41話 周りがどんよりしてるけど飯うめぇ!
ミニスラちゃんがスラと同じ無害な生き物だと言うことが分かり、昼食に戻る。
「うめぇ……うめぇ……!!」
最高級ホテルのランチってこんなに美味しいのか!
しかもバイキング形式なので腹いっぱい食べれるのが庶民の俺には高評価だ。
バイキングってあれだろ、作り置きして冷めてもおいしく食べれるようにしないといけないから作りたてよりは味が落ちるんだろ?
でもこれうめぇよ……母さんが作った飯の次にうめぇ!
ガツガツガツ
「う~む」
スラが何かを悩んでいた。
「どうした?もうミニスラ失踪事件は気にしてないぞ?」
「なお君の慈悲に感謝です」
「どうしたんだ?元気がないぞ?」
「……何でもないよ?」
「そう言うとスラはご飯をもぐもぐと食べ始めた。だが、いつもの元気良さがない。苦行すら楽しむスラにっとって、今回のゲームはビリでも良いはずだ。一体何を悩んでいるのだろうか?ほら、さっさと言わないとずっと心で思ってることをブツブツ言い続けるぞ?」
「……うにゅ、ミニスラちゃんたちが失敗し続けてるのでとても言い辛いです」
「またミニスラちゃんのことか?」
「ですです。実はミニスラちゃん達もお腹を減らしていて、『ボクたちも美味しそうな料理が食べたいなぁー』って言ってるんです。でもここは結構目立つので食べさせるわけにもいかず。赤神ちゃんが採点もしてるのでボクが席を離れることもできないのです」
スラは学年最下位の0点だから、席を離れようがモヒカンにしてバイクを乗り回そうが大してゲームの採点に影響はないと思う。
「トレーに食べ物入れてこっそりミニスラちゃんに渡せばどうだ?バイキング形式だから好きなものとれるし、渡すくらい大した時間もかからんだろう」
「それはあまりやりたくありません」
「何故に?」
「ミニスラちゃん達は厳密には宿泊客じゃないから無銭飲食になってしまいます」
そう言えば、スラはスライムの時も、電車を利用する時は自分の分の切符を買っていた。。
切符を買おうが買わないが周りの人間にばれないようにするためにリュックに隠してスラを持ち運ぶため、切符を買う必要は全くない。
それなのに『無賃乗車よくない!』って言ってスラはいつも自分の切符を買う。
もちろん、スラの切符は改札には通してないが。
機械女神でスライムでペットというよく分からない生き物だが、そういった特別扱いはして欲しくないらしい。
だからスラのポリシーに従うと、このホテルの飯を無銭飲食にならないようにミニスラちゃん達に食べさせる方法を考えないといけない。
さて、どうしたものか。
「で、ミニスラちゃん達は今どこに?」
「あそこです」
目立たない場所ではあるが不自然な所にダンボールがあった。
ダンボールを被ってたらばれないと思うなよ?
てかダンボールがもぞもぞ動いてるんですけど?
もうちょっと大人しくして欲しいのですけど?
「まぁ、ボクたち機械女神は飢えて死んじゃう事はないので今回は我慢してもらいましょう」
「えっ!?」
今さらっとすごいこと聞いたぞ!?
この5年間、飼育してきたスラの食事は何だったの!?
地球資源の無駄使いだったの!?
「……なんだ、これからはスラの分の食事を用意する必要はないのか!これで随分食費が抑えれるな!これからはスラの飯はないけど、お情けでドックフードと水は恵んでやるよ!」
「必要です!ご飯欲しいよ!飢え死にする事は確かにありませんが、人間と同じ食事を取るのは機械女神の生きがいなんです!故郷でもずっとご飯は食べてました!」
「だからドックフードと水は恵んでやるって言ってるだろう?」
「な……なお君。ちゃんとしたご飯を食べることはとても大切なのです!」
「だったらミニスラちゃん達にもちゃんと餌をやらないとな。……俺が食堂から出たら人目につかないようにしてついて来るように指示しといてくれ」
「でも……あまり目立つことをしたらゲームにも影響が出るかもしれないので」
「なぁに、ゲームに影響が出ないようにするさ。それに、ペットの餌やりは飼い主の義務だ」
「なお君っ……!!ありがとうございます!!」
すりすりすり
「そのケチャップがついた口ですりすりしてくるな!」
周りを見ると俺とスラとは対照的に5組の空気はとても暗かった。
勉強会ではそれなにりちゃっとやっていたのにも関わらず、0点からスタートでマイナス52点になってしまったと思っているのだろう。
ゲームが終わるまでに0点を上回ることができなかったらゴールデンウィークまで地獄の勉強会。
ゲーム攻略の糸口が見つからない今の状態じゃ暗くなって仕方がないか。
「ねぇ、夏野君。お願いがあるんだけど」
斉藤が俺にお願いをしてきた。
内容は聞かないでも分かるから先に答えてあげよう。
「残念ながら無理だ。一応俺だって山坂に勉強会が始まる前にお願いしてるんだが俺でも連れ出すのは厳しいそうだ」
「そう……。ごめんね、夏野君もがんばってるのにね」
「良い子だなぁ……俺の為に花嫁修業もしとけよ?」
「しません」
しょぼーん。
遠藤が指揮をとって作戦会議に入る。
「みんな、食べながらでいいから対策を立てないか?まず、俺達の目標はとにかく0点を上回ることだ。その為になぜ、俺達がマイナスになってしまったのか原因を突き止める必要がある」
皆がその通りだと頷く。
「じゃあ、マイナスになった原因が分かる人はいるか?」
「堅苦しくて盛り上がらなかったとかとかかな!」
「ああ……そうかもしれないね」
「こう、みんなで何かを成し遂げたって訳じゃないからね」
それぞれが目標を達成するため意見を出し合う。
まだ暗い雰囲気だが、こうやって皆で意見を出し合う状況は悪くない。
このまま続いて欲しい。
「いろんな意見があって改善点が多くあるんだが、それをそよりも前に僕はそろそろちゃんと"対策"しないといけないと思う」
早速、堪え切れなかったのか遠藤が皆に言った。
恐らく皆分かっていることだ。
対策……ねぇ。
これは荒れるぞ。
何せ犯人が分かっている犯人探しはもはや罪状決める裁判になってしまう。
そう言う流れになるんだったら終わりだ。
はぁ……どうしよう、介入するべきか?
だが、俺が介入しても乗り切ることができるか?




