38話 赤神ちゃんは可愛い!
「何か勉強で分からないところはあったら気軽に言ってくれ。暇なんだよ」
「そうだな、じゃあここを教えてくれないか」
俺の夢はどうやら確変中だったようだ。まだボーナスが続いている!
どうよ、勉強の話ならば私語ではない!
しかも陽菜やスラ、その他の学生も勉強を教えたり教えられているではないか。
よって、俺だけ咎められることはないはず。
「そこの問題については僕が教えてあげるよ」
うきうきしている中、右に座っている学生に割って入られた。
振り向くと、男子達のリーダーの遠藤だった。
いけない、このままでは遠藤に役目をとられてしまう。阻止せねば。
「その役目は俺にやらせて欲しい!俺、問題が大好きなんだ!好きすぎて答案用紙をペロペロしちゃうくらいなんだよ!」
「……」
「も、もちろん冗談だって。でも、そのくらい俺が適任という訳だ」
「いいですよ、夏野君。君はとても天才だから、君の方がはるかに適任かもね」
……俺は間違いなく遠藤に嫌われている。
これはまずいな。男子達を束ねるリーダーに嫌われるということは男子全体を敵にしていることに等しい。
一刻も早く、遠藤ルートに突入して攻略する必要がある。
じー。
気がつくと俺のすぐ傍に赤神先生がいた。
俺達のことに興味津々の様子で見られている。
ああっ、そのジト目がすごく可愛い。
そのジト目をされながらスク水と黒ニーソを着用して足で踏んで欲しい!
さてさて、それよりもまず目の前のことについて問題を解決せねば。
今ここで下手なことをして遠藤と喧嘩になるのは最悪のケースだ。
俺の評価がどこまで落ちようがどうでもいいが、クラス全体の評価を下げられてしまっては、俺にヘイトが集まり合宿での友達作り、果てはその先のセクハラ計画まで終わってしまう。
ここは、黙って譲っておこう。
「あーやっぱり遠藤が教えるべきだ。俺、人に教えるの苦手だし……」
俺がそう言うと遠藤は問題の解き方を教え始めた。
そして、赤神先生は興味を失ったのか移動した。
ああっ、俺は友達を作るチャンスとジト目をされながらスク水と黒ニーソを着用して足で踏まれるチャンスの両方を逃したのか!
やる事もなくなってしまったのでしばらくぼ~っとする。
◇◇◇◇◇
「赤神先生。中間発表はどのような形で行われるのですか?」
誰かが赤神ちゃんに尋ねる。
「ホテルの全体アナウンスを使って、学年主任が発表する」
またあのねっとりおっさんボイスを聞かなきゃいけないのか。
例えば、職場で俺の上司が学年主任だったらおれは3時間で辞職を決意するだろうな。
気づけばもうそろそろ1回目の中間発表の時間だ。
勉強会を終わらせる準備をしてアナウンスを待つ。
「5組はどのくらいの点数になるんだろうな」
「まぁ、そこそこじゃね?非の打ちどころもなかったしな」
周りから楽しそうな声が聞こえる。
俺も楽しく会話したいなぁ……。
辺りを見渡しても話してくれそうな人はいなかったため……俺は静かに眼を閉じた。
「なおく~ん」
スラが目の前に現れた!
「おおスラ~!元気に勉強してたか~?」
スラに頬擦りをする。
気を許して話せる奴がいるっということはなんて良いことなんだ!
例えそれがペットでも!
「スラちゃん幸せ~」
スラも満足そうにしていた。
「……スキンシップが激しすぎないか?」
またひょっこりと赤神先生が現れた。
「赤神ちゃんもなお君にすりすりしてもいいよ!」
「……」
「ふふ~ん、髪と同じ真っ赤な顔になってますよ!」
スラと赤神先生は仲が良くフレンドリーに話している。
性格的には合わないと思うんだが……同じロリキャラとして波長が合うのだろうか?
「スラ、謝っとけ。減点されるかもしれないぞ?」
「ボクは赤神ちゃんの怒るギリギリのラインを見極めることができるのだ!まだ大丈夫!」
ペットは飼い主に似るというが随分スラも俺に似てしまったようだ。
「で、夏野……お前は私がどんな感じで採点をしたと思う?」
話を逸らされた。
いや、元々これが本題なのか。
「採点基準が分かりませんので点数は予想できません。……ですが、皆が思っているより遥かに悪い結果になるのは分かります」
「ふぅーん、一瀬先生に攻略法でも教えてもらったか?」
「いいえ。あの学年主任の性格を予想しての回答です。ってか一瀬先生、さっきから信用されなさすぎでは?」
「まぁ……あんなのだしな」




