36話 実力確認テストの確認
「じゃあまず始めに、昨日の実力確認テストの結果について報告するよ」
早速、バスに乗る前に陽菜と話をしていた名もなき男子がリーダーシップをとってみんなをまとめる。
いい加減名前を知りたいが知る機会がない。
直接聞くのも失礼っぽそうなんで陽菜にこっそり聞いてみる。
「なぁ、あの生意気な態度で俺たちを見下しているあいつの名前は?」
「遠藤君よ。1カ月も一緒に過ごしているだから名前くらい覚えなさいよ」
「同じ空間にいるだけで一緒に過ごしていると定義されるのであれば、俺と陽菜は同棲していると定義できる」
「私、友達0人の問題児の嫁になるつもりはないわよ?」
「いるし、超いるし?山坂とか、お母さんとか……2人いるし」
「自分のお母さんすら友達カウントに含めても2人なのね……」
「しっ。静かに。遠藤が喋っている」
「えぇ~……」
会話を中断して遠藤の話を聞く。
大切な情報が詰まっているはずさ。
「5教科合計500点満点中、平均点は125点。学年一位は……満点取ったスラちゃんじゃない方の夏野」
おおーっと盛り上がる。
……おい待てよ。
確かにスラも俺と同じ苗字で夏野だから、どっちか分かりにくいけどさ、『スラちゃんじゃない方の夏野』ってひどくね?ひどくね!?
何か俺がスラのパクリみたいになってね?
俺の方がスラより1日早く入学した先輩なんだけど!?
だが、不味いな。
俺が平均点をとった人間よりどのくらい採点に対して影響力があるのかは分からないがかなり大きいはずだ。
平均とった人の125点の4倍の影響力が俺にあるのだろうか?
そこらへんも聞いておけば良かったかもな。
「2位は487点の山坂だ」
うぁ~高いな、山坂と俺だけで相当採点に対する影響力があるぞ。
その後は遠藤はメモを皆に見せながら点数を教える。
さて、陽菜とスラと遠藤、お前達、リーダーポジションの3人がどれだけ高得点を取っているかが鍵だ。
陽菜の合計点数200点。
そこそこあるな。国語、英語、社会がそれぞれ0点で、数学と理科は100点満点をとるという謎点数。
去年の陽菜の受験勉強を見ていた時に分かっていたが、理数系科目はかなりすごいのに文系科目はボロボロだ。
それでも文系科目3教科合わせても0点はひどすぎじゃね?まぁ、結果的には平均点よりも75点分高い訳だが……。
「文系科目は捨てて寝てました、すいません」
「……」
まぁいい。スラの点数を見てみよう。
スラの合計点数0点。
「何だよ0点って。0点って影響力あるんだろうな?」
「すいません!ずっと寝ちゃってました!」
「何で陽菜とスラはテストで寝てるの?俺が言うのもすごくあれだけど、学校生活舐めてるの?やる気あんの?」
「テスト前の深夜に急な寄り合いが入ったので……でもスラちゃんやればできる子なのだ!次は300点以上はがんばります!」
親に見つかったら怒られるテストが見つかった時の子供言い訳みたいなことを言ってきた。
てか急な会議って何だよ?そんなの俺知らんぞ?
まぁ、まぁいい。男子グループのリーダーの遠藤の点数を見てみよう。
遠藤の合計点数は164点。
平均より少しあると言った感じか。
ならばスラを除く、陽菜と遠藤が頼りと言うことになる。
「はい!遠藤君、提案がありまーす」
「何でしょうか?」
陽菜と良く会話している、斉藤と言う女の子が遠藤に提案した。
陽菜と会話が多いと言うことは間接的に俺にも接点がいくつかあるおかげで今まで何回か会話はしている仲だ。
「当たり前の話なんですが、今回、500点満点とってる夏野君もみんなをまとめる役に加わったらポイントがっつり手に入るんじゃないでしょうか?」
「くっ……そうですね、その通りです。……夏野、こっちに来て協力してくれないか?」
「悪いが少なくとも今は、まとめ役は遠慮しておく」
「ナオ~。めんどくさくて引き受けたくないのは分かるけどビリも嫌でしょ?ならナオがリーダーやってぱぱっと1位とっちゃえばいいじゃない」
そうだよ~と女子グループから発言が出るのに対し、男子グループは静かだ。
男子にとっては、本当は夏野がリーダー格に加わるなんて嫌だけど、でも能力はあるから認めるしかないといった感じだろう。
「確かに俺はクラスで一番影響力が高い。成功すれば大量得点ゲットかもしれない。だけどもし失敗したら取り返しがつかないことになってしまう。だから少なくとも中間発表まで俺自身は様子見したいんだ」
予想では俺が参加したってきっと中間結果の点数は良い結果にはならないと踏んでいる。
どんなにがんばっても報われないのなら、発言力は温存しておくべきだ。
斉藤がにこにことしながら俺のそばによってくる。
「大丈夫だよ~夏野君だったら。私も出来る事なら協力するよ」
「出来ること?じゃあ、斉藤は俺と結婚してくるのか?」
「えっ……!?ええ!?」
「結婚するのですか!例え、なお君が結婚してもボクはついていきます!」
陽菜が呆れたように言う、
「はいはい。とりあえずナオはしばらく封印しときましょ。ナオは優秀だけど使い方間違えたら劇毒だから」
「う、……うん」
まぁ、これでひとまずはクラスの端っこにいる陰キャラの立場で5組の様子を傍観できるだろう。
「……くだらない」
一人荷物をもってこの場から立ち去ろうとしていた。
それは山坂。
遠藤がが慌てて引き留める。
「ちょっと君、待ちたまえ」
「……なんだ?」
「君はこれからどうするつもりなんだ?」
「こんなお遊戯に付き合うつもりはない。部屋で休む」
「いやいや、ちゃんと君にも協力してもらわないといけないんだ!君だって最下位になりたくないだろう?」
「好きにすればいい、僕には興味ないことだ」
そのまま山坂が広場から消えた。
まぁ今は好きにやらせておけばいい。
だが、代わりに後で絶対俺の友達にしてみせるからな。