25話 テンプレ的添い寝
「おうっ!?これは……!?」
朝、俺は目覚めると知らない女の子にぴったりと抱きつかれていた。
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!ラッキースケベやで!こういうのええで!
パジャマ姿の水色の髪の長い女の子が、俺の体に絡みつくように抱きつき……ってなんだ、スラか。
……スライムの時は遠慮なく抱き枕代わりに股に挟んで使っていたが、流石に今のこの状態を良くないな。
母さんに見られると家族会議待ったなし。
つんつんとスラのほっぺたを突っついてみる。
「うにゅ……なお君のスリーサイズは……」
聞きたくねぇよ俺のスリーサイズなんて!知ってどうするんだよ!俺にブラなんて必要ねーぞ!
まぁ、所詮スラと言えど一応女の子。
人生初の添い寝イベントだ。しばらくこの状態を黙って受け入れる。
それにしても、女の子の体は柔らかいと聞くが……抱き枕として使うならやっぱりスライムの時の方が柔らかくていいな。
どうやら俺の体は、美少女よりもスライムの柔らかさを求める変態になってしまっているようだ。
……いやいや、まだこの美少女の一番柔らかい所を確認していないのに答えを出してしまうのは早計だ。
スラのおっぱいに顔をうずめてみる。
「すーはーすーは!!クンカクンカ!!おおう!?おおおおおおおおお!!!!」
「うにゅ~……」
う~ん、柔らかいのは柔らかいが、おっぱいのボリュームが足りないと思う。
Bカップか、下手したらAカップくらいだろうか?
これは今後の成長に期待だな。既に数千年生きてる機械女神がこれ以上成長するのかは知らないが。
「んふふ~なお君!どうですかボクのスライムは!」
「何だ起きてたのか。いまいちだな」
「いまいちって何ですかー!」
◇◇◇◇◇
「……――って事です!お母様、どう思いますか!」
「う~ん、どうって言われてもねぇ」
朝食時、母さんに俺がおっぱいに顔をうずめたことをスラはチクった。
昨日、どんな罰でも受け入れる覚悟を持ってセクハラをするとかカッコイイことを言った気がするが、親バレは流石にきついで。
だが俺は涼しい顔で朝食を取る。
おれれ~おかしいぞ~?オカズの卵焼きが上手くつまめないや~。
「手、すっごい震えてるよ~?」
「そんなことないで。べ、べつにやましい気持ちでやったんじゃないし?ちょっと気になっただけだし?」
掴んでいた卵焼きを床に落とす。
拾うまで3秒以上たってしまったので、スラの皿に卵焼きを移す。
「なお君は5年の間にスライムの気持ちよさに溺れてしまったせいで、普通の女の子では満足できないようになってしまったのです!これは大問題です!」
「……」
何か論点か違う気がする。
セクハラされたから母さんに怒ってもらうように頼むんじゃないのかよ?
「大丈夫だよ~。確かにちょっと変わってるけど、なお君はちゃんと女の子に興味がある健全な男の子だよ」
「でもでも、なお君がその気になれば陽菜ちゃんなんてチョロイン、あっという間に落とすことができるのにそれをしないのです!」
スラも陽菜をチョロインと認識しているのか。そこは俺と共通認識だった。
「『もうスライムしか愛せない!』とかだったらボクはそれで良いと思うのです!一生なお君を大切にします!」
「う~ん、なお君は愛されてるね~」
禿のおっさんがみそ汁をずるずる啜って言う、
「こんな美少女に愛されるなんて最高じゃないか。羨ましすぎて仕事辞めたくなったぞ」
「誰だよこのおっさん」
「……」
……ちげーわ、親父だったは。
2日前に会ったばかりのはずだが、この2日感が濃すぎて俺に親父がいたことも忘れてしまっていた。
「……ま、まぁ直人はしっかり者だから親が心配しなくても大丈夫だろう。ところで直人、学校の方はどうだ?楽しくやってるか?友達はできたか?」
「うぐっ」
親子間で会話をする際のテンプレ的な話題が投げかけられてきた。
性癖晒し上げの家族会議から話題が切り替わったのはありがたいがこれはこれで都合が悪い。
「か、変わった学校だと思うがそこそこ上手くやってる……」
また卵焼きを落としてしまった。スラの皿に移す。
「そうか。で、友達はできたのか?」
「い、いいいいるよ!?政治や世界情勢について盛り上がった!!」
「直人は本当に色々な友達を持つよな。お父さん心配してたんだぞ?小学生の時はあんなに数多く友達を作ったと思えば中学生の時はごく少数の友達しか作らなかったからなぁ。しかも直人って結構変わってるし」
「ふ~ん。色々事情があるんだよ」
「なお君と政治や世界情勢について喋った人はもう友達ですか?」
いいんだよ!俺と3分会話した奴は友達なんだよ!
「うにゅ?卵焼きが増えてる……?」
「俺からのプレゼントだ。気にするな」
「ありがとーもぐもぐ」




