30話 合宿開始数時間前
深夜3時
「ふぎゅ~……ねむいです」
スラの特殊能力の1つとして、機械ならばどんな物で出し入れできる能力を持っている。
スラはこの特殊能力を『スラちゃんポケット』と言っているが、やっぱなんかパクリ感がある。
このスラちゃんポケットの使い方は簡単。
収納したい機械をスラが手にかざすと機械が消え謎空間に収納が完了し、出したい時は、ぱっと目の前に現れる。
スライムの時は、機械を飲み込むように収納したり吐き出すように機械を出したりしてた。
美少女モードのスラが同じようにすると、さぞグロいものを見てしまうと思ったがその心配はなかった。
この特殊能力を使って今は合宿にこっそり持っていくために、ゲーム機やらテレビやらパソコンやらとにかく色々な物をスラに詰め込んでいる最中だ。
「まだ持って行くのですかー?あまり詰め込みすぎると整理整頓がー……」
「ああ、ガンガン収納したまえ」
「ふぎゅ~……ねむいです」
数時間後に控える合宿だが、実はどんな合宿なのかは説明はほとんどなく日程や段取りも聞かされていない。
持ち物も、日数分の着替えと少しのお金くらいがあれば十分らしい。
他に持って行きたい物があれば、学生として相応しいものなら持って言っても良いとも補足は一瀬先生から聞いた。
俺はてっきり進学校だから勉強合宿の堅苦しい合宿なのだろうと思っていたのだが、どうやらそういうわけではないらしい。
っという訳で俺はハイテンションになって徹夜で持っていく物を選別してスラに収納させているのだ。
「ところで、頼んでいた例のアレは完成したか?」
「完成しましたー……」
「良くやった、それも持っていくぞ。寝るなスラ」
「うにゅ~……」
寝落ちしそうになっているスラのほっぺをペシペシ叩く。
「スラちゃんいじめよくない!」
スラは黙々と収納し、しばらくすると大体終わった。
「じゃあちょっと寝ます~……おつ~」
「スラよ……こんな楽しいイベントなのに寝るなんてもったいないぞ?」
「……うにゅ?」
「さぁ、今から一緒に登校するのだ!盛り上がろうぜ!」
「今はまだ午前4時です……なんでそんなにハイテンションなのですか」
「何故かって?友達を増やす絶好のチャンスだからだよ」
入学して1ヶ月、俺には全く友達がいなかった。
何故、俺が話しかけても他の男子学生から遠ざけられているのかが未だに分からない。
「……なんで俺、友達増えないんだろうな」
「でも女の子とは結構話してるよ?」
陽菜とスラが俺の近くにいるため、この1人と1匹の繋がりで他の女の子とも接触する機会が多いのだ。
スラや陽菜と話している内に気がついたら俺は女の子のグループの中で会話をしていることも多々ある。
今思えば、その度に他の男子グループから冷ややかな目線を送られていたような気がする。
……
あっ、分かったぞ!。
俺、女の子と話しすぎて他の男から嫉妬されまくってるんだ。
あれだ、ボクは友達が少ない状態になっているのだ。
「いやっほーーー!!!」
「なっ……なんですか!」
うとうとしていたスラがびっくして起きた。
そうか、そういうことだったのか!
原因が分かれば問題解決に向けて大いに前進する。
合宿で上手く男子グループから誤解を解けば友達になってくれるかもしれない!
嬉しさのあまりスラを抱っこしてもふもふする。
今はすごく女の子の香りがするな!
「やっぱ寝た方が良いです、謎のテンションになってます~……」
「そう?」
「うにゅ~……でもこのままがいい~」
「そうか、やっぱ少し寝ておくか」
スタミナケージは残しておこう。
現実では課金できないからスタミナ回復は時間経過しかないもんな!
抱っこしたスラをそのまま抱えてベットで寝る。
「ん~……幸せ~」
スラも満足そうな表情をしていた。
くっくっくっ……合宿ではビシバシ働いて貰うから今はご機嫌になっておけばいい。




