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22話 積極的な活動で友達作り

 午前中はオリエンテーションがあり、昼休みの時間になった。午後からのカリキュラムはなく今日はこれで終わりらしい。来週から授業開始だそうだ。

 さて、友達1人できるかな……。周りではちらほらとグループが出来上がり雑談をしている。

 40代を目の前に結婚について焦りが出てくるおっさんのような気分だ。


 「なおくーん。準備終わりました!」


 「待て」


 「うにゅ」


 トコトコとついてきたスラに待機指示を出す。スラがついてきたら男同士の楽しい水入らずの会話がしにくくなるためだ。 

 どこかに話しやすいグループはないだろうか。

 できればアニメやゲームの話題で盛り上がっているグループがいい。見回すと大人しそうな男子3人が何やら楽しそうに雑談をしていた。

 俺は自慢の営業スマイルを作りそのグループに話しかけた。


 「やぁ君たち、一体何の話をしているんだい?」


 「ああ、夏野君。君にも聞きたいと思ってたんだ」

 

 ついに、ついに、念願の普通の会話ができた!

 簡単じゃないか友達作り!

 

 「何だい?答えられることは何でも答えるよ?」

 

 さぁ来い、何の話題でも食いついてやる!


 「夏野君の支持政党がどこなのか興味があってね。あ、僕は最近できたホワイ党かな。ブラック会社を駆逐するという国民目線の政策はやっぱり感動するよ。ああ、やっと国民の味方になってくれる政党が出来たんだって」


 「えっ……そうなんだ……へー……」


 「いやいや、ホワイ党なんて若手議員が目立つために作った政党だよ。聞こえは良いかもしれないけど国を動かす力がなさすぎると思うんだよね」


 「確かに、今は力不足かもしれない。でも将来的には間違いなく大きくなるね」


 何の話題でも食いつくとは言ったけど政治の話はちょっと……。

 まだ俺たち高校生じゃん?選挙権ないじゃん?

 そんなことより子供は子供らしい話をしようぜ?

 おっぱいの話の方が絶対楽しいって!

 

 何か答えようと思ったが3人は政治の話で熱中して議論をしてたのでやめた。

 水を差すのはやめて他のグループに行こう……。


 「なおくーん。お昼ごはんの時間です!スラちゃん的に今日は――……」


 「待て」


 「うにゅ」


 次はあの2人で話し合っている所だ。

 笑顔よし!身だしなみよし!完璧だ!


 「随分盛り上がってるね、何の話をしてるんだい?」


 「世界情勢についてかな。欧州で頻発してるテロとその対策の効果について今話し合っているんだ」


 「そう……」


 そうか、この高校は超進学校だった。

 他の高校と比べても学費が高いせいでお坊ちゃんが多いのか。

 だからこんな話題で盛り上がっているのか。

 どうしよう、俺は政治とか世界情勢に全く興味ないぞ。


 「あの……夏野君からの視点では、やっぱり僕の意見は子供じみた考えなのかな?」


 え?何だって?完全に聞き流していたんだけど?

 とりあえず適当に答えてみるか。


 「ああ、子供みたいな考えだ」


 「そ……そうかやっぱり僕はまだまだ未熟者だ」


 「いやいや、そんなことはないと思う」


 「え?」


 「子供みたいな考えが全部間違いで未熟とは限らない。むしろ議論の場においてはそういう簡単な意見や考えも視野を広げる有効な手となる場合がある。無理をして賢い言葉を並べるよりも自分の主張をしっかりしている方が大切だと思うぞ?」


 「……」


 「どしたのわさわさ」


 「やっぱ夏野君ってすげぇや。とても同い年とは思えない」

 

 俺も同い年とは思えねーよ!

 なんだよ世界情勢って!

 俺なんてスラとうんこ味のカレーとカレー味のうんこ、どっちがマシなのかについて盛り上がってたレベルなんだど!?

 話を切り上げよう、うん。ここは撤退だ。


 「そんなことはないさ。俺だってまだまだ。おっと、もっと話し合いたいけどスラを待たせてしまってるんだ」


 「分かった。またこの話はまた明日にしよう!」


 「ああ!」

 

 安請け合いしてしまってもいいのだろうか。

 でもなー……いくら興味がないからってここで断っても感じ悪いしなー。


 「ナオ~いい加減お昼ご飯食べよーよー」


 陽菜が入ってきた。

 別に昼ご飯を一緒に食べるなんて約束はしてないのだが。

 まぁいいや、ここは乗っておこう。


 「ああ、そうだな。待たせて悪かった。それじゃまたな!」


 「また明日」


 「なおくーん。お腹減ったよ~」


 「待て……いや、もういいのか。行こうか」


 「うにゅ」


 スラと陽菜と俺の3人で学校を出る。

 

 「なぁ、あの男見て見ろって。すごい可愛い女の子引き連れてる」


 「しかも2人。すっごいお金持ちとかなんだろうなー。札束で頬叩いて俺の物になれ!とか言ってるんだろうな」


 「違いねぇ」


 周りの男子からの嫉妬が凄まじい。

 嫌だな~怖いな~。

 ヘイトを少しでも下げるために陽菜だけでも切り離しておくか。

 スラはどうしようもないしな。


 「陽菜、わざわざご苦労。では解散。また明日!」


 「また明日!じゃなくて、お昼ご飯食べるんでしょ」


 「誘ってない」


 「ふ~ん、そういう態度とるんだ。私、結構ナオのフォローに回ってると思うんだけどなー。特に今日のホームルーム時とか」


 「ぐぬぬっ……!」


 「まだまともに友達できてないんじゃない?それにスラのことだって事情知ってるは私だけよ?いいのかな~そういう態度」

 

 陽菜がジト目で見てきた。

 確かに、色々陽菜に助けられている場面がある。


 「陽菜は中学の時より随分アグレッシブに関わってくるようになったな」


 「陽菜ちゃんはボクが美少女化して少し焦っているのです!」


 「えっ!?何が!?私が焦ってる!?……やだなー私が何を焦るのよ」

 

 陽菜は俺に聞こえないようにスラにひそひそと何か話した。

 するとスラがプルプルと震えた。

 

 「さっきのは冗談です……お昼ご飯行きましょう……」


 スラさんは何か脅されて思考停止してしまったようだ。

 機械女神って弱いなぁ。

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