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163話

 お楽しみはこれからだと思っていたのに強制的に家から追い出されてしまう。

 俺しょんぼり。

 それよりもこれから忙しくなるって何なんだ?

 スマホで時間を確認すると時刻は午後7時。

 平日の夜なんて大して忙しくなるようなイベントなんてないと思うんだが……夜……夜。


 「はっ!?まさか男か!?男とエロエロな時間なのか!?」


 可能性としてはゼロではないだろう。

 赤神ちゃんはワンルームのぼろいアパートで一人暮らし。

 色々寂しくなって人肌が欲しくなって道を踏み誤ったのかもしれない。 

 しかも赤神ちゃんはスライムだ。

 スラの後から地球にやってきたと仮定して最長で5年ほどしか人間社会と触れ合っていない。

 ひょっとしたらまだまだ人間社会の常識が分かってなくて今現在も悪い男に騙されて何か良からぬ事をされているかもしれない。

 気持ち良くなるお薬を投入されてアヘアへしながらロリものAVとかの撮影とかされて被害に合ってるかもしれない。

 赤神ちゃんは気の強い女の子だから誰にも相談できなくてそのままズルズルと……。 

 

 「それはいけない。俺が守らなければ」


 このまま帰宅する選択肢なんてない。

 俺が赤神ちゃんを守らなければいけない。

 俺が赤神ちゃんを救わなければいけない。

 俺が赤神ちゃんと結ばれないといけない。

 

 よし、まずは裏手に回って外から赤神ちゃんの部屋を覗いて見よう。

 

 ガサガサ


 「ん?」


 裏手に回ってみると草むらで一瞬、不自然にガサガサしていた。

 あの草むらに何かが潜んでいる。

 何となくあそこに何かがいるのは分かる。

 ……おいおいまさか本当に赤神ちゃんを狙う不審者か?

 俺は赤神ちゃんの様子を観察する為の大義名分が欲しかっただけで本当に不審者と遭遇するとは思ってなかったぞ。

 まさか本当に不審者な訳がない。

 きっと草むらに潜んでいるのはネコとかタヌキだろう。


 俺は気配を消してその草むらにゆっくりと近づく。


 チラッ

 

 「……お前らって最近、ポケモンGOのポッポ並みの出現率だよな」


 そこにいたのは3匹のスライムだった。

 色はベージュ、ピンク、ムラサキだが今まで俺がコミュニケーションをとってきたスライムとは微妙に色が違うからたぶん初対面のスライムだ。

 一応、挨拶くらいしておくか。


 「初めまして、俺は夏野直人。スラの飼い主だ」


 しーん


 ……あまり反応がない。

 3匹のスライムがちょっとうねうねしているのを察するにスライム同士でテレパシー会話して相談してるようだが内容は当然分からない。

 もしかして日本語が分からないのか?


 「ついでに言うと、スライム業界では俺の事をなお君と呼んでい――……」


 ぴょん!ぴょん!ぴょん!ぴょん!


 急に3匹が勢いよく跳ね始めた。

 

 ベージュのスライムが木の棒を持って地面に文字を書く。


 「"(*'▽')キミがなお君かー!!"」

 

 「そうだ。俺がなお君だ」

  

 「"(*'▽')ゆうめいじん!"」


 「そうだ。俺が有名人だ」

 

 「"(*'▽')こきょうでスライム100匹たおしたひと!"」


 「そうだ。俺が天下無双の豪傑だ」


 きっと故郷のトレイダンジョンでライトセーバーみたいな武器を使ってスライムたちを斬りまくった事を言ってるんだろう。

 スライムに会うたびに色々な反応されてるが、俺ってマジでスライムたちの中ではどんな人物像で伝わってるんだ?


 「そんな事より、こんな所で何してるんだ?」


 「"(*'▽')あかがみちゃんのいえでかいぎ!"」


 「ん?ああ、スラがたまに深夜にこっそり部屋から抜け出して行ってるスライム会議か――……」


 ささっー


 ベージュスライムが急に慌てた様子で書いた文字を消して上書きした。


 「"いまのとりけし"」


 「……取り消しって言われてもどないせいっちゅうねん」


 「"(*'▽')ところでなお君はなんでここに?"」 


 よほど都合が悪かったのかいきなり話題を変えてきた。

 まぁ、設定上では赤神ちゃんってスラとミニスラちゃん以外のスライムは知らないしな。

 

 「俺は赤神ちゃんを守護する極秘作戦の最中だ」


 かきかき


 ささっー


 ベージュスライムが『ストーカー?』と書こうとしたので俺は砂をかぶせて文字を消す。


 「断じて違う。だが、見方によってはそんな誤解をされてしまう可能性もあることは認めよう。分かった、取引をしよう。今日、俺たちはここで出会わなかったことにしよう。その方がお互い都合がいいだろう?他言無用だ」


 「"(*'▽')たごんむよう!またね!"」

 

 ぴょん!ぴょん!


 どうやら取引が成立したらしい。

 スライムたちは2階の赤神ちゃんの部屋の小さなベランダにジャンプして、ガラガラと窓を開けてそのまま赤神ちゃんの部屋に入っていった。

 あの跳躍力いいなぁ。外に干してるパンツとか盗み放題じゃん。


 「ん?」


 スラと陽菜が階段を昇って赤神ちゃんの部屋に向かっているのを発見。

 俺には気づいていない様子だった。

 そのまま赤神ちゃんの部屋に入っていった。


 俺はスマホの録画モードを開始して次のアクションを開始した。

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