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32話 ペットの発想に負ける俺


 点呼を終えてバスに乗る。

 座席は特に決まってないから自由に座っても良いらしい。


 俺は、既に座っていた山坂の隣に座る。

 同じ部屋に泊まるんだからここでもっと交流しておきたい。

 山坂がどんなに俺の事を嫌がろうが、到着するまでは逃げられないぞ?


 「ボク、なお君のと~なり!なお君の隣がスラちゃんの指定席なのだ~!」

 

 「何か言ったか?」


 「……しょんぼり」


 俺の隣の席が既にない事を知ったスラは、とぼとぼと陽菜の隣に座っ……いや、陽菜の膝の上にちょこんと乗った。

 どこでも自由に座っていいからって陽菜の膝の上に座るんかよ!?

 あいつ、天才だな!!俺ですらその発想はなかった!!羨ましすぎる!!

 膝の上に乗られた陽菜はびっくりするどころか、自然とスラを受け入れて、スラのほっぺをちょんちょんと指でつっつきながら楽しそうにしている!


 いやいや、今はあっちに気を取られたらいけない。

 せっかく誰にも邪魔されずに山坂と色々話せるチャンスなんだ。 


 山坂が何をしているか見ると、いつもと変わらずクールに本を読んでいた。

 ずっと一人で読書をしているのだが、何の本を読んでるのかは教えてくれない。

 そして本にはブックカバーをしてるせいで何の本を読んでいるのか分からないのだ。

 まぁ、俺には何の本を読んでるかは分かるが、それを山坂に言ってしまうとかなり悪い雰囲気になってしまうから知らない振りをしている。


 俺と山坂が友達になって1カ月経つが俺は山坂の事については2つの事しか知らない。

 1つは、山坂の学力は高く入試の成績も俺と僅差で2位ということ。 

 2つ目は山坂の人を寄せ付けない態度が原因でクラスでとても浮いているということだ。


 さて、時間は有限。

 早速山坂にコンタクトを取ってみる。


 「あ……あの……合宿、楽しみだね?」


 コミュニケーション能力カンスト済みの俺からしたら100点満点中80点程度の話の切り出し方だ。

 相手について何も知らない時は、むしろこのくらいの当り障りない会話の方が良い。


 「……ああ」


 「そうだな~合宿では何するんだろうな?」


 「……」


 「どうせならもっと楽しいことをしたいよな!例えば、海岸でバーベキューとかやりたいかなぁ。山坂は?」


 「興味ない」


 あっれ~?おかしいぞ~?会話が盛り上がらない。

 陽菜と俺に一体何の違いがあるのだろうか?

 おっぱいがあるかないかの違いでここまで会話の流れが変わってしまうのか?


 向かいに座って、車の雑誌を読んでいる一瀬先生に応援を求む。


 「いや~、先生!合宿楽しみっすね!」


 「俺に助けを求めるなよ。一人でがんばれよ優等生君。それが青春だ、青春」


 ちっ。使えねー。


 「合宿が始まる前になんとかしとかないと"後で苦労するぞ?"」

 

 「後で苦労?」


 「いや~はっはっはっ。悩んで苦労して、そして楽しめ!少年少女達よ!」

 

 何を言ってるのかさっぱりわからん。

 酔ってるんだろうか?


 「いいか夏野。俺たち1年5組の鍵は間違いなくお前だ。そして俺はな、夏野含む5組全員に期待してるんだぜ?なにせ30万も賭けたんだからな」


 誰にも聞こえないようヒソヒソと小声で話してきた。


 「……何のことを言ってるのかさっぱり分かりません。先生、お酒臭いですよ?」


 「いやいやいや、俺今は飲んでねーし!」

 

 どうやらこの合宿、ただ楽しい合宿で終わる訳ではないようだ。

 先生は主に自分の賭け金のため、公平性が欠けないギリギリのラインで俺にアドバイスをしたのだ。

 いや、これは十分に公平性欠けてると思うけど。

 

 まぁ、今は後の事よりも山坂だ!

  

 「山坂ぁ~。もっと俺と話しようぜ~?」


 「話は聞いている」


 「ならもっと聞け。今、俺を満足させておかないと夜中、部屋で喋り続けるぞ?ええんか?マジで寝れへんで?」


 「……」


 「ええんか?ええんか?」


 「分かったから……聞くから」


 そして俺は昨日見たアニメのパンチラシーンについての考察から話を始めた。

 そしてバスが着くまで一人でただただアニメとパンツについて喋り続けた。

 山坂がこのアニメを知っているのかどうかは知らないし大した反応もしてしてくれない。

 だが、山坂は最後までちゃんと聞いてくれた。


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