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164話

 赤神ちゃんがスライムだと証明できる動画はバッチリ保存する事に成功。

 本当は赤神ちゃんの部屋に即乗り込んで脅そうかと思ったが、スライムがわらわらいるあの部屋に乗り込むのは分が悪そうだったのでひとまず退散。

 証拠を握っている以上、勝利は揺るぎない。

 赤神ちゃんとハッピーエンドを向かえられると確信した俺は1組を離れ、元いた5組に戻ってきた。

 1組は1組で居心地が良かったが、最近はかなり陽菜成分が不足してたしな。


 「そこを何とか頼むよ〜。ほら、陽菜ちゃんだったら絶対天下とれるから」


 「いや、そう言うのはちょっと……」


 一瀬先生と陽菜が二人で何か話している。

 どうやら一瀬先生が陽菜に何かを頼み事をしていて、陽菜がそれを断っているようだ。

 つまり今、陽菜は困っているのだ。

 陽菜の騎士である俺が陽菜を守らなければいけない。

 席を立って二人が話している間に割り込む。


 「ちょっと一瀬先生ー。陽菜に話があるなら、まずは俺に話を通して下さいよー。そう言う勝手な事をされるととても困るんですよー」


 「お前は陽菜のマネージャーかよ。でも丁度良かった。夏野からも頼んで欲しいことがあるんだ」


 「知っての通りですが、俺は面倒くさいことはーー……」


 「今、オープンキャンパスのポスターを作ろうとしてる最中なんだけどよ、陽菜ちゃんをモデルとしてポスターにドーンと載せたいんだよ。だからぜひ撮らせてくれと頼んでるんだが……」


 「ふむ、そうすか。でもモデルだったら陽菜に頼まなくても1組の白澤さんの方が適任じゃないですか?可愛いさは同格ですが、白澤さんはガチのアイドル。その手のプロですよ?」


 「白澤の場合はガチすぎて事務所に話を通さないといけないんだよ。それにお金だってすごいかかるだろうし」


 「なるほど。それなら陽菜一択ですね。でも陽菜ってそう言う目立つ事はあまり好きじゃないですからね。陽菜にもう少し自己顕示欲があれば今頃は白澤さんと同格の人気アイドルですよ」


 「だよな〜。マジ勿体無い。俺がもし陽菜ちゃんだったら、すげぇ可愛い服着て原宿歩いて自慢する」


 「はぁ……一瀬先生、もっと欲望に素直になりましょうよ?もし陽菜になれるんだったらやりたい事、してみたい事、他にあるでしょう?」


 「……ありますなぁ〜!!ゲへ、ゲヘゲヘゲヘ!!」


 「ゲヘヘヘヘ!!」


 邪な目で陽菜の方に振り向くと陽菜はボケーと窓の外の景色を見ていた。

 俺たちに呆れてるのか、もしくは話が入ってこないよう思考をシャットダウンしてるのだろう。

 軽く謝っておくか。


 「悪かったな。本人の目の前で話す内容じゃなかったな。許してくれ」


 「ま、まさか今のをナオが謝るなんて……成長してる……!」


 「ああ、今度からは気をつけて話す」


 「……何も変わってなかった。……一瀬先生、すいませんが撮影は出来ないと言う事で」


 おっと陽菜がどさくさ紛れてここぞとばかりに逃げようとしている。

 この話が完全になかった事になる前に、俺にもたらすメリットとデメリットを考えてみる。

 まずはデメリット。

 陽菜が目立ってしまったせいで、陽菜を狙うクソ野郎共が増える。

 これ以上にないデメリットだ。

 この時点で無理。

 だが、一応メリットの方も考えてみよう。

 ……陽菜が写っているポスターを合法的に手に入ることができる?

 うーん、微妙。

 学校のオープンキャンパスのポスターなんて、作り笑いして突っ立ってる写真が載るくらいだろ?

 あーあ、それこそ勿体無い。

 俺に撮影を任せたくれたら陽菜の良さをさらに引き出すことが出来るのに。


 ……ん?

 待てよ、俺なら陽菜の良さを引き出すことができる?

 ああ、出来るさ。

 最高の写真を撮ることができるさ。


 「ニコォ……(満面の笑み)」


 「どうした夏野?満員電車の中でうんこ堪えてるみたいな顔になってるぞ?」


 「もし陽菜が引き受けたとして撮影はプロのカメラマンにお願いするのですか?」


 「お願いしたいけどお金がなぁ。きっと適当なデジカメで撮るだけだと思うぞ?」


 「そうですか。だったら俺が撮ってもいいですか?」


 「ちょい待ち!何で撮影する事になってるのよ!?しかもナオが撮るって、セクハラされること確定じゃない!」


 「そうだぞ夏野。学校のポスターにエロ陽菜ちゃん画像を載せる事は無理だ。俺のクビが飛ぶ」


 失礼な奴らめ。

 俺がやる行動を何でもかんでもエロい事にすると思ってやがる。


 「流石にそのくらいの社会常識くらい持ってますよ。それにお忘れませんか?俺、天才ですよ?ネットで炎上しないギリギリのラインを攻めたちょっとエッチな写真を撮ることなど造作もありません」


 「ギリギリのラインを攻める時点で不安でしかないんだが?」


 「一回俺に任せてみてOKだったらポスターに載せれば良いじゃないですか。最悪、駄目だったらスラを貸してあげますから適当に撮ってお茶を濁せば良いんです」


 スラだって見た目だけなら陽菜に匹敵する美少女。

 何も問題ない。


 「うーん。そういう事なら好きにすれば良いけどよ、陽菜ちゃんの許可はとれよ?無理やりは駄目だからな?」


 「はい、俺は何時だって無理矢理はさせてませんよ?」

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