。


 「"いてらー"」


 「ああ」


 スラは体をふりふりさせながら俺を見送る。

 そんなスラの姿を見て俺は微笑みながら玄関を出る。


 ……


 …………


 ……あれ?


 俺、スラに攻略されてね!?いかん、いかん。何が微笑みながら玄関を出るだよ!

 別にスラなんていなくても寂しくないんだからねっ!?

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