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43話 陽菜視点です!

 ――陽菜視点――


 はぁ、ナオに頼まず私が説明しときゃよかった。

 目立たずひっそりと生きたいと言ってるナオの気持ちが少し分かった気がした。

 

 「さっちゃん、後は大丈夫?」


 「う……うん、がんばるよ」


  さっちゃん(斉藤のあだ名)は深く深呼吸をした後、説明を続けた。


 「え~と……その5組の良い所は夏野君が説明した通り。で、2組の方なんだけど……その、悪いように言ってしまうかもしれないけど、2組の勉強会は普段から仲が良いグループに固まっていて勉強してたんだよ。こっそり見たら勉強してる内容もバラバラだった。」


 遠藤君が割って入る。


 「だから、5組の方が点数が良いはずなのに山坂が参加しないせいで6点差で負けてしまったって言いたいのですよね?」


 「ううん、そうじゃないよ。2組の勉強会でもう1つ気になる所があったの。仲が良いグループで勉強をしているせいでどうしてもその輪に入れない人も何人かいたの」


 「夏野みたいなボッチの奴が何人かいたってことか?」

 

 遠藤君はナオのことが嫌いなことは知っているけど、でもその言い方は流石に許せない。

 

 「えんー……」


 「遠藤君!」


 私が遠藤君に注意をしようとするとスラの声に消されてしまった。

 飼い主を馬鹿にされて怒っちゃったかな?

 うーん、どうしよ?

 スラを静かにさせた方が良いのかもしれないけど……ちょっと様子を見てみようかな。


 「なっ……何でしょう?」


 「ボクはぼっちじゃないよ!スラちゃんには友達たくさんいます!」


 「えっ……その、すいません」


 ふ~ん、話を逸らす方で行くんだ。

 でもちょっとは怒っても良かったんじゃない?

 ……あっ、そうか。ゲーム中だから雰囲気を良くすることを優先したのね。

 やるじゃん!

 ……いや、スラだから本当に何も分かってないかもしれないけど。


 「え~っと、続けてもいいかな?つまりね、2組のグループ輪から完全に外れて端っこで勉強をしている人って、先生達から見たらどう見えるのかなー?って疑問に思ったんだよ。確かに同じ空間にいるかもしれないけど、それってただ同じ場所にいるだけで、本質的には山坂君と大した違いはないんじゃないかなって思ったの」


 いえ~い、私もさっちゃんに乗っちゃえ!

 私はさっちゃんの味方をしているんだアピールしちゃうぞ!

 

 「つまり、山坂君が不参加での減点分は2組のボッチ数人分と大体同じかちょっと多いくらいじゃないかとさっちゃんは考えたの。山坂君は学年2位で影響力が高いせいで、数人分のぼっち力を持っているってことね。でも逆に言うと山坂君も数人程度の減点分しかないってこと。だからどっちにしてもマイナス点は回避できなかったのよ」


 「それでは納得できません。山坂君不参加=2組のボッチ数人分なんてのは仮定であって証明できていません。例えば、僕達は陽菜さんの努力によって2組より何倍も良い加点を取っていて、山坂の不参加で何倍も減らされてるかもしれないじゃないですか。大げさに言うと、もし山坂が勉強会に参加していたら100点だったけど、不参加だったから152点の減点になって最終的にマイナス52点になったって可能性がだってあります」


 さっちゃんが説明を続ける。


 「うーん、肝心な所が夏野君の受け売りになっちゃうんだけど……夏野君って授業中とか天井見上げて口を開けながらブツブツ独り言を言うときがあるよね……?」

 

 一同、あぁーって言いながらナオの奇行を思い浮かべる。

 やっぱり、あれはなんとかしないとね。


 「今日の勉強会の時もぼけ~っとしてる時があったの。遠藤君が山田君に問題を教えてる時かな?私、夏野君に問題を教えて貰いに行ったの。そしたら、夏野君がブツブツ独り言を言ってたの。『勉強会なんて小学生でもできることやったって意味なくね~?まぁ、いいか~どうせ全クラスマイナス点に調整するんだろうし~』って」 


 「……何かぶつぶつ言ってると思ってたけどそんな事言ってたのか……。その、『全クラスマイナス点に調整する』とはどういうことですか?」


 「ごめんね、私も聞こうと思ったんだけど夏野君の生ける屍になってたから聞けなかった。けど、夏野君の言ってた通り私も誰にでも出来る勉強会をやった所で加点何てたかが知れてる程度のしかなかったんじゃないかと思う。もちろん勉強会をやる事になった事を責めてるじゃないよ?ただ、もっと視野を広く持たないといけないんじゃなかなぁって思うの」

 

 「仮定だらけで根拠なんてないんだけど……マイナス点を回避する為には、ただ集まっただけではできないことやって、そしておまけに山坂君もがんばって誘う。山坂君やナオばかり責めても点数は改善しないってこと」


 「そう……ですか。分かりました、そうですよね」


 遠藤君も納得はしてもらえたようだった。


 「さっちゃん、お疲れ!」


 「その……ごめんなさい……うだうだと言ってるだけで解決策は何も提示できなくて……」

 

 「まぁ、少し先が見通せただけでも大分、前向きになれたと思うわ」


 「そ……そうかな」


 さっちゃんは1ヶ月の付き合いだけど入学当初はもっと大人しい子でとてもシャイだった。

 それなのに、たった1ヶ月でこんなにも成長できるなんて……やっぱ人間って素敵ね。

 さて、私もがんばって皆の不安要素を一つ消してあげますか!


 「後、皆に一つ聞いて欲しいことがあるんだけど。山坂君は後、数十分くらいで必ず来てくれるから山坂君に参加を促す方法については議論しなくてもいいわ」


 「どうやって……?」


 皆、山坂君が唯一少しだけ心を開いているナオですら無理なのにどうやって連れて来るのかと疑問に思っている。


 「ニヒヒ……それは後で分かるわよ。ただ、無理やり連れて来るだけかもしれないから山坂君は嫌々参加するだけかもしれない。だから、山坂君が私達のことを仲間だと思ってなくても私達が彼を仲間に無理やり引き込む必要があるのよ。それは協力してほしい」


 「……本当になんとかなるの?」


 「ええ」


 「でも、参加してくれるだけでもすごい嬉しいよ!」


 「じゃあ、俺達は陽菜ちゃんを信じてこれから何するか話し合おうぜ!」


 「おおー!」


 さっきまでの空気から一変してこれからに向けて真剣に議論を開始した。


 赤神のいつもの仏頂面も少しだけ緩くなったと思う。

 いや、あれは喜んでいるに違いない。

 付き合い長い私には分かるもん。


 「えへへ~」


 「……どうしたのスラ?」


 「溢れ出る喜びを跳ねて発散してきていいですか!」


 いつも機嫌が良いスラが更に機嫌が良くなっている。


 「大人しくしてなさいよ。てか、『あっちの方』で何があったの?」


 「なお君が神プレイを連発してます!」 


 「そう。ナオの方も頑張ってるのね」


 ……さて、私は私に出来ることを頑張りますかー!


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