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31話 目標、合宿で友達100人くらい作る!

「おはよう!」


 合宿の集合地点にルンルン気分で到着した俺は既に集まっていた5組の皆に元気に挨拶した。


 「おはよ~」


 「おはよう、夏野君」


 「ちーっす」


 だが、返事が返ってくるのは女の子ばかりだった。

 めげずに男子グループに向かって挨拶をかける。


 「おはよう!」


 「……おはよう」


 やった!一人来た!返事きた!返事がきた!お前、今日から俺とトモダチ!


 荷物をバスに積み終えたスラが後ろからひょっこり現れ、男子グループに向かって挨拶をする。


 「みなさん、おはようございます!」 


 「スラちゃん!おはようございます!」


 「今日も元気そうだね!おはよう!」


 「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 この違いである。 

 最後の挨拶なんてもはや挨拶じゃねーだろ、雄叫びあげてるだけじゃねーか。

 ああ、情けない。同じ男子として女に媚びた姿なんて見たくない。

 しかも知らないとは思うがそれ、スライムなんだぞ?


 ひょっこり陽菜も現れた。

 陽菜を見ると元気が出る。思わずガッツポーズゥ!


 「みんな元気ね。おはよう~」


 「うおおおおおおおおおおおおおお!陽菜ちゃんだああああああ!うおおおおおおおおおおおおおお!」


 「どっ、どうしたのよナオ……テンション高すぎじゃない?」


 「え?ただの挨拶だけど?それより陽菜は昨日やってた魔法少女ルムルム見た!?12分辺りのパンチラマジ最高だったよな!?……はっ、そういう事か!?」


 そうか、陽菜が男子グループに挨拶をしたにも関わらず、俺が割り込んで陽菜と会話してしまうから男子たちに嫉妬されてしまうのだ。

 陽菜は超絶美少女、そんな子を独占したらそりゃあ嫉妬されるに決まっている。 

 だったら、男子グループの輪に入るために、これからはもっと視野を広く持とう。

 陽菜は俺だけのものじゃないんだ。

 みんなの共有物なんだ!


 「……」


 「ナオ……?」


 「……」


 「ナオってば」


 「悪いな、陽菜と喋る気分じゃないんだ」


 「ええっー!?」


 ここで陽菜と関わってはいけない。

 無視をするんだ。

 暇つぶしにスラと遊んでおこう。


 「ほら、スラちゃんたかーいたかーい」


 「ふふ~ん、崇めたまえ~奉れ~」


 スラちゃんドヤ顔である。


 男子諸君、今なら陽菜がフリーだぞ!

 声をかけるなら今がチャンスだぞ!


 俺の思惑を知っての行動なのか知らないが、男子が陽菜に声をかけた。


 「あの、陽菜さん」


 いいぞ!その調子だ!

 だが、俺だけの陽菜を名前で呼ぶなんて馴れ馴れしいぞ!


 ……おっといけない。

 陽菜はみんなの共有物、共有物。

 てか、俺とスラがずっと陽菜と呼んでいたせいでアダ名みたいなもんになってしまっただけだ。

 

 「スラちゃんたかーいたかーい」


 「スラちゃん、機械女神なり~」


 こいつ、調子に乗ってとんでもないこと言ってるぞ。

 多分みんなに聞かれてるだろうが誰も気してる様子はない。

 可愛いマスコットが何か可愛いこと言ってる、としか受け取られていないと願おう。


 男子学生が陽菜に話を続ける。


 「あ……あの……合宿、楽しみだね?」

 

 コミュニケーション能力カンスト済みの俺からしたら100点満点中10点程度の評価だがまぁ、声を掛けないよりはよっぽどマシだろう。

 なお、現在の私の友達人数は0人を継続中。

 さっき俺に挨拶をしてきた奴を友達としてカウントしてもいいなら友達人数は1人に更新だ。


 「そうね~合宿では何するんだろうね?」


 「それは……学生としての本分は勉強だから、当然勉強を主軸としたプログラムで構成されると思うよ」


 ああ、そんなんじゃダメだダメだ。

 陽菜には何年もかけて、冗談を言ったりセクハラしたりして、ちゃんと調教している。

 だからもっと陽菜にはフランクに話しかけても大丈夫なんだ。ガンガンいこうぜ!

 

 「う~ん、せっかくの合宿で勉強漬けも嫌だな~。どうせならもっと楽しいことをしたいよね!例えば、海岸でバーベキューとかやりたいかなぁ」


 ほらな?陽菜は誰にでも優しく接してくれるんだ。

 だから陽菜ちゃんのお風呂を覗きたいな~くらい言っても全然大丈夫だぞ?

 

 「スラちゃん、人類の平和と愛を司る女神~」


 腕が疲れてきたからスラを下ろす。


 「天気予報だと今日は全国的に風が強いらしいからバーベキューは控えた方がいいかもしれない」


 「お肉とか飛んじゃったらしょんぼりしちゃうもんね。じゃあ室内でできる事の方がいいかもね。枕投げとかどうかな?あっ、でも枕投げを男女でやるって訳にもいかないか……えへへっ」


 流石コミュニケーションの鬼、陽菜。

 相手に上手く合わせて自然と話を続けている。

 ほらがんばれ、名前も知らない男子よ!

 


 「はぁ~寝坊した。マジで寝坊した。お、みんな集まったようだな、点呼とるぞ~」


 なにっ!?一瀬先生がやってきた!

 俺は慌てて一瀬先生を抑える。

 

 「先生、点呼はもうちょい後にしてくれ。ほら、見てくれ。彼は今、青春をしているんだ」


 「えっ?でも、そろそろ点呼とらないとマズいぞ?他のクラスはもう出発してるし……」


 「へ~他のクラスは気が早いですね~」


 「いや、俺たちが遅いだけだ。だって俺が出発時間の20分遅れで来たんだし。これ以上遅れたら5組だけ合宿中止かもな!」


 「別にいいっす。早く点呼取りましょう」


 すまぬ、名前も知らぬ男子よ。

 俺の合宿セクハラ計画の方がお前が陽菜とお話しするよりもはるかに大切なんだ。

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