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20話 転校生がやってきた

 一瀬先生が教室に来てホームルームが始まる。

 ああ、それにしても友達作りめんどくせぇ……。課金してガチャ回したら友達が出るようにしてくれよ。Sレア引くまでガチャ回し続けるからさ。

 

 「あー……いきなりなんだが、入学2日目にして転校生が来た。紹介したいと思う」


 一瀬先生の発言にクラスがざわつく。そりゃ、そうだ。まだ顔も名前もロクに覚えていない入学2日目で転校生が来るんだからびっくりだよ。

 一体どういう理由で転校なんだろうか?

 そう思ってると 俺の左隣に座っている男子学生Aが一瀬先生に質問した。


 「先生、質問があります。転校生にしては時期がおかしくないですか?」

 

 恐らくみんなが疑問に思ってたことだろう。自分から率先して質問するなんて良い心がけじゃないか。感心感心。


 ……


 てか、おいおいおい男子学生A!さっき俺が喋りかけても無視した奴じゃねーか!

 コミュ障のくせになんでクラスのリーダー的なポジションにいるんだよ!?なんで俺とは話してくれなかったんだよ!?酷すぎる!

 

 「え?え~っとな……実は俺もよく知らないんだ。俺も今朝突然聞いた」

 

 一瀬先生はぽりぽりと頭を掻き、あくびをしながら答える。


 あ、そうだ!俺も男子学生Aに合わせて何か質問してみよう!

 知的な人アピールでクラスのリーダー的ポジションを勝ち取ればきっと誰かが俺に話しかけてくるはずさ! 


 「一瀬先生、私からも質問いいでしょうか?」


 「おう、なんだ夏野か。ちゃんと話を聞いてたのか。成長したな。偉いぞ~」


 やりずれー。こんな事なら中学生時代にもっと一瀬先生の親父に媚びて心証良くしておくんだった。

 後もう一つ問題がある。勢いで質問してしまったけど質問内容何も考えてなかった。


 どうしようか。ここでテンプレみたいに『転校生はどんな子ですかー?』と質問していいものだろうか?

 いやいや、ここは超進学校。そんな下らない質問して下らない人間だと思われてしまったらいけない。

 ここは知的に、そしてユーモアがある良い質問をする必要があるはずだ。

 え~と、え~と……思いついた!


 「上から言われたことに対して疑問も抱かず、ロボットのように行動するのは鈴木高校の教師として相応しくないことだと思います。もっと教師として責任を持つべきでは?」

 

 「えっ?」

 

 「えっ?」

 

 「……」

 

 「……」


 「ああ。確かに……すまんな」


 やってしまったあああああ!!

 何が知的だよ!これじゃあただの嫌味な奴じゃねーか!


 テンパってると周りからひそひそと話し声が聞こえてきた。

 

 「……夏野ってすげぇよな。入学2日目で先生に向かってあんな態度とれねーわ」

 

 「ちょっと住む世界が違うよね。あんまり馴れ馴れしく話しかけない方がいいよね……」


 「触れるもの皆傷つけるって感じがする」


 違うんだよ違うんだよ!

 あれなんだよ!ちょっとテンパってただけだって!わかってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか!?


 「ララバイ、ララバイ、おやすみよー……ギザギザハートの、子守唄ー……」


 ぶつぶつ呟きながら静かに着席する。すると同時に陽菜がイスから立ち上がって一瀬先生に喋りかかけた。


 「先生。きっと夏野君はみんなの為にわざと先生を煽って転校生に関する情報を引き出そうとしたんですよ。いやぁ~夏野君と先生はとても親しい仲だと聞いてましたがこんな冗談も言えるくらい仲が良いとは思ってませんでした~」


 おお……女神陽菜様が私ごときの為にフォローを入れて下さった。

 ありがてぇ、ありがてぇ。 

 明日俺の生着替え写真を贈呈してやろう。


 「まぁ、そうだな。なんせ俺と夏野は昨日夜遅くまで遊んだダチだからな!」


 「はいはい!夏野君と先生はどういった関係なのですか!詳しく聞かせてください!」


 「私も聞きたい!」

 

 女子学生達が興味津々になった。

 あのーちょっとこれはこれであまり良くない方向に行ってませんか?

 だが、さっきの一瞬凍り付いた空気よりかはマシなのかもしれない。


 「あ~、はいはい。今はそんなことより転校生の紹介だ。あまり廊下に待たせると可愛そうだろう?」


 先生は話を切り上げて転校生を招き入れようとした。


 はぁ……ダメだダメだ。

 早く友達を作らなきゃと焦って、それで悪目立ちしてをしてしまっている。

 本来俺はそんなキャラじゃないだろう?

 死んだ目をしながら教室の隅で一人ゲームをするキャラじゃないか。

 これからは自重しなければいけないな。

 もう何が起こっても動じない、騒がない、喚かない。


 ガラガラと扉が開く。すると水色の長い髪の女の子が教室に入ってきた。

 背丈は小さいが堂々とした動作で歩き、自信溢れる顔つきをしていた。

 あれ……あの子どっかで見たことあるぞ?っておいおい、まさか嘘だろ!?


 「初めまして!夏野スラです!ボクのことはスラちゃんって呼んでください!よろしくお願いします!」 


 はにかんだ笑顔をして、ちょっとあざといポーズをとったスラが目の前に現れた。


 「何あの子可愛いー!」


 「だよね!でも、なんだか同い年には見えないよね」


 「小っちゃいぜ!やったぜ!」


 スラの登場により男女問わずとても盛り上がった。

 

 そして俺は心の衝撃に耐えられず硬直していた。


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