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42話 勉強会の反省会


 赤神先生がコソコソと俺に話しかける。

 

 「夏野は何故、話しに割り込まないのだ?お前だったらなんとかできるんじゃないのか?」


 俺一人で何とかできる技量があるなら既に俺の周りには友達がたくさんいる夢の生活を送れてるてーの。

 このゲームの攻略法を陽菜に教えるとあっさりゲームクリアされてしまう。

 このゲームは俺にとって友達を作り、そしてセクハラの絶好のチャンスなんだ。

 地獄の合宿は嫌だが、このチャンスを捨てたくもない。


 「おっといけない。子姑のようなうざったい小言は聞きたくないんだったよな」 


 恐らく今、赤神先生が俺に喋りかけたのは厳密に言えば先生達が決めているルールを違反している行為だろう。

 今の質問はゲームにおいて俺の行動が変わってしまう可能性がある行為だ。

 だが、それでも赤神先生はどうやら俺に聞きたかったらしい。

 

 もちろん、無視する。


 「夏野……お前は山坂と一番親しい。夏野がなんとかして山坂を僕達と参加するようにしてもらえないだろうか」


 「さっきそれを斉藤にも言われたが、無理だ。」


 「だが!このままじゃ僕たちは0点を下回ってしまう。さっきの勉強会、山坂が参加していたら僕達は1位だったかもしれないんだぞ!」


 「憶測にしてもそれは盛りすぎだろ。それとも何かそう結論付ける根拠でもあるのか?」


 「それは……だが、少なくとも今よりは点数が絶対に良かったはずだ!」

 

 感じが悪い空気がさらに悪くなっていく。

 耐えるんだ、俺。今ここでゲーム攻略法を言ったらまた女の子達から『夏野君ってすご~いっ』て言われてちやほやされて、それのせいで男子からまた嫉妬されてさらに溝が深まってしまう。

 そうなるくらいならマイナス点のままゲームが終了してくれて構わない。

 

 「あの……多分、山坂君が参加していても大して良い結果にはなかったと思う。そう思うか聞いてくれないかな?」


 「斉藤さん?」


 俺と遠藤の間に入ってきたのは斉藤だった。

 斉藤は友達の中では明るいキャラだが、こういった中で主張する人間ではないキャラだったので皆が少し驚いていた。


 「……ああ、ぜひ聞かせて欲しい」

 

 遠藤は驚きながらも返事をした。

 斉藤は緊張してるのだろう、すごく手が震えている。


 「うん……あのね、私達5組は途中まで3位の2組と同じように勉強会をしていたよね?2組は中間発表直前に昼ごはんに行ったからその後の詳細は分からないけど、普通に食事をしたと仮定するね。4位の5組と3位の2組は6点の差で負けちゃったんだけど、仮に山坂君が勉強会に一緒に参加していたとしても今の私たちの『マイナス52点』から大して変化はなかったと思うの}


 「高い?何故そう言えるんだ?」


 「え~っとね……え~っとね……」


 緊張のせいでパニックになっているようだった。

 

 「え~……とそれは、その」


 俺と陽菜はお互いに目を合わせる。

 陽菜が動かないと察するに俺に動いて欲しいようだ。

 確かに陽菜が自画自賛するくらいなら俺が説明した方がマシか。


 「はいはい、それは俺も思った」


 「夏野、今は斉藤さんが喋ってるんだ。少し黙っててくれないか?」


 無視する。


 「まず山坂抜きで考えて、勉強会において俺ら5組は間違いなく2組よりも良い点数を取っている!それは陽菜のキャバ嬢スキルが生かされたからだ!」


 「キャバ……!?」


 陽菜が驚いていたが無視する。


 「陽菜は、長机を一つにまとめて出来るだけ皆がまとまるようにした。この昼食の座席だって陽菜がそれとなく采配しているが結構まとまりある感じに座ってるだろう?ボッチがボッチにならないように工夫してるんだ」


 「……」


 「そして、座席は陽菜が何も考えずに指定したわけじゃない。上手く振り分けてさらにボッチが生まれにくいように工夫したんだ。普段をお互い会話はしない、またはお互いに会話はするがあまり多くない状態の奴らを勉強会をきっかけに友達になってもらえるようにと隣同士に座らせている。ええ~と……勉強会で俺の左に座ってた奴って誰だっけ?」


 「山田です……まだ名前、覚えてくれなかったんだね」


 「もちろん覚えていたさ、え~っと、山田君!普段俺とはほとんど話すことはないが勉強会では頻繁に話すことができたんじゃないか?」


 「ああ……勉強とかも教えて貰ったよ」


 「他のみんなもそんな心当たりはないか?」


 「俺、あるよ!俺も勉強会で佐久間とダチになったんだ」


 「いやぁ~……まさかこんなに話せる人間だとは思わなかったよ」


 「そうだよな、普段話してない奴が左右の席だったから少し焦ったけど、思いのほか気軽にできたよ」


 嘘だろ……俺が悪戦苦闘してる中、こんなにも新たに友達が出来上がっていたのかよ。

 悔しぃ。


 「そして、その良い空気が続くよう陽菜は勉強会の間ずっと、時にはフォローを入れたりして調整し続けたんだ。まさにキャバ嬢スキルだ!」

 

 「やめてよ恥ずかしい!」

 

 ぱちぱちぱちと俺が思っていた以上の大きな拍手がなった。

 ああ……俺もこんな拍手をもらえるようになって男子達と分かりあえたい。

 でもこれは恥ずかしいな。

 陽菜の顔が真っ赤だし。


 「はい、じゃあ斉藤さん交代な」

 

 「ええっ!?まだ全然説明が……」


 「頼むよ~俺トイレに行くの我慢してるんだよ~」


 そう言いながら俺は一旦、この話し合いの場から離脱した。

 

 違うんだよなー。

 2組と5組の点数差の6点を究明した所でこのゲームの攻略には全く意味ないんだよぁ。

 もっと、単純で簡単なんだよ。

 まぁ、山坂に対する糾弾がなくなっただけでも相当前進している。 

 あの流れが続けばマイナス点は回避できそうだ。


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