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33話 楽しい合宿でのゲーム!

 バスに乗ってから2時間程で目的地に到着。

 目の前にはすごく高級そうなホテルがあった。


 今回の合宿は学費として含まれている。

 つまり学費免除の俺とスラは無料で参加しているということなる。

 今まで泊まる場所と言ったら漫画喫茶くらいしかなかった庶民の俺は感動に打ちひしがれる。

 

 一瀬先生が珍しく先生らしく皆を引率する。


 「それじゃあバスのトランクから荷物を受け取って、そのまま第一大広間に向かうぞ」


 自分の荷物をとって第一大広間に向かう。


 「山坂、俺からはぐれるなよ?不安だったら手、繋いでやろうか?」


 「……」

 

 無視されてしまった。


 ぎゅ。


 と思ったら手を繋がられた感触がした!

 えっ!?まじですか!?冗談だったのにまじですか!?


 「ふふ~ん」


 スラだった。

 

 第一大広間に着くと既に他のクラスの学生が並んでいた。

 鈴木高校の1年は1クラスにつき男女合わせておよそ30人。

 そして5クラスあるのでざっと150人ほどの学生が大広間にいる。

 最後に来た俺達5組は空いている右端に整列をして、しばらくすると年配の学年主任が壇上に立った。


 「みなさん、お疲れ様です。バスの移動で疲れているでしょうが、最初にこの合宿のテーマと日程について説明します」

 

 学年主任の説明なんて即スタンバイモードになるが、さっきの一瀬先生の忠告と関係する事を話すのだろう。

 しっかり聞いておこう。

 

 「今回の合宿のテーマは『協調性・団結力』です。君達にはこのテーマに沿った行動をしてもらいたいと思います」


 早速何か嫌な予感がする。

 俺が最も苦手としてることじゃんか!


 「ですが、せっかくの合宿で堅苦しいことをするのはナンセンスだと私達、教師は考えています。そこであなた達にはゲームをしながら合宿を楽しんでもらおうと思います」


 周りが少しざわつく。

 合宿の日程を何も知らないので、一体何をさせられるのかと不安になったのだろう。


 一方、俺は優等生なので学年主任の話を静かに聞いていた。

 だって話せる友達周りにおらんし。


 「心配しなくてもやることはとても簡単で単純です。君達は今日の午後7時まで『自由行動』をしてもらいます。そして私たち教師はあなた達の行動を観察し良い行いに大して点数を加点します」


 ざわざわしていたのが収まった。

 それぞれが感じたのだろう……嫌な予感がすると。

 

 「そして、それぞれのクラスを1つのグループとして競い合ってもらいます。ゲーム途中2回、中間獲得点数を掲載し、ゲーム終了時刻で順位が確定します。なお、今回の合宿のテーマをもう1回言うと、協調性・団結力です。ペーパーテストが得意で賢い鈴木高校の皆さんなら、どういう意味は当然分かりますよね?」 


 なるほど。

 不安に思ってたけど、全然大したことじゃねーじゃん。

 だって協調性や団結力というテーマにおいては俺のクラス、1年5組は他のクラスに比べるとかなり有利なんだもん。

 なにせ実質クラスリーダーとなっている陽菜とマスコットのスラ、それに男子で言うと、さっき陽菜と話していた名前も知らない男子も、男子グループ中では人望があり統率力を持っている。

 他のクラスの事なんてほとんど知らないが、かなり良い成績を残せるはずだ。

 俺はただ、黙ってキョロ充しとけば良いってことだ。


 「そうそう。採点の担当として公平性を保つため自分のクラスの担任以外の教師が付き、常時採点を行います」

 

 つまり一瀬先生のえこひいきに頼ることはできないって事か。

 まぁ、ちゃんと公平に採点されるのであれば別にどうってことはない。

 

 「そして、もう一つルールがあります」


 すると、壇上近くに大きな模造紙が張り出されていた。

 ここからでは何を書いているのかは遠くて見えない。


 「ここには昨日、あなた達が受けた実力確認テストの順位と点数が全員分掲載されています。それは後で確認してください。そして採点基準として、この実力確認テストの点数が高ければ高い人物ほど、今回のゲームの採点に対する影響力が高くなりますぅ~」


 「……は?」


 俺は一瞬で背筋が凍った。

 つまり、成績良い奴がリーダーシップをとれば点数が伸びやすくて有利って事か?

 

 おいおい、まずいぞ。

 既に俺の学力の高さがばれてる以上、テストに手を抜く必要がなかったから実力確認テストは普通にこなしてしまったぞ?

 俺の行動が採点に大きく影響してしまうっぽいぞ。


 「さて、クラスの順位が決定した後のことですが……もちろん、ご褒美やペナルティがないといまいちゲームが盛り上がらないですよ?大丈夫です、ちゃんと用意してますよ?」

 

 うわぁ……すっげぇ、ねちっこく言ってる。

 まぁ。流石にこの現代社会で最下位のクラスは即退学と言った無茶なことはできないだろうが……。


 「1位のクラスは全員に3万円、2位のクラスには全員に1万円の賞金があり、合宿終了まで監視がつかない"本当の自由時間"を過ごせます」 


 周りからおおーっと声が上がる。


 この鈴木高校は比較的お金持ちも多いが、半分以上は普通の家庭に生まれた学生だ。

 そんな一般庶民の学生にとっては3万や1万はなかなか良い臨時収入だ。

 俺も友達と抱き合ってこの喜びを分かち合いたい。

 後で陽菜に頼んで抱き合ってもらおうか。


 で、3位からが天国と地獄の境目か。


 「3位のクラスは、残り合宿の半分が"勉強会"となり、4位は合宿の残り全てが"勉強会"になります。」


 ……


 「そして、最下位のクラスは……合宿が終わった後のゴールデンウィーク10日間、ここに留まり"勉強会"を続けてもらいます。ああ、勉強会と言っても普通の勉強じゃつまらないですからねぇ。協調性や団結力、ビジネスマナーと言った将来に役に立つとてもありがたい講演会を1日10時間ほど聞いてもらいます!」


 ……まじかよ。

 これは予想よりも地獄だぞ。

 しゃれになってない。 

 この豪華ホテルに延長して泊まれるメリットを差し引いてもデメリットが上回る。


 「もちろん、1年に1回のゴールデンウィーク。色々予定を既に組んでいる人もいるでしょう?安心してください。鈴木高校として絶対に強制はしません。なので最下位になっても帰りたいと希望する者はどうぞ帰ってください。私達教師は"そういう人間なんだ"と評価するだけです」


 鈴木学園に入学した学生のほとんどは将来を考えて入学した者だ。

 俺みたいに成績さえ良ければ楽できると思って入学した学生は少数だろう。

 つまり多数の学生にとっては"内申点"を人質を取られているみたいなものだ。

 

 確かあの学年主任は元々民間のサラリーマンだったそうだ。

 この手法は間違いなくあれだ、ブラック企業だ。

 しかもただ黒いだけじゃない。

 合法と違法のスレスレの際どいラインを攻める一番嫌らしいタイプだ。 

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